第48話 戦争に備える
「やってみるわ。」
輝夜はやる気に満ちた表情で頷いた。結構辛いと思うから、無理はしなくてもいいんだけど。
「大丈夫よ。あなたのためだもの。」
くう。輝夜が健気だ。
「技能「秘道具生成」! 」
彼女の腕の中に光が集まる。
やはり長い。太陽が傾いていく。
輝夜はやっぱり苦しげで、止めようかと思った。
そんな俺を目線で抑えて彼女は気力を振り絞った。
六時間後、輝夜が開いた手の中にあったのは、五色に光る25センチくらいの完全な球形だった。
龍の首の珠
効果
「風龍」
「武神」
「五色の弾丸」
風龍⋯⋯「風の龍を纏う。空中を自在に動き、ブレスを放つことも可能。相手の攻撃をそらす効果もある。制限時間あり。インターバルののちに再使用可能。」
武神⋯⋯「武を極めたものと同様の効果が得られる。一騎当千の証。効果時間とインターバルがある。具体的効果は攻撃力上昇と見切り。」
五色の弾丸⋯⋯「5発の弾丸。赤は炎。青は水。黄は雷。白は光。黒は闇。1発ずつしか打てないが、威力は非常に高い。」
はいチート。これはどう考えても強アーティファクト。蓬莱の玉の枝に匹敵するかもしれない。欲を言うなら武神はもう少し前の時代に欲しかった。
流石に戦闘機に武神で勝てるとは思えない。
そして、だいぶ前から薄々気づいてたけど、輝夜の技能「秘道具生成」ってランダムじゃないよね。
どう考えても竹取物語に出てきたやつだ。
となると次は仏のみ石の鉢か燕の子安貝か。
どんな効果なのだろうか。
割としょぼそうな匂いはするけど。
とりあえず、これはサブウェポンとしよう。持たせるのは雲乗りが使えるやつがいいよな。風龍の効果が途中で切れるとしたら、空を飛べないとまずいだろう。
輝夜か小太郎か明のうちの誰か。いや、これを白に持たせて蓬莱の玉の枝をその3人に持たせると言う手もあるか。白が俺のところから迎撃しなきゃいけないなんてルールもないしな。
悩ましい。でも、これは嬉しい悩みだ。こんなに不思議戦力が充実してるのだったら、第二次世界大戦も生き残れる気がする。
原爆はやめてね。流石に生き残れない。
⋯⋯フラグじゃないよな。地味にありそうで怖い。
原爆が来てもなんとかなる仕組みを整えておかないと。どんな仕組みだよ。
あれ、伊達に悪魔の兵器とか呼ばれてないぞ。少なくとも核分裂が始まったらアウトだろう。
出来るだけ離れた場所で撃沈する必要がある。
とはいえ、大量に飛んでくるであろうB29の中から原爆投下機を見つけるのは骨だ。こちらも全機撃墜というわけにはいかないだろうし。
なんとか、愛に潜入させられないだろうか。
あらかじめアメリカに渡らせておいて、原爆の情報を集めさせるのだ。
いや、ダメだ。通信手段がない。無線は開発されるだろうが、簡単に傍受されるだろう。そうなったら愛が危ない。
くそう。何もできないってのか。何か対抗策はないのか。
俺はひたすら頭を悩ませ続けた。
●
おじいさまが悩んでいる。どうにかしてあげたい。
でも、お前たちに相談してもなと言われてしまった。
お父様が無理を言って聞き出してくれたけど、確かに難題だ。
将来、日本がアメリカと戦争するらしい。
飛行機という、空飛ぶ機械がやってきて爆弾を投げてくる。
飛行機の飛ぶ高度は一万メートル付近。
私やお父様の雲乗りでも厳しい高さだ。
試しにやってみたけど、5000mくらいから寒くてたまらなくなる。
どうにも空気も薄くなっているみたい。
これじゃすごいスピードで飛ぶという飛行機に対抗できない。
私にできることをもう一度並べてみよう。
技能「諜報」「忍術」「房中術」「軍勢召喚」「雲乗り」「全体麻痺付与」
この場合、諜報は役に立たないと思う。
使えそうなのは「忍術」「雲乗り」「全体麻痺付与」あたりかな。
全体麻痺付与の効果範囲を広げることができたら良さそう。
とりあえず、実践あるのみだよね。
私は、お父様と一緒に訓練に励んだ。
将門おじさまと銀孤おばさまは空を飛べないからやることがなくなったとぼやいていた。
おじいさまから火事の消火を期待していると言われて、嬉しそうにしてたから問題ないはず。将門おじさまは龍の首の珠も時々使っているみたい。武神の効果を発動させて楽しそうにしていた。
お母様は、いつものように忙しそうだった。
私も技能「諜報」は持っているけど、お母様のように使いこなせるとは思えない。尊敬してる。
白も頑張ってた。蓬莱の玉の枝の弾幕を張る訓練だ。
人気のないところに行って上空に打ち出す必要はあったけど、威力は高そうだった。
これなら、飛行機も撃ち落とせるんじゃないだろうか。
すごいねって撫でてあげた。クールを装っていたけど、尻尾が揺れていた。かわいいこだ。
輝夜お姉様は一番頑張っている。
いろんな技能を習得して、それを伸ばして、こっそり秘道具作成して、いっつもおじいさまのそばにいる。
素直にすごい。私もおじいさまのことは大好きだけど、輝夜お姉様以上かと言われたら、否定しちゃうと思う。
時代はどんどん移り変わっていたけれど、私たちは一つの目標に向かって心を一つにしていた。
明治が過ぎ去ってしまう⋯⋯(テンポよく戦争に向かいたい




