第三話 出会い
上弦の月がくっきり見える夜だった。
私は見慣れたアホづらの
盗賊三人組のあとをつけていた。
弟たちだ。
彼らは落とし物や忘れ物が多いので、私にとっては都合が良かった。
すると三人組より少し背の高い、
健康そうな若者が歩いてきた。
私は彼に一目惚れしたのかもしれない。彼から目が離せなくなった。
年はもしかしたら私より若そう。
だけど腰に短剣なんかをいっちょまえにさして、
どうやら財布もちゃんと持ってるみたいだ。
高級ではないけど、きれいな服装。
何をしている人だろう?
商人ではなさそう。
三人組はどう出るかな。
私は、ちょっと離れた草むらに
隠れて様子を見た。
「よぉ。旅の人?どこ行くの?」
三人組の中で、一番マシな外見のやつが
声をかけた。
あいつら、アホなりに自分の役割分担を
ちゃんとわかってる。
若者が何か答えた。
「え?マジか。
行き先、俺たちも一緒だよ」
三人組は、意気投合したふりを始めた。
へぇー。
一発殴っただけじゃ勝てない相手だと悟って、だますことにしたんだな。少しは利口になったじゃん。
若者は、ぼーっとした性格なのか
だまされかけているように見えた。
「向こうに宿があるんだ。一緒に行こうぜ。」
三人組がそんなことを言った。
ふん。向こうに宿なんてないよ。
一番近くの町まで、何日歩くと思う?
旅の人、地図を持ってないの?自分がどこを歩いているか、ちゃんと理解しなきゃ。
三人組は、若者の持ち物を根こそぎ奪うつもりだろう。
でも私なら、私ひとりの取り分だけ
もらえればいい。
三人組は、やつらの寝ぐらに
若者を引っ張り込んで襲うようだから、
待っていても私には
おこぼれは回ってこない。
つまり、この成り行きでは
若者にとっても私にとっても
むかつく結果になるというわけだね。
私は、若者を助けてやって
助けたんだからお礼をちょうだいと
言うことに決めた。