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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
現代

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第69話 素晴らしき日々

 敷島家の邸宅は山の手の一角にある。

 できれば、大和杉の近くに構えたかった。


 しかし、あの場所は下町で大邸宅があると目立って仕方ない。

 会社を近くに置けただけで満足するしかなかった。


 邸宅を持たないという選択肢もあった。

 だが、政府の目を誤魔化す必要もあり、大きな拠点はどうしても必要だった。


 魔改造が施され、住人以外には死の屋敷となっているという噂もある。


 愛がノリノリで忍者屋敷に改造していた。


 隠し部屋やくぐり戸。どんでん返しに縄ばしご。


 地下通路に見張り部屋。竹槍が突き出す罠の廊下。


 様々なギミックが仕込まれている。見るからに高級な大邸宅なのに、中身はただの忍者屋敷だ。

 ギャップがすごい。


 大和杉が知ったら、人になれないのを悔やんでいただろう。


 忍者屋敷はロマンである。


 お金があったら作りたい。


 愛はお金も知識もあったので作ってしまった。


 そんな屋敷で一家団欒だ。面白い状況であることは間違いない。


 一応、各家族でスペースは別れている。


 それほどに広い。


 さて、明の話に戻ろう。



「私の口調って、色々変わるじゃない?」


「そうかな。あんまり意識してなかったけど。」


「例えばおじいさまに対しては丁寧な言葉遣いをしてるわ。お母様のような感じね。」


「言われてみれば。」


「そして輝夜お姉様の相手だと、かなりお姉様の口調が移ってくるわ。」


「今もそうだね。」


「白相手なら、全然自然体でいけるんだけど。」


「それは光栄だ。」


「とにかく、意識しないうちにこの三つの口調が混じるの。一つならわかりやすいのに、これじゃ印象が薄くなっちゃう。」


「明の印象が薄くなることはないと思うけどな。」


「嬉しいけど、私にとっては死活問題なの。」


「明はどこと戦ってるんだろう⋯⋯。」


「何か負けられない相手がいる気がする。」


 多分いない。


 とはいえ、明が不安そうなのは本当だ。


 白も流石に心配になってきた。


 でも、いくら肯定しても彼女は思考の迷路に入っているようだ。


 抜け出す気配がない。


 バブル崩壊を切り抜けるのでいっぱいいっぱいだったのだろう。


 ほぼ無傷で切り抜けた敷島には今まで以上に注目が集まっている。


 マスコミや企業スパイは枚挙にいとまがない。


 小太郎、愛、将門、銀孤の親世代が張り切って対応している。

 明が煩わされることは少ないのが救いだ。



「遊びに来たわ!」


「ミトー!」


 輝夜とルナがやってきた。


 その場の空気には気づかずに、テンションが高い。


 二人はほとんど大和杉のそばか、ミトの近くにいる。


 それぞれ輝夜とルナの好みである。わかりやすい。


 二人とも、もう一方とは比べ物にならないとはいえ大和杉もミトも好きだ。


 必然的にそういう行動パターンを取ることになった。


 ルナはともかく輝夜はそろそろ仕事したほうがいいと思う。


 本人は大和杉のそばにいるのが仕事だと言ってはばからないだろうが。


「なんの話をしてたの?」


「明に個性がないって話。」


「ちょっと白。」


 明は止めに入る。輝夜に知られるのはちょっと嫌だった。


 とはいえ、もう遅い。


 輝夜は驚いたように目を見張っている。


「いや、ほんと、なんでもないのよ、お姉様。」


 明は取り繕った。



 ルナはミトにまとわりついている。


 白は気を利かせて、ミトを預けることにした。


 ルナは大喜びである。ミトも眠気が消えてしまったようではしゃいでいる。





「よくわからないけど、私は明が羨ましいわ。」


 輝夜は流れを把握していない。だから、自分の思っていることをそのまま言った。


「羨ましい。ですか?」


 また、キャラが迷走している。でも、明にとっては輝夜の言うことの方が重要だった。


「だって、明はすごく頭がいいでしょ。あの人からもとっても褒められてたし。」


「でも、私のキャラは語尾も定まってなくて。」


「キャラには語尾が定まってなくちゃいけないなんて決まりでもあるの?」


「いや、多分ないですけど⋯⋯。」


 明は口を濁す。


「なら、認められてる明はすごいよ。」


「僕だってそう思ってるからね。」


 輝夜と白は口々に言う。




 キャラとは承認欲求の発露であると誰かは言った。


 ここにいていいと認められるために、演じやすくわかりやすいキャラを作る。


 ならば、先に承認を得たならば、どうなるだろうか。



 明にはまだ、本当にそれでいいのかわからなかった。


 それでもくよくよ悩む必要はないと、二人のまっすぐな表情をみて、思ったのだった。



 この後、親世代の四人もやってきて明の悩みは笑い飛ばされることになる。三世代が一堂に会する食卓は楽しい限りであった。


 大和杉は一人、東京の夜景を眺めて立っていた。泣いていい。



 ●


「本当に、超能力が芽生えるんですか?」


「もちろんだとも。尊師のお言葉にしたがっておけば間違いはない。」


「わかりました。」


 東京渋谷。ある新興宗教が、急速に勢力を拡大していた。



 教祖麻原○晃の超能力を旗印に様々な人物を信者として獲得していく。


 オウム真○教である。



 敷島の社員も数人、入信し、会社をやめることになった。



「気になりますね。調べてみましょう。」


 愛が技能「諜報」で情報収集を始めた。


 地下鉄サリン事件まで、後、一年。






タイトルを明のキャラ問題からこちらに変えました。だって宗教が胎動してるし⋯⋯

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