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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第四章 近代

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第61話 大怪獣 破


 再び怪生物が現れた。


 今度は昼だった。上陸したのは川崎である。



 完全に二足歩行に変じたその生物は、住居を押しつぶしながら、浅草方面へ侵攻した。


 世界最大の植物。大和杉の方へ向かっているように見えた。


 大怪獣の体高はおよそ100m。


 世界樹とも呼ばれる大和杉はおよそ600m。


 比べ物にはならない。


 だが、それだけで怪獣の危険性が薄れるはずもない。


 東京は、ズタズタに破壊されていった。


 避難誘導がうまくいったことだけが救いだ。


 大企業敷島の協力があったというが、本当のところは謎である。



 無人となった街を壊しながら、大怪獣は進んでいく。


 自衛隊の戦闘機が攻撃に向かうも、レーザー光により、逆に撃墜される始末である。



 米軍は、今度こそ原子爆弾を落とす計画を立て始めた。


 ついでに大和杉も破壊しようと考えた太平洋戦争の生き残りもいたらしい。


 いい迷惑だ。



 ●


「とのことです。」


 愛の報告を聞きながら、俺は残された時間が少ないことを知った。


 流石に大怪獣と原爆を同時に対処できる気はしない。


 今は戦闘機もどんどん速くなっているみたいだし、第二次世界大戦の時のようには行かないだろう。


 やるべきことは一つ。怪獣の排除だ。


 愛の技能「諜報」によると、日本の政治家や官僚たちも必死になってアメリカ軍を止めているらしい。


 よしよし。お前らはやればできると信じているぞ。


 その間に、俺たちが対処しといてやる。


 時間稼ぎは任せた。


 で、どうするかだが。


「行くわ。」


 輝夜が俺を見つめて、頷いた。


 手に薄衣のような布を持っている。


 天人の羽衣だ。


 そう。俺たちの計画とは、これを怪獣に着せることにより、無力化するというものだ。


 持っててよかったチートアイテム。


 天人の羽衣


 効果


「記憶喪失」


「最適化」


「洗脳」


「飛行」


 うん。行けそうな匂いがプンプンしてくるぜ。


 あとはこれをかぶせられるかどうかだ。


 輝夜が志願した。私が一番可能性あるからと言って聞かなかった。


 俺としては不安で、行って欲しくなかったんだけど、そんな決意を込めた目で見られると弱い。


 確かに、輝夜の能力はどれを取っても一級品だ。


 任せられるのは輝夜しかいないだろう。


 他四人はサポートに回る。


 白と明は子育てがあるから呼ばなかった。


 俺はホワイト企業だから。⋯⋯給料をあげてないから、超絶ブラックという話もあるけど。


 俺以外の全員自分の力で金稼げるよな。うん。


 もう少し感謝の気持ちを前面に出していこう。


 そう決意した。


 こちらへ着々と向かってくる巨大生物を見つめながら、俺はみんなを応援する。


 ただの杉にはもう荷が重いんだ。最後の神秘の残滓で持っているようなものだ。


 それでも絶対に2012年にたどり着く。


 634mも越えてやる。それが、俺の目標だ。


 だからまずは、あいつをどうにかしてやろう。


 ●


 輝夜たち五人は宙を飛んで出撃した。謎の怪生物に逃げ惑う市民はそれに気づかない。


 今年造成されたばかりの両国国技館に陣取る。狙い通りに、怪生物の進路は変更された。


 輝夜たちを狙っているというのは間違いないようだ。


 建物が壊される音、それにうなり声が不気味に響く。


 五人は頷きあった。




 輝夜だけ、上空へ向かう。


 仏のみ石の鉢を装備して、万が一の事態にも備えは万全だった。


 小太郎たち四人は国技館の上から陽動だ。


 前線を小太郎と将門が務め、後衛として銀孤が呪術を行う。


 愛は、監視の目を潰す作業を行なっていた。流石に昼日中に、人外の力を使ってしまうのはまずい。


 さらにそれが全国で流れたら終わる。


 生まれてこのかた1000年以上情報を扱ってきた愛にはその恐ろしさが十分にわかっていた。


 向けられるカメラを察知し、近づいて映らないようにする。


 どう考えても技能「諜報」だけでは説明がつかない力を発揮しているが、気にしたら負けだ。


 情報女王の称号がふさわしい気がする。


 愛の活躍により、米軍も日本国民も、この戦いを見ることはできなくなった。


 これからの生活を守るため。ヒーローというのは正体を知られてはならないのだ。


 仮面をつければいいのに。



 怪生物と小太郎たち3人の戦況は一進一退だった。


「「技能「軍勢召喚」!」」


 小太郎と将門が人数を増やす。


 小太郎は技能「雲乗り」により空から、将門は地上から攻める。だが、第一形態の時と違って、大したダメージを受けているようには見えない。


 羽虫を払うように、尻尾を振り回される。


 それだけで、面白いように召喚した軍勢が吹き飛んでいく。


 もちろんただ押されているだけではない。


 小太郎が技能派生「単体麻痺付与」で動きを止め、そこに銀孤が大規模呪術をぶち込む。


 大掛かりなぶん、こちらは効果があった。


 だが、ぎろりと眼が動き、怪生物の視線が銀孤にロックオンされる。


 脅威となり得るのはこちらだけだと思ったのだろう。



 口を開き、そこから大量の炎を吹き出した。


 火炎放射である。


 純粋なエネルギーが、銀孤へ向かって放たれる。


 将門と小太郎が肉壁でなんとか抑えようとするが、止まらない。


 銀孤の呪術「氷雪」が迎撃のために放たれた。


 だが、すぐに氷を溶かして迫ってくる。



 銀孤の真正面にまで炎は迫った。



 着弾。煙がもうもうと立ち込める。


 怪生物は自らの起こした結末を、満足そうに眺めていた。



 それを狙って、輝夜が上から降下する。完璧なタイミングだった。








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