表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

第十一話 幸運

それは突然のことだった。


「お兄さんたち!」


と若い女に呼び止められたのは。

まさかここで声をかけられるとは

思っていなかったから私は驚いた。



「どこ行くの?

傘を貸そうか?」


なかなか高級そうな宿の、入り口に近い窓から

その人は身を乗り出してこちらに手を振った。


リュウは案の定なんの警戒もなく

ほいほい近寄った。


「まあー!ずぶ濡れね!ひどい」


相棒が行ってしまったので、仕方なく私も庇のしたに入った。


「二人とも、タオルを持ってくるから待ってて!」


彼女はタオルと熱い飲み物を持って戻ってきた。

私たちは促されるまま、正面の入り口から宿に入った。

けっこう恥ずかしかったが、意外に

他の宿泊客たちは私たちを

ちらっと見ただけで、じろじろ見る人はいなかった。


「はい、どうぞ」


「ありがとう!

君は優しいね」


リュウは例によって素直に喜んでいる。

女のほうも、リュウにほめられて

まんざらでもないようだ。

照れくさそうにしている。


「あたし、ベリーっていうの」


ニコッと笑って私たちを交互に見た。


こんな大きい宿で働いているなら、いろんな客を

見慣れているだろうに。

なんでリュウに一目惚れした様子なんだろうか?

優しそうだから?


私が言うのもおかしいけど、彼は

そこまでかっこいいわけでもないよね。

街には、彼より素敵な人がいくらでもいる。


「あんた、踊り子?」


私は、そいつのキラキラした


腹や脚を大胆に見せて

肩や腰にはビーズや宝石などの

飾りのたくさんぶら下がった


実生活には役立ちそうにない

服を見て言った。


「そうよ。

下のホールで踊るの。

今日は、もう終わったけど」


「見てみたい。毎日踊る?」


「そうよ、でも私が出るのは夕方だけなの。

あとでちょっと見せようか?」


「いいの?」


「いいわよ。ここに泊まる?

安く泊めてあげる」


「やった」


ベリーは私を弟扱いしている、と私は思った。

彼女はリュウと私を兄弟だと思ったみたいだ。


「よかったな!」


と言ったものの、どうする?

ここの街のやつらは

同業者どうしのつながりが

強いのか、それとも弱いのか…?


さっきの宿で私たちが何をしたか

情報は、どのくらいのスピードで

伝わるだろうか?


ま、考えてもわからないことを考えてもしょうがない。


野原でずぶ濡れのまま野宿することを考えれば、

少しの時間でも建物の中で寝られれば

ラッキーってことよ。


私たちは、ありがたく

泊まることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ