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補遺 第十一話 宝物ガチャ

 

 アマテラスは太陽の化身である。


 だが、太陽は他の神話でも神々として組み込まれている。


 ギリシャにおけるアポロン、北欧におけるソール、仏教における大日如来、メキシコにおけるケツァルコアトル、ヒンドゥー教におけるヴィシュヌ。などなど。


 地球上のどこでも上空に燦々と輝くそれは、当然ながらどの場所でも信仰の象徴となる。


 ならば、全ての神話体系が存在すると仮定するなら、太陽神とはなんなのだろうか。


 一つのものの別側面に過ぎないのだろうか。それとも、一つ一つ、全く別の神なのだろうか。


 少なくとも、この世界においての答えは、上空にある。


 大気圏を超え、宇宙と呼ばれる領域。


 そこに彼女は、彼女たちは浮かんでいる。


 太陽と地球の対角線上において、太陽の光を収束し、地上に向けて放つもの。


 そして、その光を受けて夜の国を照らすもの。


 それがアマテラスとツクヨミの姉妹だ。


 天動説を肯定し、地動説を否定するかのように、二人は日本の上にいる。

 ずっといる。


 まるで衛星のように。



 二人にとっては大事な仕事だ。地上を照らし、皆の安全を守る。

 莫大すぎる太陽のエネルギーは一旦収束して弱めなくてはならないのだ。


 そのままにすると、地上が発火する。

 そしてそれはアマテラスという最高神を持ってしても、この一地域が限界だった。



 だから他にも神はいる。


 互いに確認はしていないが、地上を守るための存在が、確かに他の神話にも存在している。


 彼らは重なり合って太陽の光を弱めている。


 脆弱な地上を守るため、ここを動くことは許されない。


 地上に派遣するのはいつも分身だ。


 それでも辛くはない。隣には、ツクヨミがいる。


 他の神々も月神と一体になって弱めている。


 月と太陽は比翼連理の鳥であった。


 ちなみに、蓄えた莫大なエネルギーによって、地上の分身も他の神々よりも強い力を持つ。


 太陽神だけは怒らせてはいけない。


 それが日本神話でも。


 そして、それがギリシャ神話でも。


 とはいえアポロンは振られたことを理由にカッサンドラを呪っただけの小さい男である。

 気にしなくてもいい気もしてきた。


 おいておこう。フラグとはなるまい。


 ●


 5つの道具作りは難航を極めた。


 仏のみ石はすぐに生成できたが、火鼠の皮衣と燕の子安貝の鉢が出ない。


 狙ったものが生成できるというわけではなかったようだ。

 チョコ出の小槌のことを考えると、たぶん、効果は指定できる。


 だが、燕の子安貝の効果と言われてもよくわからない。

 5つの宝物わからないものが多かったもんな。

 そこらへんは仕方ない。

 ここにきてガチャ要素だ。


 スマホゲーが隆盛を極めているからと言って習わないでほしい。


 なんだかどこかで見覚えがあるような紫色のドアとか、頭につける竹とんぼとかが生成されていたが、見なかったことにした。


 あれは危ないやつだ。


 触れてはいけない。


 本能がそう囁いている。


 イワスヒメの加護のおかげだろう。輝夜の体力減少は抑えられるようになっていた。一日5回はガチャが回せる。どうせなら毎日10連無料にしてくれ。


 いや、冗談だよ。輝夜はよくやっている。

 この秘道具生成とか言う名のガチャが悪いんだ。


 なんで激辛麻婆豆腐なんてものが出てくるんだろう。

 どう考えても秘道具じゃない。


 さて、やっぱり、五つの宝物はSSRのようだ。どうでも良さそうなものと触れちゃいけなさそうなものが積み上がっていく。


 あとで処分しないと⋯⋯。


 敷島でやってくれるだろうか。


 ゴミ処理場に持って行ったら流石にまずい気がする。


 まあ、いいか。気にしないようにしよう。


 まだこのウロにも余裕はあるしな。


 万が一ここが見つかったら謎のオーパーツだらけで話題になりそうだ。


 神様が結界を貼ってるらしいから大丈夫だろうけど。


 ⋯⋯大丈夫だよね?


 カヤノヒメが消えている現状を考えると危うい気もする。


 今度愛に尋ねてみよう。

 まあ、彼女が何も言ってこないのなら問題ないのだろうとは思う。



 今は、輝夜に力を分けないと。


 森人族のエネルギー補給で一番効率がいいのは、俺が直接エネルギーを分け与えることだ。


 成長できなくなっている現状、残りエネルギーを分けるのは不安だが、これで解決すると信じている。

 いけるはずだ。


 だからガチャの神様は、早く微笑んでください。


 三日後、ようやく火鼠の皮衣ができた。


 火鼠の皮衣

 効果

「火無効」

「火炎弾」


 あの時の急造品とは違い、「火炎弾」がついて攻撃性能が上がっている。まあ、龍の首の珠とか蓬莱の玉の枝に比べたら見劣りするけど。


 などと言っていたら、蓬莱の玉の枝ができた。


 いや、できたと思ったら、もともと置いていた蓬莱の玉の枝の中に吸い込まれて行った。一つしか持っちゃいけない仕様でもあるのだろうか。

 凸れってことかな?

 つくづくガチャを回させるのが好きなようだ。


 蓬莱の玉の枝

 効果

「寿命増加」

「最大エネルギー増加」

「弾幕」

「水銀生成」“NEW”


 効果が増えてる。やっぱり凸れと言うことらしい。


 いやでも水銀を生成したくなる場面なんてなくないか。


 不老不死の薬と偽って古代中国で売りつけるくらいしか思い浮かばないぞ。


 水俣病とかもあったんだし。


 金ならまだしも、このご時世に水銀の単体を売るのはいかんでしょ流石に。


 本当はどうなのか知らないけどさ。



 封印だ。封印。それがいい。


「輝夜、あと一息だ。頑張ってくれ。」


「それなら大和、撫でてほしいわ。」


 頭を?


 いや、ためらってる暇はない。


 人間体の俺は何もしていないからな。


 それが輝夜のためになるのなら、やるしかないだろう。


 彼女の綺麗な黒髪を優しく撫でる。


「ふわあ。」


 彼女はとても気持ち良さそうな声を漏らして目を細めた。


 思わずドキドキしてしまう。



 俺は落ち着かない気持ちのまま、輝夜を撫で続けた。



「うん。ありがと。これでまた、頑張れる。」


 輝夜に元気が戻ったようだ。

 良かった。


「これくらいなら何度でもやってやるぞ。」


「そうね。疲れたらまたお願いするかもしれないわ。」


「いつでも言ってくれ。輝夜の髪はサラサラだからな。機会がなくても触っていたい。」


「ほんと?! なら、ずっと、そのまま⋯⋯。」


「ああ。」


 三日間成果の出ないガチャに向き合っていた輝夜の心労もピークだろう。


 なるべく癒してあげよう。



 向こうで銀狐が意味深に笑っていた。


 いいだろ、これくらい。お前らはいつもやってるじゃん。



 今も将門は銀狐に膝枕されて寝てるし。


 俺の護衛という名目じゃなかったのだろうか。


 ●


「⋯⋯俺が一番いたたまれないんだが。」


 木接続以来、大和杉の意識は二つに分かたれている。


 人間体と、もともとの大木だ。


 記憶の同期はできるため、同一人物だとはわかっている。

 だが、こんな恥ずかしいことを自分の中で見せられてはたまったものではない。


 仕方なく彼は辺りを見渡す仕事に戻った。


 東京の街はいつもと変わらず広がっている。


 杉は暇だった。



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― 新着の感想 ―
[一言] 杉は別の自我なのか。 デメリットであるかの様に言ってるけどこれ実質並列思考能力ぢゃん……
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