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体が動いた、手が見えた。自分が生きている可能性を考えた矢先、透き通った女性の声が響いた。


『”勇者様”転生おめでとうございます』と。


生存を自覚しようやく頭が働き始めた。そして決定的な違和感を感じ、聞こえた言葉を反芻する。


勇者??転生??どういうことだ?、、でも確かに、、


ようやく暗闇に目が慣れ、辺りの状況を認識し始め、キョロキョロと辺りをみていると少し離れたところに声の主を見つけた。一眼見ると意識が吸い込まれそうになった。そう錯覚するほど美しい女性がそこにたっていた。


先ほどの言葉といい、見知らぬ人の存在といい、認識が追いつかず女性にすがるように視線を送っていると、その女性は不敵な笑みを浮かべるとこちらに近づいてきた。


『、、、あ、な、たは、、?』


思ったように声が出ず、なんとか言葉を話すと、女性は立ち止まり驚いた顔をした。


声を出せた事がそんなに驚くことなのだろうか?、そんなことを感じながらふと自分の体に意識が行くと、また足音がコツン、コツン、と始まり、女性が近づいてきた。


勇者は自分の体を見た途端固まった。裸だったのだ。しかし足音は容赦なく近づいてくる。


はずかしさを感じながらもなんとか取り繕い顔をあげるのと、足音がとまり1メートルほど先に女性が止まるのは同じタイミングだった。


綺麗な女性だった。


しかし先ほどのような意識が吸い込まれるような感覚はなく、先ほど感じていた絶世の美女と言う印象はなかった。


そんな印象の違いに違和感を感じつつ女性を見ていると、女性は手に持っていた紙を開くと、聞き取れないが何か声を発した。


すると女性の持っていた紙がブォワっと燃え上がり、直後自分の体が淡い光に包まれた。


驚いて体を確認すると服を着ていた。


驚いた顔で女性を見ると女性は微笑むと、


『聞きたいことや理解出来ない事がたくさんあると思いますが、このあと説明いたしますので、どうぞこちらに。』


そう告げると有無を言わせず歩き始めてしまった。


勇者は女性のあとをついていった。


扉が開くとその先は明るく、てをかざしながら歩いて行くと、そこは神殿を思わす長い廊下だった。石柱の隙間から外を見るとここが丘の上にある事がわかり、丘を下りたところに街も見えた。


人気の全くない廊下の先にはまた大きな扉がありそこへ向かって歩いていく。あとすこしで着くかという時に人知れず扉が開いた。


扉の先の部屋には身だしなみの整った人が椅子から立ち上がりこちらに注目していた。


扉をくぐり部屋に入るとまた扉が勝手にしまり、部屋にいた人達は椅子に座り直すと、静寂につつまれた。


『それで、リリィよ、その者が?』


唯一椅子から立ち上がっていなかった壮年の男が自分をここへ案内していた名前はリリィと言うらしい女性へ話しかけた。


『おっしゃる通りです。へいか。』


その言葉を聞くと、そのほかの人々から歓声がきこえ、隣同士などで喜びを共有していた。一時部屋は喧騒に包まれた。しかしリリィがへいかと呼んでいた男が咳払いをするとそれが嘘だったように元の静寂に逆戻りした。


『さて、そなたには質問したい事がたくさんあるだろ。じゃがまずはこちらの話を聞いて欲しい。』


有無を言わせない迫力を孕んだ言葉に勇者は頷くと男は話を続けた。


『まず、我はイースフェルト帝国の16代皇帝のグルーシス・イースフェルトである。』


へいかとはやはり陛下であっていた。そして王様が直々にやってくる辺り、ずっと聞き違いだと言う事で思考を放棄していた”勇者”と言われた事が現実味を帯びてきてしまった。


自己紹介の後に話された内容はもう一つ思考を放棄していた転生という言葉を信じざる得ない内容だった。


この世界には人族の他にファンタジーにありがちな亜人族、魔族、など様々な種族が存在する。そして友好的な関係も存在するが当然のように対立しあっている種族も存在した。人族と魔族のように。


魔族は魔法適正が多種族に比べ高い。


そして魔法は適正に大きく左右され、この世界の技術体系の根幹であるらしく魔法適正の高さは相当なアドバンテージであるらしい。


力を持つ魔族がどのような振る舞いをしているかはゆうまでもない。そう、帝国のように、、、


そして現在魔族はイースフェルト帝国があるユーラス大陸の南側を領土としている。ユーラス大陸は鏡餅のシルエットを反対にしたような真ん中にくびれをもったような形をしており大雑把にいって北側の大陸に人族、南側の大陸に魔族がすんでいる。イースフェルト帝国はそのくびれの位置にあり南側の国境で魔族の国と面してしる。


最初は人族も魔族も大陸全土に国を興し住んでいたが魔族が侵略を始めて南側は全て魔族の国となったという。


後は想像に難くない。


『残念ながら我がイースフェルト帝国は悪しき魔族との戦争において劣勢を強いられておる。そしてこの度条件が整いようやっと勇者の召喚を成す事ができたのだ。』


そして話を聞いている中で想像していた通りのお願いをされる。


『勇者殿よ。我が帝国を、いや、人族を救ってくれ!』

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