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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
補遺

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補遺 第二十四話 幕

 

 意味深な言葉を残して消えたクロノスは不気味だが、ともかくこれで、神様を取り戻す戦いは終わった。

 これで、俺の植物の加護も復活するだろう。


 ほんとこの神様は、いたらうざいし、いないと困るしで、複雑な気持ちになってしまう。


 とはいえ、あっけらかんとお礼を言って頭を撫でられると、もうどうでもいいかという気持ちになってしまうのである。これが、バブみってやつか。俺が神様相手にバブみを感じた、だと⋯⋯ ?!


 絶対に気の迷いなんだよなあ。

 どうせ二、三日したら全てを忘れて、理不尽な要求をしに来そう。



「ところで、俺たち帰りたいのですが。」


 いつまでも神様空間にいるわけにもいかない。


 クロノスを倒す上で無理をしたし、俺の本体が無事かどうかは確かめたい。

 強引にこの空間に召喚しちゃったけど、大丈夫だよね⋯⋯ ?


「ああ。いつものところでいいか?」

「上の方でお願いしますね。」


「わかってるよ。ったく、不便な時代になったもんだぜ。」



 流石に大和杉直下にいきなり現れたら、騒がれるからな。


 葉っぱがたくさんあって目隠しになる枝の上がいいだろう。


 まだ、ウズメと猿田彦は残っているのだろうか。


 俺たちの姿がなくて、愛と小太郎が焦っているかもしれない。


 現世の俺には話を通してあるから、説明してくれているとは思うが、ともかく早く帰って安心させたい。



 カヤノヒメの指し示す先でゲートが開いた。


 ウズメが、打撃連打で強引に開いたのとは違ってえらくスマートな開き方だ。



「じゃあな。早いとこ力を取り戻して、お前にも還元できるようにしてやるから、楽しみにしとけよ!」


「ええ。神様も、もう乗っ取られるんじゃありませんよ!」


「余計なお世話だ!全く。」



 神様が不機嫌そうになったので、そのまま外に出る。


 ちらりと見たら、イワスヒメだけ、そこに残っていた。積もる話もあるだろうし、存分にしたらいいだろう。

 イワスヒメはどれだけ文句を言ってもいいと思うし。


 ●


 強い風が吹いていた。

 俺の上特有の、気候だ。帰ってきたことを実感する。

 東京特有の、眼下にプラモデルのように見える車と街並みが見下ろせる。


 そういえば、昔は一面の草原だったこともあったっけ。


 さっきまで草原にいたせいか、そんなことを思い出した。



「お帰りなさい。主人さま。」


 そんな風にしていたら、俺たちの帰還を把握したらしい愛と小太郎が、下から上がってきて膝をついた。


「留守は問題なかったか?」


「はい。主人さまも、無事で何よりです。」


「まあ、俺はこの端末が死んでも死なないからな⋯⋯ 。むしろ輝夜達の方がよく死なずに帰ってきたよ。本当によかった。」


「大和のためだもん。死ぬわけないじゃない。」


 輝夜は嬉しいことを言ってくれる。


「楽しかったな。またあるんだったら呼んでくれ。」


「旦那はんと戦えて幸せだったわあ。」


 ⋯⋯ お前達はブレないな。


 猿田彦とウズメはもう帰ってしまったようだ。

 お礼が言いたかったな⋯⋯ 。


 とりあえず、これで終わりだろう。

 俺が転生してから生じた因縁の全てに決着をつけたはずだ。


 やりきったし、生き切った。


 これからも時たま、同じような危機が降りかかるのだろう。


 でも、俺たちの力があれば、何が起こっても大丈夫だ。


 輝夜、小太郎、愛、将門、銀狐、明、白、ミト、ルナ。


 これが俺の眷属だ。みんな頼れる仲間達だ。


 神との戦いを経て、さらに自信がついた。


 これから先、どんなことが起ころうとも、自分たちの力で、生き抜いてみせる。



 ●


 ある洞窟の奥深くで、クロノスの器が目を覚ました。

「全くもって、想定外だ。」

 神とその眷属達に負けた自分の姿を思い出し、そうひとりごちる。


「だが、こうなればもう一つの計画を始動させるのみ。」


「クハハハハ。ゼウスよ。困り果てて、理由を探し回るがいいさ。簡単な筋書きならば、用意してあるからな。」


 悪意を煮詰めた哄笑が、誰もいない洞窟に響き渡る。




 クロノスは、ふと、眉をひそめた。


 この洞窟の形状はよく知っている。

 千年以上、根城にしていたのだから当然だ。



 だが、今のこの場所には、信じられないものが生えている。


 それは、扉のように見えた。


 いつもの空間に、一つだけ、見覚えのない異物が混じっている。


 それは、神であるクロノスでさえひるむ異常事態だった。



 扉が開く。


 その先に広がるのは、見覚えのない青い穏やかな大海原。


 そして、ひょこっと、顔が出た。


 神らしい完璧に整った容貌をした女だ。


 クロノスは警戒する。


「これ繋がってます?」


 そんな彼を意に返さず、女は手を振った。


「誰だ、お前は?」


「異世界の女神と、覚えてくれればいいです。」


「なるほど。その女神が俺に何の用なんだ?」


 友好的な態度に、クロノスも警戒は緩めないまま、話を進めることにした。



「簡単です。あなたをそちらの世界の神の代表と見込んで、こちらのシステムの営業に来たわけです。」


「胡散臭いにもほどがあるが。」


「別にいいでしょ?この世界がめちゃめちゃになっても。むしろ望むどころじゃないんですか?あなたの復讐は、まだ完成していませんよね?」


「お前、どこまで知っている?」


「あなたのことなら、ほぼ全て。どうです?あなたにとっては悪い取引ではないと思いますが。」


「具体的に、何を提案するんだ?」


「ダンジョンの生成による現体制の崩壊です。」



「ほう? 」


「危険なモンスターがいる迷宮のことです。私の力を楔にこの世界に埋め込むことができます。」


「だが、そのためには、神の許可が必要だ。そして、その許可をもらうために、一番与くみし易いと踏んだ俺に接触してきたというわけか。俺も舐められたものだな。」


「でも、やる気でしょう?それがあなただもの。」



「いいだろう。乗ってやる。だが、条件がある。」


「なんでしょう?」


「強さを相対評価できるシステムを作って欲しい。」


「なぜです?」


「楽しみが増えるからさ。」


「わかりました。やってみましょう。⋯⋯、参考例としてはこのゲームですか。わかりました。それが条件というなら、飲むしかありませんね。」


 クロノスは、オリュンポス神族が許せないだけであり、人に対する悪意は持っていない。

 むしろ好きである。


 順調な工程をわざと邪魔するなど、いたずらっ子的な側面は強いが、人を食べもしないし犯しもしないのだ。


 人類の味方とは言えないまでも、共生者であることは望んでいる。それがクロノスという神だった。


 人類が努力次第で解決できる、そんな試練を作成しようと考えていた。


 かくして異世界の侵食が始める。この先に待つのは希望か絶望か。


 それは、神にもわからない。






補遺と言いつつ、なぜか二十三話ありましたが、これで幕です。

書ききれなかったのは日本VSギリシャ神話でしたが、ちょっとテーマが壮大すぎましたね。

完全復活したカヤノヒメに呼び出されて無双する杉の構想はあったんですが、それだけだと流石に厳しい。


本来なら書籍発売と同時に終了とか考えていたんですが、全然そんなことはなかった。

書籍版、読んでくれた人ならわかると思いますが続刊が出る場合、その後の展開の大幅な変更を余儀無くされるので今からビビっています。それでも続刊してほしいですね⋯⋯ 。


購入して支援いただけると嬉しいです。



ついでに今日から新作をはじめましたので、こちらも良かったら。構想としては神代から現代までやるつもりです。

https://ncode.syosetu.com/n7955gj/

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れ様です。 いつも楽しく見させてもらいました。 終わり方がローファンタジーのダンジョンものに続きそうだったのでとても気になりますね。 個人的には明とか白とかルナとかのサイドストーリー…
[一言] おまけの完結、お疲れ様です(´・ω・`) 続編につながる話でしたか……なお、システムには変なバグがあったもよう。
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