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第四十二話 悲しい別れ

「つかれた」

「足がいたい」


街に戻ると、カーラとセーラがそう言い出した。

幼い二人はルナをお城に戻すことに

ストレスを感じているのかもしれない。

そう思った私は


「じゃあ、予定を変えてまず

魔法使いさんのところに行くか?」


と言った。

双子は本当に疲れていたようで、何も言わずに頷いた。

海に行きたい、漁師さんに会いたい、と

いつものように二人が駄々をこねるかと思ったから

私は拍子抜けした。


私たちは向きを変えて、大魔術師のお婆さんに教えてもらった、街の魔法使いの家に行った。


魔法使いの家は街のはずれにあった。


古い大きな家に大きな庭。

道にはみ出るほどの大きな木。

魔法使いがここに長く住んでいるのだろうと感じた。

近づくと不思議な匂いもした。


扉の前に、袖のない服を着た

優しそうな老夫婦らしき人が立っていた。


この人たちが魔法使い?

それとも手伝いの人かな?と思っていたら


「でしにしてください」

「しょうかいされてきました」


と、カーラとセーラが言った。

ほう。

じゃあ、この人たちが魔法使いなんだ。

どうしてわかったんだろう?それとも

深く考えていないだけ?


だけど魔法使いが双子をじっと見ているので

私は魔法使いにも双子にも話しかけにくく感じて

質問できなかった。


「聞いているよ。おはいり」


老人が言った。

カーラとセーラはこちらを振り返って


「パパありがとう」

「みんな、ありがとう」


と言った。

なんだよ、私は最後までパパか。


あんたたちのおかげで私は成長したよ

って言えればよかったけど、この

バイタリティーある双子に対して

私はその場しのぎの対応しかしてこなかったから

成長もなにもなかった。


ただじたばたして時間が過ぎただけだった。

でも、他にどうすることができた?


二人を何て言って送り出したらいいか私が考えている間に


「こちらこそありがとう、二人のおかげで

旅がとっても楽しかったわよ」


とベリーが言い


「二人とも、いつまでもお元気にね。

すてきな魔法使いになれるといいわね」


とルナが言い


「そうだぞ、カーラとセーラならやればできる。

はい、これ二人のぶんな」


と言ってリュウが金銀の入った袋を二人に渡した。

そうだけど。

そうだけど、なんか、そうじゃない。

私は取り残された気持ちになった。


「パパまたね」

「またね」


「うん…」


私がまごまごしている間に二人は本当に

老夫婦に手を引かれて家の中へ入ってしまった。

これで本当にお別れだ。


「お別れだね、寂しいね」


とベリーが言ったけど、私は寂しくなかった。

二人がいなくなればせいせいするはずだったのに

そんなことないな、と思っただけ。


4人に減った私たちはお城に引き返した。


ベリーが門番に事情を話すと、門番は

ぎょっとした様子でルナを見て、まわりの門番と

小声で何か相談してから門を開けた。


建物の中で待っていると、王様が悲しそうな顔で歩いてきた。


「ごめんなさい!」


ルナが駆け寄ると、王様は涙目で

彼女を切った。


「娘は死んだ。これは偽者だ。不審者だ」


彼は言った。


「すみませんでした、よく調べないで

連れてきてしまいました」


リュウが大きな声ですぐに答えた。

二人とも、ルナが本物だと理解しているに決まっていた。


そうか、ルナはもう帰れなかったのか。

死んだことになっているとは、そういうことだったのか。


どうしてそのことに私は気付かなかったのだろう?

お城に戻る前に、もっとよく考えればよかった。

私は絵のことに気をとられて、ルナがもしお城に帰ったらどうなるか、考えることすら忘れていた。


カーラとセーラが嫌がったのは、きっと

本能的に不幸な結末を予感していたんだ。


「彼女とは旅の途中に偶然出会って

誰だか知らないまま一緒に旅をしました」


リュウが低い声で話し出した。


「昨日彼女はお城に行きたくないと言ったので

お城を怖がっているのかと思いました。

さっき街の外で、これからわれわれがどこへ行くのかという話になり、そのとき初めて

彼女は自分が王女だったと言いました。

そこで、だったら帰った方が良いのではないかと

すすめてしまいました」


リュウの話を聞くためにいつの間にか、お城の人たちがたくさん集まっていた。

みんなルナの最期を、ルナが外でどうしていたのかを聞き漏らさないように真剣だった。


肖像画を見ることを私に許可してくれた

あの愛想の悪い人の姿も見えた。


涙ぐんでいる人もいた。


だけどリュウは、ルナが『ルナ』と名乗ったことも

行き倒れたことも言わなかった。


真実をどこまで伝えるのが正しいことなのか

私にもわからなかった。


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