第十八話 信用問題
部屋から出れないと食事もできないので
仕方なくドアを開けると思った通り
ガキ二人組がニコニコして待ち構えていた。
私はいったんドアを閉めて
「二手に分かれようよ」
と言った。
「部屋に誰もいないと、やつらきっと入ってくるよ」
「そう?グレンについて来そう」
ベリーが理解していないので私は解説してやった。
「やつら、市場から私たちのあとをつけて来たんだよ。私がリュウの財布を取り返したところを見たに決まってるんだ。
私たちがお金を持ってると思って狙ってるにちがいないよ」
「パパって言ってるのは?」
「そんなのデタラメに決まってる。
なついたふりをすれば相手が油断すると思ってるか、
隠し子がいると思われたくないって世間体を気にしてお金をくれるのを期待してるか、
本能でやってるか」
「そうなの?」
ベリーは私の話を信じていないみたい。
私は彼女を一人で部屋に残したら
ガキ二人組につけこまれそうで危ないと思った。
「だからベリーと私の二人で、食事に行こうよ」
彼女は本当はリュウと一緒に行きたかったかもしれないけど
「いいわよ」
と快く私の誘いに乗った。
私とベリーが廊下に出ると、子どもたちは
トコトコついてきた。
私たちが席につくと、子どもたちも
当然のように同じテーブルにつこうとした。
「知らない人なのに、ついてくるなよ」
私は二人組が椅子に座ろうとするのを
手で止めて強く言った。
だけど彼らは平気な顔で、落ち着いて
私の手をどけようとした。
「あんたたち、なんでそんなに執念深いんだよ?」
「娘だからー」
「娘だからー」
「誰のだよ」
「パパ」
「パパ」
「どこかにいるパパね」
「ここにいる」
「ここにいる」
二人は憎らしく私を指さした。
「何度も言うけど、私はあんたたちのパパじゃないから」
すると、他人事だと思ってベリーが笑いだした。
「笑ってる場合じゃないだろ」
「ごめん、だって可笑しいから」
店の人が注文を取りに来た。
ベリーと私が料理を注文すると二人組は
「私も」
「私も」
と言い出し、店の人がそれを勝手に受け付けてしまった。
「ちょっと、なんで勝手に許可してるんですか。
この子ども達は店と関係あるんですか」
「ないです。お客さん、旅は初めてですか?
こういうこともあるものです」
「もし、こいつらの親を名乗る詐欺が現れて
誘拐したな!なんて言われたら
こっちはいい迷惑ですよ」
「大丈夫です。そんなことには絶対になりませんから」
「こういう子どもは、食事したら立ち去りますかね?」
「それは私にはわかりません」
くそ!
なんでこうなるんだ!
許せない。
さすがの私も断りきれず、四人で黙って食事をした。
料金はしっかり四人ぶんとられた。
そして子どもは立ち去らなかった。彼らは再び部屋までついてきた。
「帰れよ」
「やだ!パパについていくの!」
「パパと旅に出るの!」
ガキ二人が、追い打ちをかけるように
イラっとするセリフを吐いた。
すると信じられないことに
「そんなについてきたければ、
ついて来ればいいんじゃない?」
とベリーが言った。
リュウまでもが
「勝手についてくるだけならいいよ」
と言い出した。
ひどいじゃないか。リュウやベリーまで
ガキの味方しやがった。
「わーい!」
「わーい!」
ふん。
私はもう疲れたよ。
今までの人生の疲れがいっきに出た。
「その代わり、帰りたいとか言っても
だめだからねー」
「はーい」
「はーい」
お母さん気取りのベリーを尻目に
私は、よたよたとベッドに倒れ込んだ。
眠い。
リュウが何か言ってる声は聞こえるけど
眠くて言葉は聞き取れない。
なんだろう?と思ううちに
私は眠ってしまった。




