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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第三章 近世

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第43話 天明の飢饉

メリークリスマスです。

 浅間山が不気味だ。

 ずっと噴煙を上げていたからやばいなとは思っていた。


 思った通りで本格的な爆発が起こった。


 赤く光る火砕流が山頂から落ちる様子はこの世のものとは思えない。


 江戸は平和な時代ということじゃなかったのだろうか。


 戦国時代よりも色々起こってる気がするぞ。


 とりあえず機能ウィンドウを呼び出した。


 何を強化しますか

 →耐火性

 樹高

 幹周り

 強度

 しなやかさ

 葉の数

 葉の鋭さ

 葉の射出

 根

 森人生成

 樹液生成

 細胞操作


 *光合成効率を変える際はここを押すこと。今の属性は陽です。



 どこを強化しますか

 →1〜100m

 101〜200m

 201〜300m

 301〜400m

 400〜500m

 500m〜600m

 600m〜


 樹高613m


 光合成効率を陽から陰に変える。火山灰が空を覆っているからな。

 富士山噴火の時と同じ要領だ。


 ひどい年になりそうだ。


 そんな俺の悪い予感は当たってしまった。


 東北で飢饉が発生したらしい。

 火山灰で太陽が遮られ冷夏となり、作物があまり取れなかったみたいだ。

 聞こえてくる噂は悲惨なものばかりだった。


 曰く、死んだ人の肉を食べている。

 曰く、道路に死人が山のように積み上がっている。


 どうにかしたいが、自然由来の力に勝てる気がしない。

 火山の噴火は止められない。


 俺が食料系でできることって樹液生成だけだしな。これじゃあ腹は膨れない。


 くっ。やはりテンプレに則って食料事情改革をするべきだったのか。


 調理できないから諦めていた。


 うん。今からでもやってみよう。そうしよう。


 飢饉に対抗するなら、やっぱり簡単に育つ作物がいいだろう。


 よく育つ作物といえばやっぱりサツマイモだ。


 この頃ようやく普及してきた。


 徳川吉宗の時代に青木昆陽あおきこんようとかいう学者が広めていた。


 サツマイモなら炭水化物だし、エネルギーもたっぷり取れる。


 美味しい料理でも考えよう。そう、俺は転生者なのだから!


 ⋯⋯だめだ。サツマイモの料理なんて思いつかないぞ。


 思えばコンビニ弁当を食べてばかりだった。

 そんな俺が料理なんていう高尚なものを覚えていられるわけがない。


 くそう。テンプレしたかった。


 発想を変えよう。俺が一番食べたサツマイモ料理はなんだ。


 田楽。揚げ物。でも、何より一番食べたのは。


「いしやぁーきいもー。おいも。甘くて美味しいホッカホカのお芋だよ。」


 そんなフレーズが浮かび上がってきた。


 冬のあれは、とんでもなく美味しかったなあ。


 落ち葉に入れて焼いていても、石に入れて焼いてても。

 焼き芋は食べやすくて甘くてあったかかった。


 ⋯⋯そういえば、なぜか、焼き芋してないな。

 江戸の町を見渡しても、落ち葉を集めて焚き火をしている姿は見えない。


 これはいけるのでは?

 料理改革テンプレを発動しても大丈夫かもしれない。


 盛り上がってきた。


 俺は一人でテンションを上げていた。


 やってきた小太郎に相談してみる。


「なるほど。焼き芋ですか。その発想はありませんでした。」


 感心してくれた。


「石に挟んで焼く石焼き芋というものもあるぞ。味が良くなる。」


「なるほど。では、我らがそれを広めればいいので?」


「ああ。とはいえ、小太郎にも仕事があるだろう。明と白にやらせてみるといいんじゃないか?」


「経験も積めますもんね。さすがはあるじさま。よく考えていらっしゃる。」


「あんまり褒めるな。照れるだろう。」


 俺たちは二人して笑った。


「では、早速。教えてきます。あるじさまは楽しみに待っていてください。」


「任せたぞ。」


 小太郎は帰っていった。


 楽しみだ。俺が食べられないというのは複雑だけど。


 ●


 小太郎によって、石焼機が用意された。


 白と明は吉原の前で焼き芋を売ることになった。


 吉原に来る客は夜に来ることが多い。

 冷えた体を温めるため、焼き芋は飛ぶように売れた。


 目をつけたならず者が絡んできた。


 明が技能派生「単体麻痺付与」を発動する。


 男は体を動かせない。

 焦っているうちに、吉原の中から怒り狂った将門が現れた。


 とりあえず一発拳を放って、地面に倒した。


「白、明!怪我はなかったか?」


 制裁を終えて、すぐに将門は向き直る。


「大丈夫ですよ。」


「お父さん。かっこよかったよ!」


「そうかそうか。また危なくなったら来るからな!」


 将門はならず者を引っ立てていった。


 この出来事により、絡もうとするものは減った。


 吉原自警団団長。鬼の将門の名は世間に轟いていたのだ。


 その関係者を襲うのはバカのすることだった。



 別の屋台関係者はよくやってきた。


 芋を買っては、どのようにしたらこんな焼き芋が作れるのかと議論している。


 出来るだけ広めるようにしたほうがいいという大和杉の言葉により、それに関しては何も言わなかった。


 コツを直接聞きにきたものもいた。


「100回買いにきてくれたら教えてあげますよ。」


 明は割と容赦がなかった。


 とはいえ、通い詰めることは日課となっていた人が多い。


 冬が終わって春になる頃には江戸中に石焼き芋の屋台ができていた。


 うまい。早い。安い。


 この三拍子が揃った焼き芋は人気となり、第一次焼き芋ブームが江戸の町に到来していた。

 ちなみに、このブームの火付け役となった小さな屋台は、いつの間にか閉店していたという。



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