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第2話 機能ウィンドウ

 

 話は俺が神様空間に戻されたところに戻る。


「で、だ。まあいいところまで行ってたからこうして死に戻りさせたわけだが。」


「喜んでいいのか微妙なところだな。どうせなら燃やされる前に言ってくれよ。」


「あん? 俺の許可なく喋るんじゃねえ。」


 ヒュン。飛翔音。

 見事なフォームだ。

  神様からかんざしが飛んできた。

 喧嘩っぱやすぎる。


 俺はとりあえず距離をとった。触らぬ神に祟りなしだ。

 むしろ全力で逃げ出したい。


 だが、この不思議空間がどこで終わってるのかわからない。

 得策ではなさそうだ。


「とはいえ、あのまま行ってても届かなかった。それはわかるな。」


 俺は頷いた。3000年費やして200mがやっとだ。

あと1000年ちょっとで634mを越えられるわけがない。


 誰だよ。スカ○ツリーを作る計画を思いついたやつ。

 今からそいつを闇討ちした方が現実的なんじゃないか?



「1周目で足りないところはわかっただろう。成長率は二倍、更にこの前育てた木で最初の時代からスタートでいいぞ。」


「神様、それでいいので?」


「お前が育てたんだろうが。努力の結晶を無駄にしていいんか、ああん?」


 などと脅してくるが、現実を見据えているのは確かだ。


  木には限界というものがあって、その限界ギリギリをついて成長したのが前回の俺だ。

 あの時のノウハウは残っているとはいえ、焼き討ち対策をしながらまた育てるのは手間も時間も大いにかかる。


  育成ゲームのヘイトは育成するところに集まるからな。

 育成するゲームのはずなのにな。


 ○GOのやろうは許さん。こちらにガチャ設定がなくて良かった。

 麻婆豆腐の在庫を死ぬほど抱える未来が見える。


「難易度が下がったのは確か、か。」


 俺はそんな言葉を口の中で転がした。

 バランス調整が入ったのなら、それを利用するのは大事だ。


「わかりました、やって見せましょう。」


「おお、いい返事だ。任せたぞ。⋯⋯⋯⋯なんだったっけ、まあいいや。木。」


 おいこの乱暴女神俺の名前忘れてたぞ。

 それでいいのか、いいわけないだろ。 


 何言ってるんだよ。俺の名は⋯⋯。


 あれ、俺の名前ってなんだったっけ。

  3000年木をしてたからわからなくなってきた。


  どうしよう。自分の名前だぞ、思い出せ。

  俺の名前は、木野 小太郎みたいなそんな感じの何かで。

 いや、それはないな。

 この名前じゃないのは確かだ。


 2話目で君の名はならぬ俺の名は展開誰得だよ。



「俺も覚悟を決めなきゃな。」


 神様が小さく呟いたのを聞いた気がした。




  思考できたのはそこまでで、俺の意識はその空間から流されて行った。



 ●


 降り立ったのは縄文時代のだいぶ切れ込んだ海岸線の見える場所。

 俺も知らなかったが、この時期は海岸線がだいぶ内陸の方まで来ていたらしい。

 成長して海が見えたときは驚いたものだ。


  今回は初見で海まで見えるけどな。さすが樹高200m。



 訛りがきつい日本語の原型のようなものが聞こえて来た。下を眺めれば人がゴミのように見える。


  縄文人が俺の木の下に集落作っていた。

  邪魔だからどいてくれないかな。

  この前のトラウマが蘇ってくるんだけど。


 焼き討ち怖い。焼き討ち怖い。



 さて、これで現在の状況は大体把握できた。

 おおよそ縄文時代の隅田区、のちのスカイツリー所在地のあたりの大木。それこそが俺だ。



 ここからスカイツリーの完成する2012年までに634mを超える超巨木に成長しなくてはならない。厳しい道のりが予想される。


  種族を世界樹にしてファンタジー世界にしてくれたらなあ。ハイファンタジーものとして爆誕できたんだけどなあ。


  ないものねだりをしても仕方ないので、この地球で頑張るしかない。


  正直クソゲーである。日本だぞ。

 地震に台風、津波やらなんやらかんやら。

 木の成長の障害しかない気候帯だ。

 縛りプレイと評されても仕方あるまい。


 さて、現状把握はこの辺でいいだろう。目標も前と同じだしな。

  今回変えるとしたら、前回の死因ー焼死ーへの対策に尽きる。



  とりあえず下の樹皮の耐火性をあげて行きたい。500度くらいまでなら燃えない樹種だってあると学んでいる。

 成長することで燃えなくすることができるはず。


  あとはそうだな。下部あたりに水を集めておこうか。正直成長のうえでは必要はないのだが、今は何より耐火性が欲しい。ここら辺は要改良だな。




  木としての時間は膨大だ。

  安定するまでは色々と手間をかけて世話をしていく必要はある。

 だが、ある程度軌道に乗ったらもうオートで大丈夫だ。

  シミュレーションゲームあるあるだ。この木が自分そのものである俺としても、まるでゲームをしているような感覚になる。



 何を強化しますか

 →耐火性

  樹高

  幹周り

  強度

 しなやかさ

 葉の数

 根

 

 *光合成効率を変える際はここを押すこと。今の属性は陰です。



 どこを強化しますか

 →1〜100m

  101〜200m

  201m〜



 こんなウインドウも出てくるし。これ実質ダンジョンものなのでは。


  ちなみに陰葉は樹高が小さい時専用の属性だ。

  陰に生きる植物はそれに適応した光合成組織を持っている。

 俺も新芽の時は利用させてもらった。


 でも、今の俺はすでに200m超の超大木。


 早く陽葉に変えないと効率が悪い。

 初期設定は陽にしてくれよ。

 なんでそこひねくれたんだよ。

 あっ、耐火性が加わってるのは進化だね。


 これは神様がやったのか、俺が必要だと思ったからなのかはよくわからない。

  どっちなんだろうか。後者であることを祈ろう。




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