第三十六話 大きすぎた宝石
翌朝から浜は大騒ぎだった。
宝がある場所あたりまで漁師さんの船にみんなで乗って行き、漁師さんの仲間たちが海に潜った。
「大きな丸い珠だよ!」
リュウがみんなに言った。
え?
あれ?あの幻覚のような中で見かけた
あれか!
いや、そうだとしたら苦労して拾っても
みんなで分けることもできないし。
そもそも大きすぎて使い道がわからない。
私はとても心配になってきた。
「見つけた」
一人が言った。
「あれは持ち上がらない」
「重いのか?」
「重いよ、ずっと沈んでいるんだから。
貝かと思った。貝じゃないかね?」
「貝じゃないはずだよ、山の中にいるドラゴンが持ってた物だからね」
その人とリュウのやり取りを聞きながら
私は宝が想像していたものとまったく
ちがうってことを確信した。
金銀財宝が箱とか樽とかに入っているのではないのね。
本当にがっかり。
あんなただの丸いものを買ってくれる人が
いるとも思えないし。
私はお金持ちになれないじゃない。
この旅は無駄だった?
ううん、あのつまらない苦しい寝ぐらから
出られただけでも、無駄じゃなかった。
「ロープを巻いて引き上げよう」
漁師さんの仲間たちが
宝をどうやって回収するか話し合っていた。
私たちはいったん浜に戻って、太いロープを使って
大きな網を作り、それに珠を乗せることにした。
「だけど引き上げてどうする?
珠一個だから分けられないし、大きすぎて
誰も買ってくれなさそうだけど何か策はある?」
みんなで網を作りながら、私はリュウに言った。
「ないよ。でも僕はあれを引き上げる
運命だと思うんだ」
「えー?
運命って、そもそもあれは何?
私は似たものを見たことないけど本当に宝なの?」
「わからないけど、ドラゴンが大事に持ってたから貴重なものにちがいないよ」
「なるほどね」
「あれが海に潜りたいって言えば海に投げ込むし
陸に上がりたいって言えば陸に上げるのが
たぶん僕の役目だよ」
「なんでわかるんだ?」
「そんな声が聞こえるんだ」
それはとても不思議だけど
彼の旅についてきた私としては
やっぱりお金が欲しかった。
フー、と私がため息をついていると
「私、買ってくれそうな人をひとり知ってます」
とルナが言う。
「え?誰?」
私は乗り出した。
「もちろん、交渉がうまくいけばの話ですけれど」
そう付け加えて、ルナはちょっとうつむいた。
そして、くすっと恥ずかしそうな顔で笑って
「王様です」
と答えた。
王様!?
そいつは目からウロコ。
王様に売るとか、思いつく?
「すごい!ルナ、頭いいな!」
「でも、ドラゴンが持っていた秘宝で
それだけ大きいとなると、いくら王様でも
値段をつけることができないかもしれませんね」
ルナは説明を続けた。
「そこで私の提案としては、
お金と物々交換を合わせて使うんです。
例えば貴族の身分とか、使われずに空いている城や砦に住む権利とか」
えーっ!そんな方法があるのか。
漁師さんたちも、お互い顔を見合わせたりして
びっくりしている。
「ルナ、あんた本当にすごいね。
そんなこと考えもしなかった。
それなら、私もリュウも目的が果たせるかもしれないよね」
私がそう言うと、リュウは頷いた。
ルナは恥ずかしそうに頬を赤らめつつも
嬉しそうな笑顔を浮かべた。




