表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/122

第4話 杉は葉を飛ばしますか?

 

 あんなに頑張ったのにな。


 前の木生じんせいを思い出して、俺はため息をつきたくなった。

 結局、何も考えていない人間が何も考えずに燃やしてしまった。

 それまで俺がどれだけ苦労していたかも知らないで。


 今思い返しても腹がたつ。積極的に平将門を潰すか。

 葉っぱを飛ばせば暗殺できないかな。


  割とアリだなと考えて、頭の中にメモしておく。


 ピコン。音がした。

 成長選択肢が加わったようだ。



 何を強化しますか

 → 耐火性

   樹高

   幹周り

   強度

  しなやかさ

  葉の数

  根

  葉の鋭さ”New”

   葉の射出”New”

   

 

 *光合成効率を変える際はここを押すこと。今の属性は陽です。



 どこを強化しますか

 → 1〜100m

    101〜200m

   201m〜



  二つも増えている。ひょっとして、木の可能性は無限大なのだろうか。



 だが、最初の木の時はこんなに簡単に増えた覚えはない。成長ごとに選択肢が増えていっていた。

  なんでこんなイージーモードになったのだろうか。

 一番怪しいのは神様だ。


 二回目の転生の時に、色々とパラメータをいじったんだろう。勝手に。


 これは割とチートくさい。

 だが、チートがないと、634mなんていう無理難題をクリアできるはずもないのも事実。


 ありがたく使っておこう。


 あいつも言っておけばいいのに。

 そしたら感謝しないこともない。


 ●




 風が強く吹いている。ざわざわと葉が揺れる。


 高度が上がってくるごとに、風の強さは上がっていく。

 木が倒れる原因ランキング第1位は風倒だ。


 高くなればなるほどに風の影響を受けやすくなる。

 どれだけどっしり構えた木であっても、台風がきたらひとたまりもないことがほとんどだ。


  森だったら全体で風を受けるから風の威力は弱まる。

 だが、今は俺一本だけでどでんと大きく聳えている。


 どんな方向から吹く風も直接吹き付けるという頭のおかしい環境だ。


 対抗するために俺が選んだのは五重塔方式だった。


 五重塔が倒壊したという記録はほとんどない。

 その設計思想は革新的だ。


 真ん中に心柱と呼ばれる巨大な柱を置き、その周囲に建物を配置する。

  それにより振動を吸収しているとか。

 うろ覚えだったが、そんな話を聞いたことがあった。


 真似をすることにした。

 真ん中の材の質を高め、死んだ細胞の中でも湿気や腐敗に強いものを優先して残した。


  そうして、真ん中に固くて太い心材を作り出すことに成功した。


  五重塔方式はとても優秀で、度重なる台風や地震に良く耐えた。

 200mまで成長できたのもこのおかげだ。634mまで通用すればいいのだが。


 木の細胞で生きているのはほんの表層部にすぎない。その下は死んだ細胞が積み重なっている。

 普通の木は中の材に干渉できないが、俺は転生杉なので、そんなことも可能だ。


 それ相応のエネルギーを使う必要があるが、それでも干渉出来る分有利なのは間違いない。



 こんな風に、気を使う必要があることはたくさんある。


 倒れないようにというのはその中でも一番大事だ。


 倒れてしまっては元も子もない。



 その合間に、耐火性強化や、葉の強度強化、射出強化をやっていく。

 こういう飛び道具の強化は慎重にやらなくてはならない。

 大きくなる上ではなんの意味もないからだ。


 あくまで目標は2012年までに634mに達すること。


 ひたすら大きくならなければ達成出来るはずがない。




 また、葉の数も重要だ。

 エネルギーは光合成で生み出している関係上、葉の数は強化できるものを増やすのにつながる。


 だが、無闇矢鱈むやみやたらに増やしすぎると、成長した後に負債枝となってしまう。


 維持するエネルギーはかかるのに、何も生み出さない枝。

  林業なら間伐で取り除くのだが、木としてはそうもいかない。


 増やしまくるのも良くない。バランスが大事だ。

 一周目でだいたい把握したので、おそらく大丈夫だと思う。


 100年ほどたった。伸びたのは15mほどだ。

 4000年であと434mほど伸ばさなくてはならないということを考えると、いいペースだろう。

(100年で10・8mが理想)



 ●




 いきなり大地が震えた。すわ、地震か!?


 地震だった。グラグラと体が揺れる。


 根っこを地面に深く刺しておいて助かった。


 震動は幹にも伝わってくる。


 五重塔構造が真価を発揮し、揺れは相殺され大きなダメージはない。


 うまくいった。


 俺はホッとした。




 ズッ、ガガガガガーーーン


 とんでもない豪音が響いた。西の方角だ。


 意識を向ける。


 巨大な火柱が天へ向かって吠えていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ