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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第四章 近代

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第57話 ラブコメ

 

 輝夜が俺のそばから離れなくなった。いろいろ危険だと言い聞かせても離れようとしない。


 強制できないし、仕方ないかもしれない。


 神様も時々くるって言ってたけど、輝夜が怖いのか来てないし。


 小太郎たちがやってくる。


 こっそり、連れてってくれないかと頼んでみたけど、無理ですと笑顔で断られた。

 まあ、それはそうだ。俺でも無理だもん。



 情勢は少し混乱していた。

 興奮した人々の群れが、皇居の周りを歩いている。石投げてるし、警官隊と衝突してる。


 米騒動の時も思ったけど、一般の人たち凶暴すぎるでしょ。


 いや、流石に、この人たちが一般の人とは言えないと思うけど。


 血のメーデー事件などと名付けられたらしい。

 ほんと物騒だ。


 まあ、俺には関係ない。


 火事とかがなければ大丈夫だ。


 いやほんと、これから死にそうな出来事はないはず。


 伸びることだけ考えておけばいい状況のなんとありがたいことか。


 流石に大きくなりすぎて、成長率は鈍化している。


 色々エネルギー使ったしな。仕方ないだろう。


 ギリギリ634mまで行けるかどうかといった具合だ。


 予断は許されない。


 ●


 明の立ち位置は会社の影の実力者だ。

 表は小太郎が社長として矢面に立っているが、実質的に舵取りを決めているのは明である。


 戦争特需を取り込んで、この会社は急速に発展した。


 いつの間にやら、財閥の一角に食い込む勢いだった。

 財閥解体がなされていたのもあって、押しも押されぬ大企業としての立場を手に入れた。


 元手は輝夜に頼めば無限に出てきた。

 流石に経済を混乱させるのもよくないと言うことで、自社で稼いだお金を使うようにはしていた。


 薬品。教育。不動産。工業。

 複合企業としてのこの会社は敷島と言う名で知られている。


 その創業者一族として、彼らは敷島姓を名乗った。


 大和杉が時々懐かしんでいた


 敷島の 大和に名だたる ひすぎに 幻見るとは 思わざりけり



 と言う和歌から名付けたと言うことを知るものは少ない。


 他社や反社会勢力からの武力圧力は絶えず試みられていたが、経験値が違う。

 戦国、江戸。さらに原爆戦を経験してきた彼らは生半可な脅しでは止まらなかった。


 ただの拳銃を持ったチンピラは小太郎に止められ、無力化される。


 か弱い女を狙おうとしても、逆に反撃されて制圧される。

 明も愛も銀孤も人間が抑えるには強すぎた。



 従業員を人質に取っても、逆に察知され首謀者の方が捕まってしまう。


 愛の技能「諜報」はここでも役に立った。


 躍起になっていた競争相手も、無視できないほど大きくなると揉みをして擦り寄ってくる。


 将門が殴りたそうにしていた。


 わかる。


 とは言え、大人なので笑顔で対応する。


 大人力ランキングをつけると、小太郎、明、愛、白、銀孤、将門の順になりそうだ。

 やっぱり責任ある立場になると大人力を発揮することになるのだろう。


 将門はまあ、そう言う人なんだと諦めよう。


 親二人よりも白の方が大人なのはやっぱり明の影響が大きいのだろう。


 そんな二人の恋路だが、明が大忙しになったため、進展していなかった。


 気づいていない将門以外の大人たちは応援している。


 とは言え白も奥手だ。忙しそうにしているのを見ると尻込みしてしまう。


 みんなじれったそうだった。


 どちらも好きと言う感情に違いはないのだから、きっかけさえあればすぐだろう。でも、そのきっかけがない。


 小太郎と愛は自分たちの結婚前を思い出していた。

 あの時は愛が弱っていて、それを慰めていたら距離が近づいた。


 明も弱る時が来るのだろうか。


 今の所その気配はなさそうだ。


 とは言え、自分たちの娘である。同じことが起こっても不思議じゃない。



 弱っていたら支えてあげるようにと言うアドバイスを送る二人だった。


 白はなんで当然のことを言うんだろうと訝しげだ。


 首を傾げて見つめ返してきた。

 心配はいらなかったようだ。


 白はまっすぐに育った。生育環境の特異さなど問題にならなかった。


 彼はとても良い子だ。


 知り合いは皆口を揃えて言うだろう。


 ただ、自分から行動を起こすことだけは、どうしても苦手だった。


 最初に我慢しきれなくなったのは銀孤だった。


 小太郎と愛の二人と共謀して、明に休暇を取らせた。


 そして、そこに白を送り込む。軽井沢の別荘だ。


 これで何もなかったらおかしい。


 銀孤はそう思っていた。


 小太郎と愛もだ。


 久しぶりに休めるとウキウキした様子の明。


 対照的に白の様子は挙動不審気味だった。


 流石にここまでお膳立てされたらわかる。


 白は、覚悟を決めることにした。



 軽井沢は風光明媚な高原である。


 初秋なので、そこまで人は多くない。


 浅間山のお膝元だ。


 江戸時代に大きな噴火をしていたことを思い出す明。


 白はいっぱいいっぱいで、そんなことを考える余裕もない。


 それでも高原を吹き抜ける風は気持ちよくて、開放的な雰囲気に浸ることができた。


 ようやく慣れた車を白は運転する。


 ぼうっと、明は外を見ている。


 その様子は可憐で、思わず見とれてしまいそうになる。


 意志を振り絞って、運転に集中した。



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