魔法と地図
マリア先生の爆弾発言により、午前中は授業にならなかった。勇者を一目みようと全校生徒が一年のクラスに押しかける騒ぎとなり、学園はどんちゃん騒ぎとなった。
午後の授業はなんとか始まったが、先程やってきてマリア先生は少しやつれているように感じられた。きっと学長室でこっ酷く叱られたのだろう。
『これまで魔法の歴史について学んきて前回理論編に入りました。前回やった魔法の五大要素を覚えていますか? ではシトリーさん答えてください。』
『はい。魔法の五大要素は属性、効果範囲、効果時間、魔力の元となるマナ、そして自然の力の元であるエナです。』
『正解です。前回授業でも話しましたが五大要素と括られてますがマナ、エナと属性、効果範囲、時間では大きな違いがあります。それは何でしょう?、、ではカイルくん』
『はーい。マナ、エナは魔法陣が発明される以前の詠唱のみで魔法を発動していた時代から存在する要素で、属性、効果範囲、効果時間は魔法陣が開発され、その構築時に設定が必要になった要素として、追加されたものです。』
『歴史的にそして設定された背景の違いはそれで正解です。私が前回説明した内容もその通りです。では、ここから今回の授業にはいりますが、、マナ、エナとその他3つで根本的に違うところがあります。それは何でしょうか?』
ユリア先生の問いかけに皆考え始めた。魔法のことなど全く知らない勇者はふとイースリアへ向かう馬車でのことを思い出していた。
暇を持て余し変わり映えしない景色を眺めるのにも飽き、勇者はリリィに色々な事を質問し始めた。
『この世界はどんななんだ??』
『とっても大雑把な質問ですね。ではこのユーラス大陸の国々のお話をしましょう。先ず皇帝陛下のお話にもありましたが、南大陸は魔族の国によって支配されています。以前魔族の国と親交が深かった国の商人から聞いた話ですが3つの国によって支配されているそうですよ』
『魔族と親交がある国??どんな国なんだ??』
そんな他愛ない、話の流れからの当然の質問を投げかけるとリリィの顔色が少し暗くなったように勇者は感じた。
『、、、自然の豊かで街には活気がありいい国でした。』
『でした?、、もしかして、、』
『はい、3年まえその国は、、エトワール王国は滅びました。』
『魔族に裏切られて、とか??』
何気なく言った言葉にリリィは語気を強めて反論した。
『そんなわけありません!彼の方達がそんなこと!、彼等は』
『ひめ、リリィ様!!落ち着いてください。』
運転をしているリリィの使用人である御老人が慌てた様子で話を遮った。
『っ!!!、、、すいません、取り乱しました。』
気になる発言の連発だったが話をむし返せる雰囲気ではなかった。
雰囲気を変えようと勇者は話を切り替えた。
『イースフェルト帝国は人族の国の中ではどのような立ち位置なの?』
『え?!、えっと、国力で言えば第2位、領土で言えば第1位の国で北大陸の四分の一を領土にもつので年に4回行われる統一会議でも強い発言力を持っています。』
統一会議とは人族の国の首脳陣が集まり国間の大小ある様々な事柄の調整を行うのが当初の会議の目的だった。現在では大国が小国を締め上げ搾取するための調整と言う名の命令を出す会議と成っている事を誰しも知っていて何も言えない。そんな話をリリィは続けた。そしてその大国とは、、、
『、、、それでその会議に参加している他の国はと言うと、隣国で帝国同様魔族の領土と接しているアーノンルド共和国、大陸北部のツェルノー神国、商人達の興したゼノリー自治国、ちなみこのゼニール自治国が国力一位の国ですね。この辺りが大国と言われる国であとは小国が8カ国参加しています。』
『帝国って言うだけあって大国の中でも強国なんですね。そー言えば今回行くイースリアって首都なんだよね?、どの辺にあるの?』
リリィはおもむろに腰にかけた鞄から紙を取り出した。見るとそれは地図だった。見ると帝国と囲われた領土のなかは点線で区切られていた。そしてイースリアはそして今までいた町、聖地カルタンタは魔族との境界線から一番離れた場所にある帝国直轄領と書かれた点線内にあった。
『このライオネル領とか、ユリザーク領ってのどーゆー意味なの??』
『それはですね、有力貴族が治めてる領地という事です。見ての通り帝国領は広いので有力貴族三家に統治を委任しているのです。もう一家はウィルト家ですね。』
ウィルト領と書かれた場所を指しながらリリィは答えた。
『そう言えば編入する一年にそろっているらしいですよ?。三家の次期当主が。』