プロローグ:少年
陽ノ影と申します。初めての連載作品です。言葉を巡るローファンタジー作品になる予定です。最初は3日連続で更新し、次週からは週1~2回ペースでの更新を目指します。たくさんの方に気に入って貰える作品にしたいです。よろしくお願いしますm(_ _)m
【プロローグ:少年】
「……君は、言葉とはどんなものだと考える…?」
気付いたら目の前には一人の小さな少年が居た。顔にはモザイクのようなものがかかっていて、表情は読み取れない。見た目に反してその声音は酷く冷たく、少年が発する言葉は脳内に直接響く。言葉選びは大人びており、語る言葉には独特な間がある。
「…凶器。私にとっての言葉とは、凶器よ。それで、あなたはどこの誰かしら?」
状況をつかめないので疑いつつも、私は返答した。少年は私が言葉を返すと小さくうなずいて言った。
「君は僕が誰かまだ気付いていないようだね。まあ、僕が君の記憶から僕を消したのだけど。わざわざ記憶から消したことだ…。今は教えるつもりはないよ。そうだね…今は仮に、言霊とでも名乗っておこう。少なくとも、君の敵ではないから安心してほしい。返答は…予想通りだね」
私の返答は予想されていた。どうやら少年と私は顔馴染みだったらしい。
「では…言霊くん。あなたは私を知っているようだけど、何の用事があってこの奇妙な世界に呼び出したのかな。というより、ここはどこなの?」
「ここは現実であって、君の思う現実ではない…とだけ言っておく…。用件は、君に旅をしてもらうためにこの世界に呼び出した」
自称‘言霊’の少年は、淡々と真っ直ぐな目で私にそう言った。
「あら。私は早く家に帰りたいのだけど。こんな不明な点に満ちた状況で、わかりましたとは言えないわね」
「旅に関しては拒否権はない…。あと5分後に自動的に旅はスタートする。旅についても今は詳しいことが言えない。不明な点についてはいずれわかる」
「へぇ。嫌な感じね」
そう言うと言霊は俯き、何も言わなくなった。
ここがどこかも不明瞭。旅の概要も不明。それに拒否権もなければ脱出する手段もないようだ。私はその場から離れることが何故かできなかった。私がいる場所…空間は、ただ平らな床があるだけだった。壁はない。眺めれば果てしなく続く、奇妙な空間だった。
「もうすぐ時間…」
「ひとつ聞いていいかしら。その旅は、楽しい旅なの?」
「……君の感じ方による。時間なので転送する。言葉の旅へ、いってらっしゃい」
私は声を出そうとしたが、間に合わなかった。
言霊が最後の一言を述べた瞬間、頭の中が真っ白になるくらいに眩い光が、空間全体に広がった。
目を閉じ、私は意識を失った。
『ーあなたが心を取り戻しますようにー』
プロローグでした。この話だけだとストーリーが掴めないかもしれません。申し訳ない…。明日、第一話を更新しますので、興味がありましたらそちらもよろしくお願いします。
今回はシリアス回でしたが、コメディ要素も含めた温かい作品にできるよう頑張ります。多分、話が進むたびにコメディ要素は強くなっていく予感がします…笑
では、次のお話でまたお会いしましょう。読者の皆さんが素敵な作品に出会えますように。