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目指せ樹高634m! 〜杉に転生した俺は歴史を眺めて育つ〜  作者: 石化
補遺

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補遺 第三話 出雲大社

 


 出雲大社は大国主神おおくにぬしのかみを祀っている。

 日本神話に関しては、少し調べたから知識はあるけど、日本土着神の主神という扱いのはずだ。

 後から来た武御雷神たけみかづちに負けて、天照大御神たち高天原の神々に国譲りしてここに引っ込んだとかなんとか。

 事実なのかどうかは分からないが、信ぴょう性は高いだろう。


 神様は実際にいることだしな。


 割と賑わっていたし、しめ縄も立派だし、本殿も大きいしですごかった。


 でも、俺の方がすごいので。負けてないので。


 謎の対抗心が芽生えてしまった。


 あの神社を潰さなければなあ⋯⋯。俺の下にもこのレベルの神社ができたかもしれないのに。ちょっと宗教勢力に過敏になり過ぎてた。


 まあ、今となっては東京という大都会のど真ん中だし、スペース的にも余裕はない。

 保護用地として周りに地面を配置しているのも、敷島がいたからこそだしな。今は国に管理させているらしいけど。


 俺の下の宗教の歴史に関しては、調べると面白い論文が書けそうだ。卒論それにするか。生き証人だし。

 大和杉(本人)にインタビューしましたって書けそう。いや、無理だけど。




 とりあえずお参りだけはしたが、神様たちのすがたは影も形もなかった。


 結構人もいたし、別の領域にいるんじゃないだろうか。


 となると、イワスヒメに聞くのが一番良さそうだ。


 人気のない場所で俺は、呼び出し番号を唱えた。


 時間が経過する。間違えたのだろうか。

 人前で電話番号を言う痛い人になった気がする。


 そんなことはない。気のせいだ。そうに違いない。


 輝夜が笑わなかったので、救われた。


 真剣に受け取ることで救われる心もある。


 ただの自爆っぽいのは気にしない。


 それでもやっぱり待ちぼうけだ。



 いい加減移動しようかと思ったところで、地面が渦巻いた。


 砂が服となり、立ち上がる。


 銀糸の御髪を光らせてイワスヒメの登場だ。


「ちょっと手間取ったわ。ごめんなさいね?」


 彼女は優しげに微笑んだ。


 うちの神様と性格を取り替えてくれないかなあと切に願う。


 今回はそんなことも言ってられないけど。


「何かわかりましたか?」


 俺は勢い込んで尋ねた。


「はかばかしくないわ。カヤノヒメはどこにも現れていないみたい。」


「やっぱり死んじゃったんじゃ⋯⋯。」


 輝夜はこっそり呟く。


「それはないわ。ありえない。私たちが死ぬのはよっぽど強力な概念によってだけよ。特にこの日本ではね。」


 イワスヒメは自分に言い聞かせているようだった。


 俺としてもそうあってほしいが、状況は予断を許さない。


「神無月には、日本中の神様がここに集まると聞いたんですが。」


「そうね。なるほど。カヤノヒメがここにやってくると思ってるのね。」


「はい。」


「確かにその強制力は強いわ。ええ、そうね。いけるかもしれない。」


「神様たちが集まる場所はどこですか。」


「⋯⋯うーん。まあ、いいわ。私の従者として連れて行きましょう。」


「ありがとうございます。」



 神様世界への侵入は流石にただの植物には荷が重い。


 頼れるなら大助かりだ。


「手続きするから、待ってて。明日、呼びにくるわ。」


「思ってたよりお役所的なんですね。」


「めんどくさいわ。」


 それでもふわりと軽やかに彼女は言った。対して負担には感じていないようだ。


 性格が良すぎる。


 それがあの頃の反動なのかはわからないけど。


 建物の神様が消えたからか、この頃はあんまり高い建造物を作ろうと言う動きはないようだった。


 これ以上高い建物が出てきたらまた追い越せとか言われそうで怖かったので大助かりだ。

 その言いそうな人物の行方が分からないのが今の状況なんだけど。


「待っててね。」


 イワスヒメはそう言って、地中に溶けていった。


 人の視線で見るとまた不思議な現象だ。

 木として過ごしているとそう言うところが分からなくなりがちなので、毎日新鮮である。目線の高さが桁違いだからな。


 割と移動自由だし。あれはどうなってるんだろう。植物の意識について少し考察を巡らせてしまった。


「旅館の部屋、とっとくね。」


 輝夜はその間に必要なことを済ませたようだった。


 俺がやるべきことでは⋯⋯。

 いや、イワスヒメとの交渉をやったから。十分働いたから。


 どう考えても交渉と呼べるようなものではなかったことに関しては目をつぶってほしい。



 旅館について、輝夜が予約した意味を知った。


 彼女は一部屋しか取っていなかったのだ。


 俺はヘタレて最後の一線を越えられないからな。俺ならふた部屋取っていた自信がある。


 とはいえ、もう大学生だ。彼女がお膳立てしてくれたことだし、あとは俺が頑張る番だろう。



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