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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
第二章 中世

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第23話 羨ましい

 真里谷武田氏にも内乱を起こさせたところで、氏綱から戻るようにという連絡が入った。


 あと少しで完膚なきまでにぶち壊せたのにと残念がる。

 特に残念そうだったのは愛だった。

 どう考えてもストレスが溜まっている。

 小太郎くん、頑張ってくれ。


 氏綱が四人を呼び戻したのは武田に侵攻するためだった。


 実家とでもいうべき今川から要請がくだり、それに従う形だ。

 武田も長年、北条の国境をおびやかしている。

 ここで打撃を与えておくのは北条の利益にもかなっていた。


 今川の兵と合わせて、甲斐の奥深くまで攻め込んでいく。

 富士山麓山中湖畔にて、武田当主の弟を討取ると、さらに侵攻していった。


 ところがここで、今川当主が急死する。


 今川が手を引くことになり、北条も引き上げた。


 お家騒動の結果、今川義元が当主となった。


 のちに桶狭間の戦いで討ち取られ、織田信長の武名の糧となった武将である。


 ようやく馴染みのある人が出てきた。戦国関東はマニアックだ。


 ようやく落ち着いた今川家だが、ここで事件が起こる。


 義元が武田の娘と結婚し、武田と今川が同盟を結んだのである。


 今まで共に武田を攻めていた間柄だ。ここへきての裏切りに氏綱は激怒した。


 北条軍は今川領に侵攻する。今川家との全面戦争である。


 未だ領内をまとめられていなかった義元はこれに対して有効な手を打てなかった。


 風魔の四人が流言飛語を撒き散らしていたのも原因である。

 時代は情報戦だった。


 富士川以東を占領し、今川との和睦がなされた。


 北条家の大勝利だった。


 氏綱は伝馬制を整備するなど、領国経営においても才覚を発揮した。


 領地は安定し、領民たちの支持も厚い。


 これを背景にさらに勢力を伸ばしていった。


 武蔵南部と下総しもうさまでも領国に加えたのである。


 関東の象徴たる大和杉を支配下に収め、北条の力はとどまるところを知らなかった。


 ●


「あるじ様。ただいま戻りました。」


 小太郎が頭を下げる。


 北条の勢力は無事にここまで達したようだ。

 輝夜と二人では厳しい戦いだったが、これで一安心だ。

 四人を頼れるのは大きい。


「よくやった。誇りに思うぞ。」


 褒めると四人とも目を輝かせた。

 久しぶりなので嬉しさが爆発しているのだろう。

 俺も嬉しい。


 蓄えたお供え物のお神酒みきを使って宴会をすることになった。


 将門の呪いが薄くなっている気がしたので、彼も上に上げてみる。


 あっ。やっぱり無理。ごめん。下に行って。


「大和杉様⋯⋯。」


 そんな捨てられた子犬みたいな目でみるなよ。罪悪感がひどい。


 でも、俺に悪影響があるやつを登らせるのはダメだろう。


「そんな顔せんと。わっちが付き合うさかい。」



 銀孤が一緒に降りて行った。

 将門はクールを装っていたけど相当嬉しそうだった。

 これはもしかするともしかするかもしれませんね。期待しておこう。


「そういえば、小太郎と愛、お前ら結婚したんだって?」


 ぶっ


 小太郎が酒を吹き出した。


「誰がそのようなことを?」


「銀孤よ? あれ、まさかそこまで進展していないの?」


「そんなまさか。」


「小太郎様⋯⋯。愛は構いませんよ。」


 黒髪巨乳美女の愛が胸を押し付けている。

 小太郎め。羨まけしからん。


「っ、だが。そんなことしている暇は。」


 小太郎の反応はウブだった。うん。


 お前はそう言うやつだ。

 俺は信じていたぞ。


 うーん。

 でもそれじゃじれったいな。


「俺は構わないと思うぞ。」


「あるじ様?!」


 小太郎は信じられないと言った様子で俺をみる。

 いや、これでも俺ラブコメ大好きなんだよ。


「ほらほら、ご主人様もこう言ってますし、ね?」


「私お邪魔みたいだから抜けるね。」


 輝夜は空気を読んで上に登ってった。


 小太郎は逃げ場を探そうと周りを見渡すが、その間に愛に押し倒されてしまった。


 なるほどこれが房中術。

 乱れた愛はエロかった。


 流石にいたたまれなくなったので輝夜の方に意識を持っていった。


 輝夜は富士山の方を見て黄昏たそがれていた。


 俺は黙っていた。

 気持ちに応えられないのが辛かった。


「そこにいるの?」


 それでも輝夜は俺を感じ取ったらしかった。


「ああ。」


「ずっと一緒にいたあの二人がくっつくとなると、やっぱり思うところはあるわ。」


「俺もだ。」


「祝福したいけど、羨ましい。」


「待っていろ。俺は絶対に人間に戻るから。」


 二周目の今回、俺の可能性は無限大になっている。できないはずがない。

 そう例えば、輝夜たちを生み出したときにちらりと考えた端末としての森人生成を応用すれば。


 だが、考えるだけで追加されるはずの機能ウィンドウはなんの反応もなかった。


 何か、条件があるのだろう。悔しい。


「今は、一緒にいれるだけで、嬉しいから。」


 俺たちは隣同士で月を見ていた。



 ちょっと気になって銀孤と将門の方をのぞいて見た。

 落ち込む将門を銀孤が慰めている。いい雰囲気だ。

 生き霊と九尾の狐。

 どちらも妖怪と考えればくっついても不思議じゃない。

 ぜひラブコメしてほしい。


 小太郎と愛の方も覗こうと思えば覗けるんだけど、流石に自重した。見ちゃダメなやつだ。知ってる。

 二人は別に見てもいいですよと言うのだろうか。

 あの二人ならありえる。


 何も聞かないことにしよう。そうしよう。




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