暴露
もうすぐ日が昇ろうかという頃、毎朝の鍛錬のためもう少しベットで眠って居たい気持ちを押し込み、ぐーっと背伸びをしてシトリー・ライオネルは起き上がった。
『お嬢様おはようございます。朝食はいつものようにご用意しておりますので、何かありましたらお呼びください。』
『シーラ、いつもありがとう。』
シーラは朝食の入った膳をテーブルに置くとシトリーの方をむきカチャっと音をたて会釈をすると側付きの控え室へと戻っていった。
着替えを済ませ、朝食を食べるとシトリーは演習場へ向かっていった。
こんな朝早くなので学園内はいつもは人気もなくとても静かだ。しかし今朝は様子が違った。演習場へ向かう途中校舎を通りすぎるとき多くの先生や教頭、学園長までもが血相を変え、馬車馬のように働いていたのだ。
『なにかあったのかしら、、?』
気になりはしたが、自分が聞きにいっても手間を増やすだけだと思い。シトリーは演習場へと向かっていった。
話は少し遡り、勇者とリリィが魔術学園に到着したときのこと。
イースリア魔術学園の学園長、ワーロックは手に持った手紙と目の前の少年を交互に見ながら思考が停止していた。
夜更けに急な来客と受付から連絡が入ったので明日来られるよう回答をすると、その受付が手紙を握りしめ学長室に飛び込んできた。
その手紙には皇室の印が押されてあり、一大事であることはすぐにわかったため、来客を部屋までの案内を言付け、手紙を読み始めた。
そこには、勇者に魔法を教えよ。との一文と皇帝グルーシス・イースフェルトのサインのみが記されてあった。事態を把握しようと頭をフル回転させていると
『お連れしました。』
学園長に就任以降、一番忙しい一日は今こうして始まったのだった。
授業開始の少し前、学長室には学園長、勇者、リリィ、担任を務めるユリア先生は最後の確認を始めた。
『それでユリア先生、大丈夫ですかな?』
『はい。勇者様であることは伏せて、一生徒として学んでいただくんですよね。』
『そうです。くれぐれもお願いしますね。』
『みなさんに転校生を紹介します。』
1年生のクラスでは、少し緊張しているマリア先生がやってくると、朝のホームルームが始まった。そしてマリア先生の緊張感がマックスになると転校生を招き入れた。
『それでは”勇者様”、自己紹介をおねが、い、、?!』
痛恨のミスだった。クラス中が勇者に注目した。否定しようにも既に手遅れだった。学園中に勇者が転校してきたのが知れ渡るのは止めようのない事だった。