第三十七話 門出
王様に宝を売ろうという
ルナの提案に、リュウも賛成した。
彼は、貴族の身分を買いたいと言った。
「僕は故郷の領主になりたいな。
そうしたら、村のみんなと協力して
工夫して豊かな村にするんだ」
やっぱり彼は普通の人ではないかも、と私は思った。
「リュウは村で、どういう立場の人なの?」
私は質問した。だけど彼が答える前に
「すごい。あたしは、リュウについていくわ!」
とベリーが言った。相変わらずだ。
遮ったというよりも、私が質問したことに
気がつかなかったみたいだ。
一生ついていくつもりだろう。
まあ、好きにすればいいけど。
さらにルナが
「グレンさんはどうしたいですか?」
と聞いてきたので、リュウの出身の話は途切れた。
「私?」
急に聞かれて私は困った。別に目標はなかった。
「私は普通の暮らしがしたいんだよね。
宝を売ったお金で、家を買ったり…でも
資金が尽きたら何をしようかな。
道具屋とか興味あるけど難しそう。
住むところを決めてから考えようかな」
しょうもない答えだったのに、みんなが
笑顔で頷いているから私は少し
照れ臭かったし、気まずかった。
「私よりも、カーラとセーラのことね」
私は言った。
「こいつらを一流の魔法使いに弟子入りさせるべきだね。
本人たちが夢見てるだけじゃちゃんとした魔法使いになれない。
王家に出入りしてる魔法使いがいたら
紹介してもらおうよ」
私が言うと、双子はビックリして
「やだー!」
「パパのお店に住むー!」
と言い出した。
「すごい魔法使いになりたいんだろ?
だったら、私にくっついてても意味ない」
私が言うと、双子は泣き出した。
「すてられたー!」
「追い出されたー!」
「捨ててないだろ。
魔法使いの師匠を探そうって言うんだよ。
むしろプレゼントじゃないか」
双子はむくれて聞かない。いつものことだ。
私のほうが正しいはずなのに、誰も
私に賛成したり双子をたしなめたりしないことも
いつも通りだった。
漁師さんに荷車を借りて、10日ほど旅をして
私たちは王都に着いた。
城が見えるところまで近づくと、
「では、私はここで待っていますから」
ルナは、理由あって城に入れないと言い出した。
よくわからないが、私たちはルナを置いて
城門をくぐった。
しかし、すんなりと城の建物に入れてもらえない。
何度も何度も、王様に宝を売りに来たと言い
その度に、リュウが荷車の毛布を
少しめくって相手に例の珠をチラ見させ
その度にハラハラして
さんざん神経をすり減らした頃に
ようやく広間までたどり着いた。
召使いらしき人に椅子をすすめられて
私たちは腰を下ろした。
…ふう。心底疲れたな。
これからが本番だというのに。
王様ってやつは、生半可なものじゃない。
そんなことを思いながら、ふと
壁を見渡してギョッとした。
壁の一面に肖像画がずらりと並んでいる。
その一番手前に、ルナの顔が
でかでかと掲げられていた。
その隣の人物も彼女に似ている。
「どっちだ?」
思わず呟いた。どっちがルナ?
姉妹?母娘?
肖像画って、誰だかわからないような絵かと思ってた。
「え?何が?」
リュウは全く気づいていない。
ベリーも気づいていない!
双子は椅子の飾りをいじるのに夢中だ。
「いや、何でもないよ」
わかっていないなら、あとでびっくりさせてやるさ。
たぶんルナ本人も、どうせ
ばれやしないと思っていたのだろうから。
赤いドレスが似合うな~、とでも
からかってやろうか。
しばらく待たされた後、
召使いの中でも豪華な身なりをした
少し偉そうなやつが出てきた。
まだ王様は出てこないか。
弱虫め。引っ張りだしてやる。
召使いが、ご用件をと言う。
100回くらい言ったんだけど!と言いたくなった。
でも、そいつを怒らせて追い出されたら
これまでの努力が無駄になるから
「世界にひとつしかない最高の宝を
王様に売りに来ましたよ!」
私は切り出した。




