第十五話 市場
財宝が本当にありそうだからよかった。
思いきって旅に出たことが無駄にならずにすみそうだ。
さて、私たちは食糧調達のため
次の街で市場に立ち寄った。
「混んでるし、うるさくて買い物できないね」
市場に着いて10秒もしないうちに
リュウが音をあげた。
私だって、サイフをするならともかく
こんなごった返したところで
まともに買い物なんかできない。
「ベリーは都会っ子だから、こういう市場も慣れてるでしょ?
3人ぶん買い物してきてくれない?」
私はベリーを買い出しに行かせることにした。
「しょうがないわね。
行ってくるわ。べつに私も買い物
慣れてるわけでもないけど」
私は、いったん人混みから抜け出して
こっそり寝袋の中から
いくらかコインをつかみとってベリーに渡した。
ベリーが人の波に入っていった後、
私とリュウは市場の入り口近くを
ウロウロ見物した。
すると。
なんてアホなやつだ!
やせたおやじが近付いてきたと思ったら、なんと
リュウのサイフをすったではないか!
こんなことを私が見逃すと思うか?
もと盗賊の私が?
「コラ!」
すかさず、私はスリおやじのアゴに
よれよれブーツのかかとキックをお見舞いしてやった。
グキっと、そいつのアゴの関節が鳴った。
「あ!僕のサイフだ」
リュウはようやく事態に気付いて
スリおやじが落としたサイフを急いで拾い上げた。
「グレン、ありがとう!助かったよ」
「ぼんやりするなよ」
近くにいた人たちがみんな
振り返ってこっちを見ていた。
スリおやじは、顎を痛そうに押さえてそそくさと逃げていった。
もうちょっと軽くすませるつもりだったんだけど。
そいつが全然よけなかったから命中しちゃった。
話が終わると野次馬たちは、
あっという間に散っていった。
私たちは再び、市場の端のあたりで
人々を見物した。
みんな忙しそうだ。
コインをポケットから出したり入れたり
平気でしている人もいる。
でもとられない。
財布なんか持ってるから狙われたのか?
と思ったらリュウがお菓子を衝動買いしているではないか。
何をしているんだ!
無駄な買い物して!
でも、この先どんなたいへんな旅になるかわからないから、楽しめるときに楽しんだほうがいいかも。
私は、彼の好きにさせておくことにした。




