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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
補遺

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補遺 第二十三話 めでたしめでたし?


 クロノスの世界が崩れていく。



 天と地を分かつ一線が緩やかにあやふやになる。


 元の混沌の世界へと変わっていく。見覚えがある気がする。


 3000年前が最後だったか。もはや懐かしい空間だ。



 時の流れもあやふやで、地面もしっかりとしていない。自分の領域をきちんと保つ努力をしてないんだろうな。様々な神様の領域に立ち入った結論はそれだった。カヤノヒメずぼらそうだし……。



 で、彼女はどこだ。


 そろそろ俺も木の形が保てないんだけど。地面がないというのが致命的だ。草木の神様なら地面くらいつくっておいてほしい。


「人に戻るぞ。」


 俺は知らせてから、形をくずした。人型の方がまだましだ。根っこがないのは不安すぎる。


 みんな落ちる衝撃に備えたけど、大丈夫だった。高さという概念が消失している。


 領域は完璧に元に戻った。だけど、彼女は姿を見せない。


「カヤノヒメ? どこにいるの?」


 イワスヒメはおそるおそる、空間に問いかける。


 答える声はなくて。



 そして、光が集結し始めた。


 ……なぜか俺の腕の上に。


 なんでだ。あんたは、そんな囚われの姫みたいなキャラじゃないだろ。


 むしろ浚いにきた悪人を逆に殴って反撃してそう。


 いや、でも今回の出来事は、そういう側面があったのかもしれない。


 とらわれの姫、カヤノヒメか。笑わないようにしないと。


 体が実体化していく。


 俺の腕の中に確かな重量が加わっていく。



 意外と軽くて驚いた。神様も女なんだなと言うか、そんな感じだ。


 力は込めておこう。取り落としたらなにをされるかわかったもんじゃない。イワスヒメがすごい形相で見てくるし。



 そして、彼女は目を開いた。


「おおう。寝てたか。ん?なんだこりゃ。なんでおまえ等がここにいるんだ?」


 相変わらず口が悪い。でも、これでこそ俺の知っているカヤノヒメだ。こうじゃないと落ち着かない。


「覚えてないんですか?」


「ちょっと、待てよ。思い出す。ええと、確かクロノスのくそやろうが借金の取り立てにきたんだったか。」


「そこよ。どうしたの。あなたが封じられるなんて信じられないわ。」


 イワスヒメが会話に入ってきた。

 なお、まだカヤノヒメは俺の腕の中である。まあ、軽いから良いけど。


「俺はわからないんだが、契約不履行の代償が大きかったことを考えると、あいつの言ったことは正しいんだろうぜ。しかし、俺が二回も時間遡航契約なんて結ぶかね。」


 カヤノヒメは首を傾げようとして失敗し、俺におろすよう要求してきた。


 まったくもってかわいげのない人だ。輝夜が怖かったからちょうどよかったのは内緒である。


「心当たりはないの?」


「いや、まったく?」


 神様二人は二人して頭をひねっていた。



 ……神様が言ってた時間遡航、俺の話な気がするけど、やぶ蛇になりそうだから黙っておこう。そうしよう。


「で、なんだお前等は。俺の領域に許可なく踏み込んできやがって。」


 わー。この人ぜんぜん現状把握できてないぞ。



 仕方ないので懇切丁寧に現在の状況を説明した。


「なるほどなるほど。俺の体が、あいつに使われていて、あいつはなにやら悪巧みをしてたと。確かに体の調子がいつもよりいい気がするな。寝起きで調子がいいからだと思っていたが、そういうことか。」


「そうそう。大変だったんだから。感謝してよね?」


「ああ。ありがとうな。イワスヒメ。」


「あなたのためだもの。これくらいなんともないわ。」


「神様。俺たちにはないんですか?」


「お前は俺の子で、ほかの奴らは俺の孫だろ? 主を助けるのはとうぜんじゃないか?」


 カヤノヒメは当然だろうという表情だ。……こういう人だったな。お礼が欲しくて始めたわけじゃないが、こう言われると悲しくなってしまう。



「まあ、なんだ。ありがとな。感謝してる。」


 そのあとに、カヤノヒメがそんな言葉を小さくつぶやいていた。


 顔がにやつくのを抑えてからかいにいく。


「神様。もっとはっきりいってくださいよ。それじゃわからないですよ。」



「ああもう。うるさい。言ったからいいだろ。」


 そう言って顔を背ける神様の耳は真っ赤だった。

 恥ずかしがっているようだ。レアだ。


 苦労が報われた気になった。


「ああ、そういえば、現世の植物たちのエネルギー問題どうにかしてくださいよ。」


「いやいや、いかに俺が変になってたからって、あんなに潤沢だったエネルギーが消えるなんてあり得ないだろ。」


 カヤノヒメは目をつぶった。探っているようだ。



「なん、だと。俺があれだけ蓄えた成長エネルギーがすっかりからじゃねえか。あいつ、なにに使いやがったんだ。」


 彼女は驚愕を隠せないようだった。

 クロノスがエネルギーを何かに使ったらしい。どうせろくでもないことだろうけど。



 今クロノスは消えている。

 彼に尋問することはできない。


「ま、いいか。」


 カヤノヒメは深く考えないことにしたようだった。うん。あなたはそんな神様だ。



 とりあえず、カヤノヒメに関する異変は解決した。何か不安材料が残ってる気がするけど気のせいだろう。

 そうに違いない。




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