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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第四章 近代

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第50話 太平洋戦争

 

 関東大震災が終わって気が抜けている間に、5.15事件と2.26事件が終わったらしい。

 ダメだダメだ。これからの時代はぼうっとしていたらすぐに事件が起こる。あと50年ちょいなんだ。気を張って行かないと。


 さらば国連 松岡外相堂々退場ス!


 の文字が新聞の上で踊っていた。


 国連を脱退してしまったか。もうそろそろだな。


 第二次世界大戦が勃発した。

 各国からの経済制裁が日本をじわじわと締め付けている。


 真珠湾攻撃とともに、アメリカへと宣戦布告がなされた。


 やってしまったか。



 新聞は景気のいいことを書いているけど、どうなっていくかはわかっている。死へのカウントダウンが進んでいっている気がする。


 少数のB-25がやってきた。軍は混乱しているようだったが、俺たちの準備は万端だった。


 決めていた通り、白を軸として迎え撃つ。


 まだ、制空権を取りきっていないからだろう。相手の動きは精彩を欠いていた。


 面白いように撃墜できる。まあ、戦況が不利になってからが本当の勝負だ。



 ミッドウエーの海戦の情報が入ってきた。

 大勝利と言ってるけど真実ではないだろう。赤城も加賀も飛龍も蒼龍も沈んだ。

 隠されているけど、俺は知っている。


 連戦連勝の勢いが陰ってきたことに鼻が利く人は気付き始めた。


 そろそろ、マリアナ諸島に爆撃機が集められている頃だろう。

 東京大空襲は間も無くだ。


 建物一つ残らないと言われたあの空襲。もう、自重してられる場合じゃない。


 俺の持っている力を全て使ってやろうじゃないか。負けてたまるかよ。


 まず、方針は素早く終戦に向かうこと。

 そのためには適度に負けなくてはならない。


 あまり撃ち落としたらアメリカも警戒するだろう。

 流石の俺たちもあの大国と一戦交えられるほどの戦力はない。あくまで影に徹することが必要だ。


 方針。俺のそばにきた焼夷弾を白が蓬莱の玉の枝の弾幕で撃ち落とす。


 呪術持ちは氷で火災予防。白が死ぬほど忙しいと思うけど、頑張ってほしい。


 愛は無線傍受。

 技能「諜報」でいけるかどうかは五分五分だけど、攻撃してくるタイミングがわかれば圧倒的にやりやすくなる。


 あわよくば新型爆弾の情報とかも手に入るといいな。これまで散々お世話になってきた諜報さんの力なら何とかなる気がする。愛、頼むぞ。


 小太郎、将門、明、輝夜は上で迎撃できるか探ってくれ。


 輝夜は回復役だ。技能「全体自動回復」の力は正直よくわからないけど、多分、即死しなければ回復するんだろう。

 誰一人失いたくはないからな。

 慎重に、気づかれないようにということをよく言い含めておいた。


 こちらは将門に渡しておいた。

 将門一人だけやれることがほとんどないからな。お前ならいけるはずだ。

 俺を一度は燃やし尽くした原因を作った男なんだから。信じてるぞ。


 本格的な空襲が始まった。空襲警報がうるさいほどにがなりたてる。


 当たっていることもあれば、間違っていることもあった。


 空襲警報がならないのに空襲機がやってくることもある。

 何も役に立ってない。ただうるさいだけじゃないかあれ。



 最初は軍需施設を狙っているようだったが、徐々に市街地にシフトしてきた。


 高高度から焼夷弾が投下される。


 それは俺と同じくらいの高さで花火のように破裂し、無数の炎小片となって落下していった。


 尾を引く炎は雨のようで、美しく恐ろしかった。


 地面に落ちた焼夷弾から、新たに爆発が起こって、炎が大きく立ち上がり、傘のように周囲一帯を焼いた。

 燃焼させることに特化した爆弾ってわけだ。全く、人間は笑えない。



 白には俺の上に乗ってもらって、上空へ弾幕を放ってもらった。


 ここならば、まだ小片になる前だ。よく狙える。


 当たった焼夷弾は空中で爆発した。燃えカスが落ちてくる。


 銀孤の氷雪で凍りつかせて、安全に処理できる。


 うん。ここら辺に落ちてくる弾ならば、確実に処理できるな。



 何だか下が騒がしい。俺は意識を下に持っていった。


 何だか、軍服を着た男たちと、住民らしき人々が口論している。


「大和杉様を切り倒すなんてとんでもない!」


「今は戦時下だ。国家のために、燃料は必要なのだ。」


「この杉は我々日本人の心の故郷です。これを切って勝ったとしてもその勝利に価値はありません。」


「言わせておけば。赤だといってしょっぴいてもいいんだぞ。」


「やりたいならやればいいでしょ。でも、この杉は我々の守り神です。関東大震災の時も、空襲も、この杉の近くでは不思議と被害が小さいのを知らないんですか!」


 まじかよ。戦時供出の標的にされたようだ。俺がどれだけ日本の国防に貢献してるかも知らないで、勝手なことを。

 でも、地元の住民らしき人たちはありがとう。ここら一帯は俺が守るから安心してておくれ。


 時間が経つとともに、俺に味方する住民たちの数は増えていった。軍の人々は旗色が悪くなったのを理解して捨て台詞を吐いて逃げていった。


「いつか切り倒してやるからなー!」

「覚えてろよー!」


 うん。小物っぽい。


「ご主人様を切り倒すですって。」


 あっ。愛が怒っている。いつの間にか住人の中に紛れていたみたいだ。もしかしたら扇動してくれたのかもしれない。ありがたい。


「ちょっとやってきますね。」


 あっ、ちょっまって。


 愛が消えた。あんなに怒った愛は初めて見た。

 俺のためだと思うと嬉しいな。

 ⋯⋯暗殺する気じゃないだろうか。それだけが心配だ。



 戻ってきた愛に何やってたか聞いた。


 笑顔ではぐらかされた。怖い笑顔だった。


 うん。触れないことにしておこう。


 これ以降、俺の存在は軍部で触れてはいけないものとして恐れられるようになったらしい。


 いや、ほんとなにやったの愛。本当のアンタッチャブルは多分君。



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