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第四話 取引

「ちょっと」


私は草むらから立ち上がった。



「そこの兄ちゃん、だまされてるわよ。

森の中に宿なんか無いってば。

そいつら、嘘つきの盗賊ね」



「えっ!盗賊?」



若者が警戒したので、

三人組は悪態をつきながら後ずさった。


姉ちゃん生きてたのかよ!

弟の味方しねえのかよ!

姉ちゃん旅人に惚れても無駄だぜ!


思ったより良いこと言うね。


あんた達も盗賊やめれば!


立ってみると若者は、予想以上に強そうな体をしていた。


三人組は後ろを時々振り返りながら走り去った。

殴り合いをしても勝てないと思って

あきらめたんだろう。


その姿が見えなくなるまで私は見届けた。



「教えてくれてありがとう!」



若者は、私のほうに近づいてきた。

素直なやつだ。


「僕は、リュウって言うんだ。

君は?」



「名前なんか、何だっていいさ。」


私は、小銭でももらってさっさと帰るつもりだったから、そう答えた。



「取引しようよ。

じつは私も盗賊なんだ。」


「えっ!」


若者は本気で驚いたようだ。



「そういうわけで、取引なのさ。

助けたお礼に、なんか金目のもの

置いていってよ。

私は一人者だから、一人分しか

要求しないでおいてやるよ」



若者は、ちょっと迷っている様子だった。



そして、


「あのさ…」


照れ臭そうにしゃべり出した。


「あのさ…

いま僕は、君にちょっとしたお金を渡すことができるよ。

だけど、それよりも、一生食べ物に困らない位の

財宝を手に入れたいと思わない?

つまり、僕の宝探しの相棒になって冒険に出ようよ!」



リュウは言った。

私は、ちょっと気が変わりそうになった。

もしかして恋人同士になれちゃうかもしれないよね?



「じつは僕、とある財宝を探しに行くところなんだ。

けど、目的地の近くに行ったら

競争相手がたくさんいるだろうし、

きっと宝の取り合いになって

僕ひとりじゃ、戦っても負けちゃうんじゃないかな、って心配してたんだ。

君は親切だし、頭がいいから

君みたいな仲間がいたら、すごく心強いよ。

だから、僕と一緒に冒険に行こうよ」


あまり熱心に誘われるから、私はかえって疑った。

こいつは実はお金をぜんぜん持っていなくて、私に渡せないから法螺を吹いているのかな?


でも素直そうだし、私が後ろを向いたとたんに殴るとか、なさそうだよね。



「宝を見つけたら、僕たち

半分ずつ分ければいいんだ。

ふたりで分けても、使いきれない位

たくさんだよ!」



はぐれ盗賊の暮らしにもうんざりしていた私にとって、宝探しの旅は魅力的だった。

リュウが、小銭惜しさに嘘をついているようにも見えない。


そんな財宝が本当にあるのかわからないけど、

情報を持ってきたコイツに

ついて行っても面白いかな、と私は思った。


「いいよ。一緒に行く」



「そう来なくちゃ。伝説の財宝!

絶対、手に入れたいだろ?」


リュウは、ポケットから地図を出して

ヒラヒラさせた。



でもそのとたん、私はがっかりした。



「なんだ。

地図にのってるような宝、もう誰かがとった後だな」



「違うよ。

これは、伝説の手がかりになる地図なんだ。

地図の、このへんの地域の

どこかにその財宝があるんだ!」



ふん。


私は、宝はもう無いだろうと思った。


でも、リュウの話は

このろくでもない場所から出て行くいいきっかけだ。

それに、好きな人と一緒に旅ができるなんて楽しいじゃないか。



「まあいいさ。

行ってみなけりゃわからない。

ついて行ってやるよ」



私はグレンさ、と名乗った。




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