表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/122

第26話 蓬莱の玉の枝

 

 銀孤は氏康に大将本陣の位置を知らせておいた。


 忍びの仕事をすることで心を紛らわせている。


 将門は相変わらず察しが悪くて銀孤の様子に首をひねっていた。

 ラノベ系主人公怨霊である。誰だよ。



 夜になった。

 氏康は本隊を4つに分け、見つからぬようにさせた。

 さらに鎧兜よろいかぶとを脱がせ、身軽にさせている。


 相手が寝静まる子の刻(0時)、氏康の軍勢は突入した。

 夜襲である。

 陣深くに侵入され、両上杉軍の兵士はようやく目を覚ました。

 しかし、準備は整っていない。

 攻めてくるなど夢にも思っていなかったのだろう。


 大混乱が巻き起こった。


 一糸乱れぬ集団が、暗闇を苦にせず襲いかかる。


「火だ!火をつけろ!」


 指揮官はそう指示する。

 だが、篝火かがりびはすでに倒されている。


 陣形を整える間もない。


 それに比べ、北条軍は陣形を組んでいる。逃げ惑う相手を倒すだけの簡単な仕事だった。

 扇谷上杉は当主が死亡。山内上杉も、大将が命からがら脱出していった。


 そこに河越城内から準備を十分に整えた北条綱成が打って出た。


 猛将という評判通り、攻撃は苛烈を極めている。


「我らには八幡大菩薩はちまんだいぼさつの加護があるぞ!勝った!勝った!」


 大音量で叫ぶ彼を旗印に、籠城の鬱憤うっぷんを晴らすように河越城の将兵三千が攻めかかる。


 風魔の四人も自重しなかった。


 愛は忍術で命を刈り取っていく。

 小太郎は全体麻痺付与で相手を硬直させる。

 将門は軍勢召喚で北条軍を水増ししていた。



 銀孤は昼の出来事で頭にきていたのだろう。

 誰も見ていないところの将兵を一方的に屠ってきた。


 呪術「炎熱」ならびに「氷雪」が派手に飛び交っている。


 夜でよかった。昼なら、正体を怪しまれていただろう。


 不思議な出来事が起こっているのは目撃されていたが、誰も気にする余裕はなかった。


 こうして、北条軍は八千の将兵で10倍の八万の敵を破ったのであった。

 これこそが日本三大夜戦の一つ、河越夜戦かわごえよいくさである。




 この戦いで、武蔵の既存勢力は一掃された。

 北条家は関東の覇者としての地位を確かなものにした。



 ●



 領地が増えた北条家は領国経営に手一杯らしい。

 小太郎達さえ内政に駆り出されていると聞いた。


 俺は完全に北条の勢力圏に入っていて平和だ。



 河越夜戦の立役者として名高い北条綱成。


 彼が俺の元に訪れて八幡大菩薩に祈っていた。

 連れてきたらしき小太郎が苦笑いしていた。


 俺は八幡大菩薩なのだろうか。流石にそれはないと思うが。

 混同されていても祈られるのは嬉しいので放っておいた。




 しばらく経ったが、とりあえず平和だ。


「キリリ、コロロ。」


 鳴き声がする。

 鳥が俺の上に巣を作った。

 俺の葉は最低でも100mのあたりにある。


 巣が落ちたらとか考えないのだろうか。


 その鳥は、黄褐色で太い嘴。文鳥みたいだった。

 わりと珍しいんじゃないだろうか。

 まあ、俺はそこらの植物とは全然違う環境だしな。

 ヤマトスギ文鳥とか名付けられるかもしれない。

 なかなか気分がいい。眷属みたいなものだ。


 ひなが4羽ほど飛び立っていった。巣立ちだ。寂しくなる。


 輝夜も同じ気持ちだったようだ。残念そうにしている。



 またしばらく経った。


 グラグラと地面が揺れた。地震だ。かなり大きい。

 神様の加護の入った俺の下の地面はしっかりと俺を支えている。

 ついでに五重塔構造が発動し振動を逃していく。


「きゃあ!」


 輝夜が落ちた。いつもなら愛か小太郎が救うところだが、今はいない。


 俺は、焦った。300mから落ちたら助からない。


 必死で枝を伸ばす。俺が、動けない植物であるということは頭の中からさっぱり消えていた。


 ピコン。何かが加わった気がした。


 枝が、動かせた。自分の体のように軽々と自由自在に。


 俺は輝夜を受け止めた。枝が動けば楽勝だった。


 ホッとして一息ついた。


「あなた、ひょっとして、枝を動かせるようになったの?!」


「みたいだ。」


「すごいわ。」


 感心している。


「⋯⋯ありがとう。私を助けてくれて。」


 お礼まで言ってくれた。

 嬉しい。


「大切だからな。」


 照れて声が変になった気がした。


 輝夜が少し笑っている。やっぱり変だったようだ。


 そういえば、ピコンって音がした気がしたんだった。俺はひさびさに機能ウィンドウを呼び出した。


 何を強化しますか

 →耐火性

 樹高

 幹周り

 強度

 しなやかさ

 葉の数

 葉の鋭さ

 葉の射出

 根

 森人生成

 樹液生成

 細胞操作“NEW”


 *光合成効率を変える際はここを押すこと。今の属性は陽です。



 どこを強化しますか

 →1〜100m

 101〜200m

 201〜300m

 301〜400m

 400〜500m

 500m〜600m

 600m〜

 樹高605m


 実に500年ぶりの新機能実装だ。てか、細胞操作って、そのレベルで組成変わってたのか? そういえば、さっきからエネルギーが足りない気がする。

 細胞単位でいじったのだから当然かもしれない。植物が体を動かすために超えなくてはいけないハードルは高かった。


 輝夜を助けられたから、後悔はしていない。そう説明した。




「技能「秘道具アーティファクト生成」!」


 そしたら輝夜が暴走した。いや、それ命削るんでしょうが。


 なるべく使わないようにしようと決めたばかりじゃん。


 集中した輝夜には言葉は届かない。


 そして6時間後。


 輝夜の手元には七色の実をつけた白い枝があった。


 調べてみる。


 蓬莱の玉の枝


 効果

「寿命増加」

「最大エネルギー増加」

「弾幕」


 寿命増加⋯⋯「持っているだけで寿命が増える。」


 最大エネルギー増加⋯⋯「持っているだけで貯めておけるエネルギーが増える。 MP、HP、ATPに作用。」

 弾幕⋯⋯「玉を打ち出せる。障壁を貫通する玉が100発うねりながら放たれる。七回発射可能。」


 これやばい。まさしく秘道具アーティファクトだ。

 天人の羽衣なんてなかった。いいね?


 とりあえず輝夜を褒めておく。

 顔をとろかして幸せそうだった。

 ついでに叱る。相談くらいして欲しかった。


 ちゃんと反省していたから許そう。


 これがあればエネルギーを使う系の技を容易に放てる。

 最後の弾幕に関しては何がやりたいのかよくわからない。まあ、いつか役にたつはずだ。


 とりあえず輝夜に預けておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 唐突な東方で流石に樹生えるwww
[一言] スペルカードかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ