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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第四章 近代

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第62話 大怪獣 急

 

 輝夜は逆さ落としに落下する。


 重力も合間って、凄まじい速度だ。


 この一撃のために、今まで我慢していた。


 銀孤なら生きていると信じている。


 今はこの隙を活かすだけだ。



 怪生物は気づかない。


 満足そうに鳴いている。


 だが、背中の発光器官は別だった。


 自衛隊をしてレーダーでも搭載しているんじゃないかと言わしめた対空防御。



 紫に灯った背びれの変異体からレーザーが放たれる。



 それは真上に伸びて、輝夜に直撃した。


 戦闘機も一瞬で溶かす威力。


 だが、それは受け止められた。



 仏のみ石の鉢。金色に光るお椀状の物体が輝夜を守る。


 自律型だったらしい。



 しばらく放たれたレーザー光もエネルギーが切れたのか消滅する。


 パリンと、仏のみ石の鉢は砕け散った。一回限定だったようだ。


 二回撃たれていたら即死だった。


 今は幸運を喜ぼう。



 ようやく気づいた怪生物本体。


 だが、それは攻撃ではない。


 殺意はゼロだ。


 少しだけ、迷いが生まれた。


 その一瞬さえあれば十分だった。


 怪生物の頭頂部に、輝夜は確かに薄い羽衣を置いた。



 怪生物を白い光が包んでいく。


 驚きで、呆然とする怪生物。


 その変化は止まらない。


 どんどん縮んでいく。


 100mの巨体が、人間サイズまで小さくなる。


 天人の羽衣の「最適化」が作用したのだろう。


 空中で解放された。


 中空で人間サイズに縮んだものだから、落ちていく。


 慌てて輝夜が回収した。


 抱きかかえて、地上に持って帰る。



 綺麗な女の子だ。ショートの紫髮という現実にはありえない色なのを除けば、美少女と言っていいだろう。

 そんな子が、裸に薄衣、そして羽衣を纏った状態で気を失っている。


 ⋯⋯雌だったんだ。


 輝夜は、驚いていた。確かに確認はしていなかった。


 でも、危険な怪獣だったことは間違いない。


 天人の羽衣効果がどれだけあるのかわからないのだ。


 ここで殺してしまうのが安全かもしれない。


 輝夜は迷いながらも、決断を下そうとする。


 その子は、薄眼を開けた。


「おかあさん⋯⋯?」


 無垢な表情で、そう、問いかける。


 それは刷り込みと同じで、最初に見た人を親と思い込んだだけなのかもしれない。


 でも、輝夜は打たれたように動きを止めた。


 今ここにいるのは一人の頑是がんぜない子供だ。


 もう彼女にその子を殺すことは無理だった。



 安心したように眠る少女。


 無条件の信頼が、そこにはあった。


 ●


 銀孤は愛が助けたらしい。未だ、純粋な速度で一番速いのは愛のようだ。


 将門がほっとして銀孤を抱きしめている。


 あっちはあっちで放っておこう。


 大事なことだろうし。


 しかし、あいつらは本当に仲がいいなあ。


 俺は羨ましく思った。



 さて、目の前では、輝夜と小太郎が論争を繰り広げている。


 議題は怪獣娘をどうするかだ。


 輝夜は保護派。小太郎は危険だと主張している。


 どちらの言い分もわかる。


 輝夜の言う通り、この子が悪さをするようには見えない。


 天人の羽衣の洗脳とか最適化とか記憶喪失とかがうまい具合に作用したんだろう。



 その結果、無垢なままの少女が出来上がった。



 でも、彼女が東京に甚大な被害をもたらしたことは確かだ。


 万が一、元に戻ったらひどいことになる。


「この罪のない子を殺すって言うの?!」


 確かに自衛していただけだし、歩いていただけなんだよな。そのサイズが規格外すぎただけで。


 少しだけ見てみよう。


 怪獣娘

 技能

「放射能」

「火炎放射」

「レーザービーム」

「自動迎撃レーダー」


 放射線を放つ程度の能力がある気がするんだけど、気のせいかな。気のせいじゃないよね。


 ⋯⋯歩く原子力発電所じゃないか。


 放射能汚染はシャレにならない気がするぞ。


 いや、でも第三次世界大戦に備えるのなら、レーザービームを扱えるこの子は眷属にする価値はある。


 自動迎撃レーダーと言うものもあるしな。


 とはいえ、放射能汚染がひどいマイナス要素だ。


 悩ましい。放射能をどうにかできるのなら、絶対に部下にしたいんだが。


 そんな風に悩んでいたら、扉が開いた。


 神様だ。この頃よく来るな。


 すぐに輝夜が警戒態勢に入る。


 他の四人は面識がなくて不思議そうな顔をしている。


「うまく乗り切れたようだな。」


 自己紹介をする気はないようだった。


 傍若ぼうじゃく無人な人だな。


「まあ、この子を別にすればですけどね。」


 とはいえ、逆らえない。俺は神様に答えた。


「あるじさまが敬語を使ってる?!」


「あの偉そうな口調しかできないご主人様が?!」


「そんなバカな。」


「明日槍でも降るんじゃないやろか。」


 散々な言われようだ。俺だって、時と場合によっては敬語くらい使えるさ。


「まあ、俺は神様だからな。偉いんだぜ。」


 その驚きに満足したのか、神様は胸を張った。



「それで、労いにでもきたって言うの?」


 いまだに輝夜だけ険悪だ。


「輝夜、あるじさまでさえ敬語を使うお方に、その言い方。⋯⋯いいのか?」


 小太郎は恐る恐る尋ねる。


「別に私が敬わなきゃいけない理由ないでしょ。」


「まあいいさ。なんでお前がそう言うことになってるのかはわかってるしな。」


 あれ、神様が鷹揚だ。どうしたんだろう。やっぱり怖いのかな。


「本人もこう言ってるんだし。」


 輝夜は神様を指差す。⋯⋯本当に大丈夫なんだろうか。


 何かされそうになったら、代わりに謝る覚悟を固めとこう。



「だがな、俺はそいつを受け入れるのに必要な話を持ってきたんだぜ。いいのか?」


「そんな。嘘でしょ?!」


「まあ、聞けよ。そして崇め奉れ。」


 神様のお話が始まった。












天人の羽衣は伏線(偶然使えました)

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― 新着の感想 ―
[一言] まあアンコウだからな雄は小さいから消去法で雌になるしかなかったんだ。 ご都合主義な訳ないない
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