⭕ 夜の墓場で、かくれんぼ 1
夏になると、何故だか無性に肝試しをしたくなる時がありますよね。
肝試しは度胸試しに持って来いな風物詩的な行事ですよね。
これはとある田舎のとある場所で行われた “ 禁じられた遊び ” に参加した人達のお話です。
小学生の頃から仲良し5人組だったサユタ,ノブト,タクマ,イツキ,ハルトは高校生になっていた。
同じ中学校に通っていた5人も選んだ高校はバラバラで、高校生になってからは中々会って遊ぶような事はなかった。
然し高校生になり、違う高校に通っていても5人はラインで連絡を取り合っていた。
5人にしか共有の出来ない現象が起きていたからだ。
5人を苦しめる謎の現象が、5人の絆をより強固にしていた。
高校2年生となったサユタ,ノブト,タクマ,イツキ,ハルトの5人は、夏休みを利用してとある田舎へ遊びに来ていた。
中学に上がる前に他県へ転校してしまった友達が暮らしている田舎へやって来たのだ。
他県の田舎へ引っ越してしまったのは、ユタクだ。
ユタクが小学4年生になった夏休み、父方の父親が亡くなった。
遺産相続によりユタクの父親が旅館を継ぐ事になったのだ。
ユタクは母親と共に父親の故郷である鴉蓙見澤へ引っ越したのだ。
ユタクは憂鬱で仕方無かった。
小学生の時に自分を苛めていた5人組が我が家へ泊まりに来るのだから……。
ユタクが暮らしているのは我が家の裏手にある離れだ。
旅館にはユタクの自室があり、普段は旅館内で暮らしているのだが、5人と顔を合わせるのが嫌なユタクは、敢えて我が家の自室ではなく離れで寝泊まりをしていた。
その日の昼はとびきり暑い日だった。
サユタ,ノブト,タクマ,イツキ,ハルトは宿泊している旅館から離れた河原で水遊びをしていた。
その中にユタクの姿はなく、5人は旅館に宿泊している間、ユタクに会った事がなかった。
明日は祭りの日で、今日も朝から村人達が明日のお祭りの為に準備をしていた。
夜には花火も見られるとの事で、5人は明日に控えたお祭りが楽しみで仕方無かった。
水遊びをしていると、何時もの謎の現象が5人を襲った。
「 もう…いいかい… 」と耳元で囁かれるのだ。
この「 もう…いいかい… 」に5人は8年間、1度も返答をした事がない。
8年間、ひたすら耳囁きに耐え続けていたのだ。
「 まただ…。
もう、嫌だ!!
一体何時までこの声に悩まされないといけないんだ!! 」
「 本当だよな!
何で俺達にだけ、聞こえるんだよ!! 」
「 …………8年前、隣町の公園で発見されてからだよな… 」
「 ……あぁ…。
空き家に忍び込んで、“ かくれんぼ ” をしてた筈なのに……、何故かオレ達は公園で目が覚めた。
お巡りさんに保護されて……家に帰った次の日から耳囁きが始まったんだ… 」
「 ユタクを囲んで問い詰めても『 耳囁きなんかしない 』って泣いてたしな。
アイツだって空き家で “ かくれんぼ ” をしたんだぞ!
なのにアイツだけ公園に居なかった。
アイツは空き家で隠れてたオレ達を探さないで1人で空き家から逃げたんだ!! 」
「 ユタクだけは──今でも許せねぇ!! 」
「 だけどさ、ユタクが引っ越すまでオレ等ずっと、1人で帰りやがったユタクに仕返ししてたじゃんか 」
「 ユタクに色んな罰を与えたけど……結局さ、耳囁きは今も続いてるだろ? 」
「 …………ユタクの呪いか?
ユタクに罰を与えるようになってから、耳囁きの頻度が増えた気がするんだよ… 」
「 ユタクが俺達への仕返しの為に呪いを掛けてるなら、ユタクに呪いを解かせないとだよな 」
「 何とかしてユタクに会えないかな?
アイツは旅館の亭主と女将の息子だろ?
旅館に居るなら嫌でも顔を合わせる筈だ。
なのに1度もアイツを見てないんだ。
どういう事だよ! 」
「 …………故意にオレ等を避けてるのかも知れないな。
オレ等はユタクを苛めてたからな。
顔も見たくないんじゃねぇの? 」
「 ………………あぁ…まぁ……そうだよな…。
人に言えないような事とかしてたもんな…… 」
「 ……やっぱりさ、ユタクがオレ達を呪術とかで呪ったんじゃ……。
今はさ、ネットで呪いの代行依頼が出来るらしいじゃんか 」
「 マジかよ?!
ガチで効果あるのかよ?
神社の木で藁人形に釘打ちするわけ? 」
「 いや、やり方は分からないけどさ… 」
「 なぁ、それやってみねぇ? 」
「 はぁ?
やってみるって、オレ等がネットで依頼すんのか?
オレ等の代わりにユタクを呪ってもらうのかよ 」
「 効き目があるかは分からねぇけどさ、面白くね? 」
「 でもさぁ、金が掛かるだろ〜〜 」
「 お前等は、ユタクを懲らしめたくないのかよ!! 」
「 ………………いや…、どっちかってぇと、懲らしめられるのはオレ達の方じゃないかな… 」
「 お前、腰抜けだな! 」
「 タクマ… 」
「 まぁまぁ、タクマもハルトも喧嘩すんなって。
サユタ、どうする?
ユタクの奴を呪ってみるか? 」
「 そうだな…。
まぁ、良いんじゃないのか?
但し、無料のにしろよな 」
「 了!
ノブトぉ〜〜〜、スマホ貸してくり 」
「 バッカ!
誰が貸すかよ!
イツキ、お前のスマホ使えよ! 」
「 イツキ、俺のスマホ使えよ。
言い出しっぺは俺だからなら 」
「 おっ、サンキュー。
タクマ♥
じゃあ、早速、呪い代行の依頼しちゃうなーーー♪ 」
イツキがタクマのスマホを使い、ユタクへの呪い代行依頼を済ませた後も、5人は河原で水遊びを続けた。
日が暮れ出した頃、5人は河原から離れると旅館へ向かって歩き出した。