⭕ 夜の墓場で、かくれんぼ 4
「 刑事さん達が頭を掻き毟りながら困ってましたよ… 」
「 あっはは──。
何それ、見たかったわ〜〜 」
「 笑い事じゃないですって…。
5人の男子高校生を殺害した殺人犯が鴉蓙見澤に潜伏してるかも知れないんですよ!
村の皆気味悪がってるし、怖がってるし……。
年配者なんて、お墓参りが出来なくて、警察署に文句を言いに言ってるぐらいですよ… 」
「 あっはは──。
立ち入り禁止のテープを剥がせって? 」
「 そうですよ。
血やら汚物やらで汚れている家墓を掃除したくても、現状維持しないといけないから立ち入れなくて…… 」
「 こびり付いたら落とすの大変だものね。
清掃業者に頼んだら良いんじゃないの?
お金は掛かるけど、プロがしてくれるから綺麗に掃除してくれると思うけど? 」
「 僕もそう思いますけど…。
お墓って亡くなった御先祖様の家なんですよね?
早く掃除が出来るように刑事さん達には1日も早く事件を解決してほしいです。
犯人も捕まえてほしいし… 」
「 ──でもねぇ、犯人逮捕は無理じゃないかな〜〜 」
「 どうしてですか? 」
「 アタシも遺体の状態を見せてもらったけど、あれはどう見ても人間の仕業じゃないもの 」
「 えっ…人間の仕業じゃない??
犯人は人間じゃないんですか? 」
「 仮に人間が犯人だったら、複数犯人になっちゃうわよ。
1人で5人の男子高校生を殺害して、身体を雑巾絞りさせた後に、身体を有り得ない方向に折り曲げる──なんて荒業を出来ると本気で思ってる? 」
「 あっ……。
そう言われてみると……そうですよね…?
じゃあ、一体何がサユタ達を殺したんですか? 」
「 あららぁ?
ユタク君ったら、気になっちゃう?
犯人、知りたいの? 」
「 むぅ……。
そんな事を言われたら知りたいに決まってるじゃないですか!
勿体振らないで教えてくださいよ 」
「 今日は一段と陽射しが強いわねぇ。
冷たいパフェが食べたいわねぇ〜〜 」
「 …………有明古さん…。
また僕に集るつもりですか? 」
「 集ってないわよ〜〜。
情報料よ、情報料!
ユタク君が高校を卒業して正式にアタシの助手になってくれるなら、お姉さんが奢ってあげても良いわよ♥ 」
「 …………僕は一応…旅館の跡継ぎなんですけど… 」
「 ユタク君は、お姉さんから受けた恩を仇で返そうって言うのね。
いいわよ〜〜、別に!
パンケーキも頼んじゃうから! 」
「 ちょっ──、有明古さん!
パフェとパンケーキを頼まれたら千円じゃ足りないんですけど! 」
「 え〜〜〜?
犯人を知りたいんでしょう〜〜?
授業料だと思えば安いじゃないのよ♪
ほらほら、喫茶店に行くわよ 」
「 もう〜〜……。
何が授業料ですか…。
高校生に奢らせないでくださいよ…… 」
青年──ユタクは大きな溜め息を吐くと、諦めたかのようにトボトボと歩き始めた。
ユタクの前をルンルン気分で歩く有明古は、トンネルに入ると日傘を折り畳む。
「 トンネルの中って涼しいわよねぇ♪
此処のトンネルは風通りが良いから好きだわ♥ 」
「 有明古さん、日傘を振り回さないでくださいよ…。
もう、危ないですよ! 」
「 誰も居ないんだからいいじゃない。
残留思念には当たらないし〜〜 」
「 残留思念……って、このトンネルに幽霊が居るんですか?! 」
「 あぁ…そっか。
ユタク君は見えないから分からないんだよね。
此処のトンネルの一部がね、霊道と重なってるの。
だから、偶に残留思念がトンネルの中をフラフラしてるのよ。
あぁ…でもね、残留思念には何の力もないから怖がる必要ないわよ。
見えないユタク君は、何時も通りトンネルを歩けばいいよ 」
「 …………聞きたくなかったです…。
何処が霊道と重なってるんですか?
幽霊はトンネルから出たりするんですか? 」
「 霊道から外れた残留思念は霊道を探して霊道の近くをウロウロしてるの。
トンネルの外には出ないし、誰かに取り憑くなんて事もしないわよ 」
「 そ…そうなんですね…。
良かった… 」
「 ほらほら、トンネルを出るわよ。
ユタク君、喫茶店まで競争しよっか? 」
「 嫌ですよ…。
唯でさえ暑いんですから!
喫茶店は逃げたりしませんし、歩いて行きましょうよ 」
「 ユタク君……体力なさそうだもんねぇ。
ちゃんと筋トレしないと駄目よ 」
「 …………してますよ… 」
──*──*──*── 喫茶店
「 ん〜〜〜♥
このパンケーキ、美味しい〜〜♥
最高ぉ〜〜〜♥
ユタク君にも一口あげる。
『 あ〜〜〜ん 』して♪ 」
「 しません!!
高校生に『 あ〜〜ん 』を強要しないでください。
逆セクハラですよ! 」
「 はぁ〜〜〜ユタク君ってば、お堅いわねぇ… 」
「{ それより──、サユタ達を殺した犯人を教えてくださいよ }」
「 あぁ…そうだったわね。
5人の男子高校生殺人犯の正体はズバリ──、怪奇よ 」
「 ──はぃ?
怪奇……ですか?? 」
「 そっ、怪奇。
彼等はねぇ、呪術返しに遭っちゃったのよ 」
「 呪術返し??
何ですか、呪術返しって? 」
「 憎い相手を呪ったりするアレよ。
小説,漫画,アニメ,ドラマ,映画に出て来るから知ってるでしょ?
呪術ってね、失敗すると依頼主に跳ね返って来るの。
最近はネットでも気軽に呪術代行してくれる呪術者なんてのも居るけど、利用しない方がいいのよねぇ 」
「 どうしてですか? 」
「 仮に呪術代行者が呪術に失敗しても、代行者に呪術返りはしないの。
呪術を依頼した依頼人が呪術返りを受ける事になるのよ 」
「 えと……どうして呪術を掛けた代行者には呪術返りしないんですか? 」
「 そりゃ、そうならないようにしてるからよ。
自分に呪術返りしたら嫌じゃないの。
呪いを頼んだ依頼主に呪術返りするように仕向けるのは当然でしょ。
それがプロの商売人ってもんよ。
仮に呪術返しで依頼主が死んだって自業自得だからね、呪術代行者が罪に問われる事はないわ。
だって、依頼人が何処に住んでるのか、何処の誰なのか知らないんだもの。
面識も無いし、顔も知らないし。
事故とか事件とか病死とか変死とか──死に方は様々だから、呪術代行者が犯人候補に上がったり、疑われたり、捕まったりなんてしないのよ 」
「 …………そ、そうなんですね… 」
「 割りとディープな世界でしょ? 」