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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第三章 近世

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第38話 明暦の大火 休

 

 江戸を覆っていた火の勢いが弱まってきた。将門が元凶らしき女の霊を倒したからだろう。



 将門たちの前に大きな炎でできた女が現れたのには驚いた。


 将門が見たこともない技で倒していた。

 将門すごい。初めて部下にしてよかったと思ったぞ。


 銀孤に背負われて将門が帰ってきたときには歓声が上がったほどだ。特に白がすごく興奮していた。


「父上すごい! 父上すごい!」


 連呼して飛び跳ねている。


 落ちると危ないぞー。気をつけろよ。


 将門は親指を立てて、気を失った。

 安心したのだろう。

 やはり、あの技は体力を使うらしい。


 そういえば、この頃無くなってた呪われてる感覚が戻っている。

 将門があの怨霊を吸収したからだろうか。

 今は許すけど、これから出禁にしないと。


 よくやったとは褒めてやる。


 でも、それはそれ、これはこれというやつだ。





 あの火事が起こった次の日。

 江戸の北側はほとんど焼け野原になっていた。


 相変わらず乾燥していて、火種はまだくすぶっているようだった。


 巳の刻(十時ごろ)。

 また火事が起こった。半鐘が打ち鳴らされる。


 江戸城の少し北側で起こった火災は、北からの風に煽られて南へ向かった。


 江戸城天守が燃えている。


 現代では見当たらないとは思っていたが、そういうことだったのか。


 幸い、俺の近くは昨日の火事でもう燃えている。


 火がこちらにくることはなかった。


 燃える江戸を眺めながら、これが世界三大火災の一つ、明暦の大火であることを確信した。


 江戸の街はもう終わりだ。残っているのは南側くらい。


 まだ、残ってはいる。そう考えていたのが悪かったのだろうか。


 申の刻(十六時ごろ)。江戸城の西側の街から再び火災が起こった。まだ燻る火種と呼応し、赤々と燃える。


 風は南東へ向けて吹いていた。俺の方にはこないようだ。安心した。


 部下たちは、昨日の疲れからか寝ている。


 居心地良さそうだ。少し嬉しい。


 将門は俺の体がピリピリしてくるからおろしたいんだけど。


 まあ、我慢しよう。


 夜になった。まだ火事は収まっていないようだ。江戸中が燃えている。



 俺はその姿をただ、黙って眺めていた。



 ●


 火事のあと、江戸の復興は急ピッチで進んでいた。


 燃えカスしか残っていない焼け野原。それでも首都であることは変わりない。


 地方からどんどん材木が運ばれてきた。


 火事を意識したのだろう。

 空き地や、広い通りを作っている。


 密集した家は燃え広がりやすいからな。


 市街は拡張した。

 隅田川のこちら側には建物はまばらだったはずだが、たくさん建てられている。

 ここも江戸の町とすることにしたらしい。


 のちの東京を思えば当然だろう。


 これも時代の流れだ。


 俺は仕方なく黙認した。


 一応瓦屋根になっているところを評価したのだ。


 瓦屋根なら燃えにくいからな。大火の教訓をきちんと活かしているらしい。


 もう2度と火事なんて起こしてくれるなよ。


 大江戸の街を上から見下ろしながら、俺は祈った。



 輝夜達は、隅田川の向こうの浅草寺の北あたりに新しく家を建てた。


 もともと一緒に暮らしていた人たちが集まるということだった。


 ご近所づきあいというやつだ。


 新吉原と呼ばれているらしい。


 いわゆる色街だ。復興も早くてあっという間にきらびやかな建物が立ち並び始めた。


 小太郎にこっそり聞いたところによると、売られてきた娘を仕込んで一人前に稼げるようにしているとのことだった。


 立派に遊郭を運営してないかそれ。


 人を幸せにするのは気持ちがいいですねと笑っていたから、悪いことはしていないんだろうが。


 実際俺が上から見た限りでは小太郎の店にいる子達はみんな幸せそうだった。

 明と白が可愛がられている。俺も可愛がりたいよ。


 ところで隣の店の女の子の顔色が悪いんだが、あの店あくどいことしてないんだろうか。


 将門が率いているらしき自警団が踏み入って行った。

 娘達が保護され、経営者は簀巻すまきになっている。


 店はどうするんだろう。


 様子を見る。


 どうやら、娘も店も小太郎達が面倒をみることになったらしい。


 評判がいいからだろう。真っ当な経営万歳。


 店を潰しにきたらしきチンピラが愛に絡んでいたが、一瞬で制圧されていた。


 愛は戦国をくぐり抜けた女だぞ。

 平和な時代を生きるチンピラに勝てるわけがない。


 評判がいいだけではなく、身を守る武力も兼ね備えている。

 さらに自警団棟梁の将門のいる店とくれば、吉原一の店となるのも当然のことだった。


 あれよあれよと言う間に、裏社会に一目置かれるようになり、表社会でも有名になった。


  名前と顔が有名になったら歳をとらないことに気づかれてしまうかもしれない。


 そういえば、風魔として活動していた時、何か年齢対策していたのだろうか。


 聞いてみた。


 していなかったらしい。


 まじか。


 人間慣れればそう言うものとして気にしなくなるみたいですとのことだった。


 真理かもしれない。慣れは怖い。


 少しだけ気を使うように言っておいた。後継者を育てて引き継がせると良さそう。


 なに?

 明を後継者にしたくないです?


 俺もそうだよ。そんな危ないことさせるわけにはいかない。


 誰か適当な信頼できる男を見つけてきて教育してくれ。



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