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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第四章 近代

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第60話 大怪獣 序

 

 そして、その時は俺が思っていたよりも早く始まった。


 東京湾に巨大な背びれを持つ生物が泳いでいる。


 そんな噂が流れてきた。



 やきもきしていると、下の方に街頭テレビが運ばれてきた。愛の計らいだろう。


 人々は集まって、口々に勝手なことを言っている。


 その上から俺がのぞいているのには気づかないようだ。


 とはいえ見えないからどいてほしい。



 彼らの反応は、大きな珍しい生物がいるということに興味を引かれたものがほとんどだった。


 物見遊山ものみゆさん気分だ。


 本当に原爆のせいで進化した怪獣ならそんな余裕はないんだが。



 普通の人々も本気にはなれないんだろう。


 俺もフィクションの中の存在だとばかり思っていたからな。


 無理もない。


 とはいえ、神様がわざわざ警告しにきたんだ。楽観視はできない。


 あの怪獣といえば放射能ビームを出すのが定番だしな。


 俺に当たったらシャレにならんぞ。


 とりあえず、将門と銀孤に見張りを頼んだ。


 割と暇してそうだったからいいだろう。



 ●



 謎の生物は、東京湾を我が物顔で回遊していた。


 タンカーに当たることは幸いなかったが、交通の邪魔である。


 政府は協議の上、捕獲、駆除に当たることを決定した。


 巨大な網を用意する。


 だが、それが用いられる前に、事態は動いた。






「ねえ、旦那はん。」


「なんだ、銀孤。」


「気のせいかねえ。あのひれ、大きくなっている気がするんやけど。」


「気のせいだろう。」


「あんたは気楽でええわあ。」


「深く考えても仕方ない。俺たちの役目は見張りだからな。」



 夜の東京湾。将門と銀孤の夫婦は、コンテナの積み上がった港で海を眺めていた。


 もちろん見張りだ。デートではない。



「ところで旦那はん。」


「今度はなんだ?」


「あのひれ、こっちに近づいてるんやない?」


「そんなまさか。」



 将門は目をこする。


 静かな港が波立っていた。


 静かに、だが、粛々と、そのひれは二人の方へ近づいてくる。



「離れるぞ、銀孤!」


 将門は銀孤を抱きかかえた。お姫様抱っこである。


 彼にはそう言うところがあった。


 自然と主人公のような振る舞いをしてしまうのだ。


 銀孤は自分で走った方が早いとわかっていた。

 でも、その幸せな感覚に身を浸す。


 TPOをわきまえてほしい。




 どしん。ずしん。


 巨体が上陸する。


 どこか爬虫類めいた魚類。


 そんな不気味な姿だ。眼のピントがあっていない。



 体長は20mはあるだろう。


 エラの位置から大量の海水が放出される。


 コンテナが押し流された。



 夜の襲来だ。


 巨大不明生物のいる東京湾はすでに日常である。監視の目は少ない。


 N○Kだけがかろうじてテロップを流したが、ほとんどの住民は気づかなかった。


 港の物資を破壊して、その生物は進む。


 側から見るとゆっくりだが、スケールが違う。


 追いつかれる。


 将門と銀孤のすぐ後ろにその生物は迫ってきた。



「旦那はん。このままじゃ追いつかれるわあ。」


「くっ、仕方ない。ここで追い返す。」


「それがええやろ!」


 二人は背中合わせに立つ。


 監視の目の何もかも忘れて、昔のように暴れることができる。


 二人の表情は生き生きしていた。



「呪術「落雷」!」


「技能「軍勢召喚」!」


 将門の背後に、大量の軍勢が現れる。


 銀孤の指し示すままに、天から雷が降ってくる。


 こうかはばつぐんだ。


「かかれー!!!」


 そこに将門の指揮を受けた軍勢が突撃する。


 剣と槍という原始的な攻撃。だが、それはファンタジー世界においては主流で主役だ。


 ダメージを与えられないはずがない。


 その巨体を迎え撃つにふさわしい人数と練度を誇る、将門の軍勢。

 跳ね飛ばされても痛みを知らないかのように前線に戻ってくる。


 その処理に手間取ると、銀孤の呪術が飛んでくる。


 呪術「炎熱」


 呪術「氷雪」


 呪術「落雷」


 炎が頭を包み、氷が固め、だめ押しとばかりに雷が降り注ぐ。


 あえて言おう。魔法であると。


 大怪獣にだって魔法ならば立ち向かえるんだよ。おそらく。多分。


 なお、この様子は報道各社のヘリからバッチリ目撃されている。


 ごまかす事になる愛と小太郎の気苦労が増えることは確定した未来だ。


 銀孤も将門も考えなしだから。


 まあ、生命の危機が迫っていたので情状酌量の余地がある。



 夜の東京湾岸という暴力団コンクリ詰めの聖地。



 そこで、巻き起こるは怪獣と人の大決戦である。


 心が踊る。


 巨大不明生物は一方的にやられた。まだ進化が足りていなかったようだ。


 放射線ビームが出せていない。熱線でも強いんだけど。


 怪獣はジリジリと後退し、東京湾に落ちた。


 赤い血を流して、海底へ泳いでいく。


 初戦は将門と銀孤の完全勝利だった。



 殺到する報道陣を躱して、二人は、大和杉の元まで帰った。



 ●




 派手にやったな。



 俺は戻ってきた将門と銀孤をみんなが出迎えるのを眺めていた。


 ここからでも、雷が不自然にたくさん落ちるわ、炎が怪獣を明るく照らすわで目立ちすぎだった。


 不気味な生物の姿よりも、派手な攻撃の方に目がいったくらいだし。

 とりあえず、何もなくてよかった。


 あれって、もう少し手強かった気がするんだけど。



 次に上陸したら要注意だろう。


 今度はもう少し慎重にいこう。


 今回はたまたま、二人のいる場所に向かってきたからこうなったわけだしな。



 ⋯⋯もしかして、原爆を撃墜させたのがこいつらだから狙うという話なのか。


 そんなバカな。


 となると、取れる戦略も変わってくる。


 みんなと相談しつつ、対策を練った。














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