盗賊団ユースティティア
「俺たちは盗賊団を名乗っているが実は隣の領地の騎士団なんだ。
ユースティティアという部隊聴いた事はないだろうか?」
「悪いな、俺たち兄弟は異世界人でさ、こっちに転移してきたばっかで全然分からん」
どうやらこの盗賊みたいな奴らは隣のお偉いさんに仕えている騎士たちらしい。盗賊団のリーダーもといい騎士団団長は秘密裏に隣の領主の娘であるティアを救い出して現在に至るという事だ。
教会が多額の寄付金を寄越さないなら神託の才能のあるティアをよこせという要求に対し、領主も強く反対できなかったらしく。半ば強引に教会に身請けされたようなものだったらしい。
因みに騎士団団長は領主の息子で救い出された女の子とは兄弟の関係だ。
「改めて例を言おう。俺は騎士団長を務めるオスカーだ。よろしく頼む。」
オスカーは歴戦の騎士という雰囲気を醸し出している。先ほどは盗賊のような荒い性格は演技だったという事だろう。
どうやらオスカー達は飲まず食わずでここまできたらしく相当疲労していたらしい。
「私からもお礼を言わせてください。ティアですよろしくお願いしますね」
綺麗な澄んだ声でお礼を言ってくれるこの子はティア。華奢な体に兄と同じ美しい銀髪を持っている女の子だ。。どうやら神託を受ける事ができるという特別な能力を持っているらしい。
「しかしこの肉は本当に美味いな」
流石歴戦騎士だぜ。すげぇ食いっぷりだ。
「ええ、ゲイルさんこんなご馳走ありがとうございます」
ティアは兄とは真逆で少しずつお上品に食べている。うちの妹にも見習ってほしい。
「はむ。はむ。すごい美味しいわねこのお肉。流石レアスキル」
「俺のスキルはパーティー用スキルじゃないぞ」
とはいえこの肉はマジで美味い。
全くでも今回はアイテム的にハズレが多くて結果的に良かった
な。最悪、オスカー達と戦闘になっていたら正義の味方どころかこっちが悪党だ。
オスカー達から聞いた教会の話では黒い話が次から次へと出てくる。
教会は実は邪教であるだとか、何やら怪しげな信者の集いがあるだどか人攫いまで起きている可能性があるらしい。
かなり危険度が高いように思えるな。
「教会を国かギルドに密告してみればいいんじゃないのか?」
「いや、既に俺たちが行動しているがどこかでもみ消される。国の上層部に教会と繋がっている連中がいるんだろうよ」
しかし全くに無駄だった訳ではないらしい。国の中で黒い噂は立つようになった。
「今後ティアを俺たちの領地に連れ帰った後、本格的に教会を調べてみる。もしかしたら協力を頼むかもしれないが大丈夫か?」
「ああ、乗り掛かった船だ。最後まで協力するよ」
ここで起こった事はいっさい秘密にして俺たちは冒険者生活に励むことになった。
「おい!アン、クエスト受けに行くぞ!もう残りの貯蓄が尽きちまうぞ」
「ええ、また戦闘クエスト行くの?」
最近アンは戦闘クエストに行くのを極端に嫌がる。命の危険があるから俺も無理強いはできないが多少経験は積んでおいた方がいいと思うんだよなー。
俺はクエストに行ってるからな!お前も後でクエスト受けろよ?
一人でも受けられるクエストの中には戦闘クエストから雑用、採取、調査まで様々なものがある。
最近俺が受け始めたのがこれだ、
「一角鬼の討伐」
子鬼と呼ばれるそのモンスターは、赤色であったり青色であったり緑色であったりさまざまな色をしているカラフルモンスターだ。
奴らは人間の子供くらいの身長で武器は木製の剣や斧槍などを巧みに使ってくる。
最初は俺は人タイプということで対話を試みたがあれは動物に近い。すごく攻撃的で人間を食う食人鬼だ。放置すればここ街の郊外だけでなく、村などにも襲いかかる獰猛なモンスターだ。
なかなか醜い姿をしたそれは女性モンスターから様々な理由で嫌われている。
そんな一角鬼だが、集団を組んでいる事が多く舐めてかかると痛いを目見ることになる。
俺のスキルアイテムガチャのレベルが上がり少し利便性が上がった。
何を隠そう。レア度は選べないが、自分が必要とするアイテムが引けるようになったのだ。
接近戦をしたかったら、剣や斧、盾や槍など。レア度はまちまちだが戦闘行為はだいぶ慣れてきた。
一角鬼が発見されたとされる森の中を探索すると早速目標を見つけた。
数にして、10体程だろうか?
俺はアイテムガチャを発動する。一度ではなくリキャストを挟み合計何度も。
さて用意もできたし、戦闘開始だ。
一角鬼の背後の草むらから、手に持った剣で背中を一線。体を裂く重い感覚を味わいながら、その近くにいたもう一匹を切り払う。
仲間がやられ、怒り真っ直ぐ向かってくる奴らには剣を投げつけ再度アイテムガチャを発動。
両手に現れた武器は槍。ロングレンジに対して体格が小さい鬼たちは対抗する事ができない。唯一の対抗手段である数の暴力を計ってきたが、新たなアイテムガチャにより現れたのは巨大な石。槍で攻撃しながら、別の鬼を石で押し潰す攻撃に予測できず一網打尽。
「殲滅完了だな」
だいぶ戦闘に慣れてきたな。最初は使えないスキルなんて言ってごめん。めっちゃ強いぞこのスキル。
アイテムガチャは低ランクで有ればあるほど引きたいものが当たりやすいため、なるべく低ランク武器を意識して戦うようにすると、状況に応じて好きな武器で戦えるという強みがある。
そして戦いが長引けば長引くほど、いいアイテムも引けるから基本攻めすぎず、の姿勢が身についた。
火炎放射器みたいな高威力の武器は引ける確率が低いため、まずは引きやすい武器での戦闘を意識したのが功を成したらしい。
さて、次はどんな戦いをしてみようか?
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「おいおい大丈夫か嬢ちゃん?」
巨漢を受付席から覗かせて心配するのはポータートールだ。
「いえ、大丈夫じゃあありませんよ。最近お兄ちゃんは戦闘狂なんじゃないかって思いましてね?前は戦いはできるだけ避けようって感じの人だったんですよ?それなのに…」
そう、最近兄がバーサーク化しているのである。原因はたまに会っておるらしいあの筋肉だるまのオスカーの影響だろう。
教会の調査の協力に次いでに訓練してもらっているらしく段々と戦いに喜びを感じ始めてしまったのだ。
今朝なんて、一角鬼だとかいうゴブリンもどきを狩に行こうだなんて笑顔で誘われた。
「冒険者になるとやっぱり野蛮で横暴になっちゃうのね」
そうに違いない。自分も元天使だかそのうちニコニコしてゴブリンなどを殺害するようになるのかと想像すると震えてしまう。
「おいおい嬢ちゃんよ冒険者ってのはそういう側面もあるもんだぜ!男は自分が強くなってくのを実感すると堪らなく嬉しんだよ」
「初めて会った時に言われれば納得しますけど、貴方冒険しないじゃないですか?」
冒険しないどころか、前に受付している時虫にビビっていたのを思い出す。
「おいおい、嬢ちゃんは痛いとこ突くな。まぁでもなんだ兄貴はお前を養えるよう身を粉にして働いてんだからそんな風に言うじゃないぞ?」
確かにポーターさんのいう通りではある。兄のように狂いたくないという気持ちから戦闘系のクエストにはあまり行かないようにしてるため、賃金格差は少しずつ広まっている。
「そうねよね。ちょっとお兄ちゃんを労いに料理でも届けてくるわ」
「おう、きっと兄ちゃん喜ぶぞ」
ポーターに送り出されたこの後兄と妹の間で起きる大きな勘違いに拍車がかかることはまだ誰も知らなかった。
「