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第9話 竹取物語 起

 人間たちの活動が活発だ。

 わかっていたことだが、あの静かな関東平野はどこへいったんだと言いたいほどに人が増えている。


 こんなに人が多いとトラブルも多い。

 葉っぱの射出だけじゃ追いつかなくなってきた。


 やっぱり助手のような存在が欲しい。


 エルフ的な世界樹に仕える種族がいてもいいと思うんだ。


 思い返すのは天叢雲剣あまのむらくものつるぎだ。

 あの剣はどう見ても魔法的な力を発揮していた。


 三種の神器の一つなのだから不思議ではないのかもしれない。

 だが、この世界でも魔法が許されている証拠としては悪くないのではないか。


 ならばエルフだろうと、いてもおかしくないはずだ。


 俺はそう思い込んだ。


 ピコン。音がした。気になって、久しぶりに機能ウィンドウをのぞいてみる。


 →耐火性

  樹高

  幹周り

  強度

 しなやかさ

 葉の数

 葉の鋭さ

  葉の射出

  根

  森人生成 “New”

 

 *光合成効率を変える際はここを押すこと。今の属性は陽です。



 どこを強化しますか

 →1〜100m

  101〜200m

  201〜300m

 301〜400m

 400〜500m

 500m〜


 まじか。何か増えてる。森人生成だと。

 やっぱり思い込めば追加されるみたいだ。


 日本だからファンタジー的なものは無理だと思っていた。

 ヤマトタケルありがとう。あれで気づくことができた。


 日本も元から結構ファンタジーだ。


 生成という表現に思うところはあるが、これが想像通りのものだとすると大勝利の一言だ。

 これでかなり楽になる。


 早速選択してみる。


 謎のアバター生成画面が出てきた。そういう感じになるのか。


 俺の意識が人の形をとって歩けるだけというオチはないよな。

 俺は独立した個人が欲しいんだ。

 ちょっとだけでもおしゃべりしたい。

 もう三千年近く独り言を呟き続けてるんだぞ。


 森人というからには、俺と連絡は取れるのだろう。そうに違いない。


 どうせなら、女がいい。人間としての残滓がそう囁く。

 まあ、エルフって言ったら女だし。そうしてみよう。

 非常に美しい女になるように。


 顔設定

 耳設定

 体設定

 技能設定「ランダム」

   「ランダム」

    「ランダム」

 名前「輝夜」

 性別「女」

 成長設定(成長速度up)


 顔メイクに時間をかけ、耳メイクが単体であることにツッコミを入れ、技能はよくわからなかったのでスルーした。

 名前は適当に生きてたころ人気だったV○uberから持ってきた。正直顔のあたりで疲れた。まあ、こんなもんだろ。確定っと。


 技能設定—「黄金生成」

    「全体自動回復」

    「秘道具アーティファクト生成」


 おっ。いい感じだな。これはランダムだといい技能がもらえるってことになるのか。



 場所(竹林)


 おいっ。最後になんか変なのあったぞ。なんだこれ。なんで事後に出てくるんだ。詐欺だろ。


 何かが俺の中から出て行く感覚があった。俺のエネルギーを使っているのは間違いないらしい。


 これはかなりきついな。何人も生成することはできないかもしれない。


 しばらく待って見たが、俺の近くに誰かが出てくることはなかった。失敗か?

 エネルギーを取られたのは確かなんだが。



 〜


「ありゃ。あの竹はなんじゃ。光っておる。」


 竹を取りに来た翁はそんな不思議な様子を目にした。


 その竹を切り、中に光り輝く女の子を発見し、導かれるようにかぐや姫と名付けた。


 女の子はすくすくと、常人では考えられないような速度で成長した。


 彼女を見つけてから翁は竹の中に黄金を発見するようになり、家はみるみる裕福になっていった。


 この子の姿は光り輝くようで、その姿を見るだけでどんな病気も癒えた。


 この娘が大変美しいという噂は都の方まで広がっていった。

 噂になると、一目見たくなるのが人間というもの。


 かぐや姫の屋敷は連日人々でごったがえすことになった。

 下々のものも多数やって来たが、全員門前払いをされてしまった。


 だが、身分実力容姿の三拍子揃った五人の貴公子だけは翁も追い返せなかった。


 石つくりの皇子、蔵持皇子、阿倍のみうし、大伴みゆき、石上いそのかみまろたりの五人が、かぐや姫に求婚することになった。


 竹取の翁はどうか結婚してくれるようにかぐや姫に頼みこむ。


 だが、彼女には何か忘れているという確信があった。

 一番大事な人が他にいるという予感である。


 彼女は五人の公達きんだちに無理難題を申付ける。

 それはこの世界にないと確信できるもの。

 迷信の品物。


「仏の御石みいしの鉢」

蓬莱ほうらいの玉の枝」

「火鼠の皮衣かわごろも

「龍の首の珠」

「燕の子安貝こやすがい


 その5つであった。


 こうして貴公子たちはいったん引き返すこととなる。

 わざわざ東国までやって来たのにもう一度と戻ることにため息をついた。


 それでも、実際にまみえたかぐや姫の美しさに打たれた彼らには諦めるという選択肢はなかった。


 途中の東国名物となっている大和杉の下で休憩しながら、彼らはかぐや姫の美しさについて大いに語り合ったという。



 〜



 木の下に供回りを大勢引き連れた都から来たっぽい連中がいたから耳を澄ませていたんだが、かぐや姫だと。


 どう考えても俺が作ったあれだよな。


 安直に輝夜などと名付けてしまったのが間違いだったのか。


 どうしよう。


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