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第一話:送られた世界①

昨日に引き続き更新です。明日も更新しますのでよろしくお願いします。

暑い…喉が渇いた…。上手に思考できない…。


「………っ!…さ……!」


何も見えない…何も聞こえない…ただただ謎の熱が体を覆っている…。そうだ…私はさっきまで何をしていた…?


「…お……さ………!」


私は謎の多い少年と話していて…それから…光で飛ばされた…。そうだ、言葉の旅だ…!少年はそう言っていた。ん…?今…かすかに何かが聞こえたか…?


「おね…さ…ん…!……おねえさん‼︎」

「…え?」


意識を失ってから急に目が覚め、目の前には少年が居る。デジャヴな状況だ。

しかし、言霊の時とは違い、姿がはっきりとわかる。


「あなた…は…?ここは…」

「目を覚ましたようで良かったです!僕が通りかかったときにはすでに、おねえさんがグッタリしてここで寝ていて…。僕はその…コトダマ…って人は知らないですね」


この少年は意識を失っていた私を介抱してくれたらしい。


「そ…そう…。私は美神 智と言うわ。ボク、助けてくれてありがとう」

「安心するのはまだ早いですよ…!えと…トモさん、まだ顔色が良くないです…。これ、お水です…!飲んで安静にしててください。その状態ではまだ動けないと思うので、大人の人を呼んできます。少しここで休んでいてください!」

「ありがとう。助かるわ。ところで君の名前を教えてくれる?」

「あっ、まだ言ってませんでしたか!ごめんなさい!僕のことはテンと呼んでください!」

「わかったわ。よろしくね」


そう私が言うとテンくんはニコッと私に微笑みかけて、走って行った。おそらく彼は言霊とは無関係だろう。


しかし…。本当に、今までいた世界とは全くの別世界だ。周りを見回しただけでそれははっきりとわかった。言霊は最後に『転送する』と言った。私が日々を過ごした日本とも、言霊と会った空間とも、違う世界なのだろう。

私は日本で会社員をしていた。仕事に没頭する生活の中での唯一の娯楽と言えば、読書だった。この状況は本で言う“異世界転移”と似ている。

しかし、日本でもそれなりに充実して生活出来ていたので、“異世界”への憧れなどはなかった。正直、今は不安が大きい。この状況が転生や転移のようなものかは不明だが、仮にそういうものとしておこう。


「姉さん、こっちこっち!」

「テンくん…待って…!速いよ…!」


テンくんが人を呼びに行ってから約10分。テンくんは若い女性を連れて戻ってきた。2人とも西洋的な顔立ちをしている。実に美形だ。


「トモさん!姉さんを連れてきました!僕がいない間、体調は大丈夫でしたか?」

「テンくん、どうもありがとう。私の方は大丈夫よ。水分をいただけたおかげで、だいぶ頭も冴えてきたわ。えっと…お姉さん、で良いのかしら。来てくださってありがとうございます」


私がテンくんの連れてきた女性に話しかけると、女性は戸惑ったような様子であたふたしながら、頑張って言葉を捻り出したようだった。


「あ…えと…あの…、私はテンくんの姉のリリーです…。女の人が倒れている…とテンくんが言うので…」

「リリーさん、お手数をおかけしました。私は美神 智です。弟さんのおかげで、少し体調も良くなりました。ありがとうございます」

「いえ…私はなにもしていないので…大丈夫です。あの…今日はうちにいらしてください…!見たところ、まだ動いて良い体ではないです…。家に空き部屋がありますので…そちらを使っていただければ…」


リリーさんは辿々しくそう言った。ぜひそうさせて貰いたいが、この世界に来たばかりで何もわからない状態で、信じて付いて行っても大丈夫なのだろうか。


2人やその家族が私にとって全く無害な良い人だったとしても、心配な点はある。

そもそも、言霊が私を、“この世界のこの場所に”転送した理由はいったいなんなのだろうか。ここでテンくんやリリーさんに会うことまで言霊の計算通りなのだとしたら、私だけでなく2人にも言霊の影響が出るかもしれない。


「トモさん、僕たちの家は大丈夫ですから遠慮せずに泊まってください!それに、なんでこんな所で気を失っていたのかも聞きたいです!」

「ええ…そうね…。本当に、ご迷惑にならないかしら…」

「大丈夫です!それより、この状況でトモさんを見捨てる方が無理ですよ!」


大丈夫…この子の目は、悪いことをしようとしている目ではない。ここは信じて身を任せることにしよう…。ごめんなさい、あなた達を何か大変なことに巻き込んでしまうかもしれない。


「それなら…お世話になろうかしら。ありがとう。よろしくね」


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