第十話 バトル
「このやろー!」
私は怒鳴りながら、おっさんに
ナイフで切りかかった。
いま何が起きているのか
リュウに理解させるために
わざわざ大声で怒鳴ったんだ。
棒きれで殴ってきた
おっさんの動きがきっかけになって、
宿じゅうのやつらが
私たちに襲いかかった。
リュウは、落ち着いた様子で
ひとまず受付のおっさんを
投げ飛ばした。
そして、私のナイフをよけ損なって
顔から血を流しながら
怒った表情で棒きれを振り回す
不気味なおっさんに近づくと、
その棒きれを奪い取った。
おーい。
リュウ、あんたは自分の腰に
剣がぶら下がってることを
忘れてんのか~?
彼は奪った棒を振り回していたが
そのうち、その棒も捨ててしまって
殴ったり蹴ったりを繰り返すばかりになった。
どうやら彼は、刃物を使わずに
勝つつもりみたいだ。
慌てもしないリュウを見て、私はそう思った。
優しそうな彼のことだから
そういう主義なのかもしれない。
戦士いや格闘家リュウは順調に敵をたおしていった。
で、その間
私はただぼーっと眺めてたのかって?
まさか!
私は、宿の金庫と格闘してたのさ。
少しもたついたけど、なんとか
中身をちょうだいしたわけだ。
まずまずの金額が手に入ったと思う。
数えているヒマがなかったから目分量だけど、
これで一週間ぐらいは食っていけそうだと思った。
ま、次は少し高級な宿に
泊まれるかもってことよ。
「逃げるぞ!」
宿のやつらをリュウがあらかた
のしてくれたので、
私は楽に仕事ができた。
で、私たちがダッシュで宿から飛び出すと
外はどしゃ降り…。
「あー…雨ひどくなったね」
「ちょうどいい。汚れが取れるよ」
私の服には少し、おっさんの血がついていたんだ。
でも本当は雨じゃないほうがよかった。
だって結局雨の中で野宿するハメになりそうでしょ?
こうならないために宿に入ったのにさ。
しかも、バトルしちゃったから
野宿は野宿でも、街の中じゃなくて
本当に野原に出ないといけなくなった。
悪いのは向こうだけど、
宿のカネとったし
私たちよそ者だからすぐ
この街から逃げ出さないと危ない…。
雨のシャワーを浴びながら、私たちは
すれ違う人もいない夜の通りを
早足で歩いた。




