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6話 侵入者

 

 侵入者くるの?! 侵入者なんで?!


 突然のアナウンスに1人パニックになりながらも、地面からニョキニョキ生えてくるモンスター達に指示を飛ばす。


「突き当たりの部屋から好きな武器と防具付けてここに整列!」


 一番に動き出したのはコボルト。


 青黒い柴犬が二足歩行しているような見た目で、かなり可愛い。

 コボルトは走る時だけ4本の足を使い、訓練所兼武器庫へと入っていく。


 二番目に動き出したのは二体のスケルトン。


 なんの装備もつけておらず、身長も段違いであるから、アーサーと並ぶと見劣りしてしまう。

 理科室のアレみたいな、そのままの見た目である。二人いるから兄弟のように見えるため、こいつらはスケルトンブラザーズと呼ぼう。


 三番目はオーガ。


 はっきり言ってコイツは本当に強そうだ。筋肉隆々で、腕が丸太のように太い、まるで赤鬼。

 動きを見るに俊敏性に欠けるようだが、この狭いダンジョンにおいて、機動力は大きな強みにならないだろう。


 そして最後は――


「おいお前ら、働いてくれ」


 5体の醜い小人……ゴブリンは、生み出されるや否や井戸端会議をはじめている。


 そして不思議なことに、彼らがなにを言ってるのか俺には理解できなかった。

 モンスター言語は人型なら全部に作用する訳ではないらしい。


 ゴブリン達は訳の分からない言葉を交わしながら、未だ武器を取りに行く動きも見せずその場に留まっている。


(ニートやんけ……)


 ゴブリン達から訓練所の方へと視線を移すと、レイピアを咥えたコボルトが俺の方へ走り寄って来るのが見えた。

 スクッと二本足で立ったコボルトは、右手でレイピアを握る。胸には銀色の胸当てを付けている。


(見習えゴブリン供め)


 心の中で悪態を吐きつつ、アーサーとアニィの姿を探す。


『いいか、お前らは今日から俺様の部下だ。お前が守りで、お前が攻めだ』


 武装したスケルトンブラザーズと楽しそうに喋っているアーサーを発見。

 スケルトンの1人は大きめの盾、もう1人はメイスを持っているのが見える。


(アニィは……どこだ?)


 しばらく探してるうちに、オーガが訓練所から出てくるのが見えた。

 防具を着ていないのは好みの問題なのか、それでも身の丈に合ったグレートアックスを持っているので威圧感倍増である。


 これで一応みんな武装したのか?


(俺も刀だけは握っておくか)


 腰に携えた名刀・タンポポの柄を撫でた直後――ゴブリン達が予想外の行動に出る。


 5匹が全員、出口に向かって走り出したのだ。


「うおおい!!」


 俺の声などどこ吹く風と、ゴブリン達が楽しそうに駆けていく……そして、断末魔の叫び声がダンジョンに響き渡った。


 入り口からヌッと現れた〝侵入者達〟は、口に咥えたゴブリンを嚙み潰し、ギロリとこちらを睨んだ。


『ダンジョン内に侵入者アリ!!ダンジョン内に侵入者アリ!!個体名〝死喰い〟』


 墓場で俺を襲ったあのネズミか……しかもそれが3体もいた。


(ゴブリン5体が瞬殺――)


 ゴブリンは1体10ポイント。

 コボルトは1体20ポイント。

 スケルトンは1体30ポイント。


 ポイントの量で実力は推し量れないが、ゴブリン達が瞬殺では、恐らくスケルトンでも死喰いには対処できないだろう。


 希望があるとするならオーガだが……。


『いけお前ら! 作戦通りに動け!』


 アーサーの掛け声に合わせるように、死喰いの前にスケルトンブラザーズがおどり出る。

 盾を持ったスケルトンの後ろにメイスを持ったスケルトン、そしてコボルトも控えている。


 もう二体の死喰いにはオーガとアーサーが対峙している。

 体格では優っているが……どうなるか。





*****





 戦闘開始から10秒――


 死喰いの体とオーガの体が消えるタイミングはほぼ一緒だった。


 オーガは飛び掛かられた状態で既にLPが8割削れていたため、続く前歯の一撃で呆気なく倒れた。

 同時刻、アーサーの振るった剣が死喰いの喉元に突き刺さり、オーガと死喰いの死体が塵となる。


『やるじゃねえかお前ら! そのまま踏ん張れや!』


 大剣を振り回しながらもう一体の死喰いに斬りかかるアーサーが、スケルトン達を鼓舞!


 110ポイントを使って召喚したオーガを一撃で倒した死喰いの攻撃を、盾持ちのスケルトンは耐えていたのだ。

 それだけでなく、死喰いが攻撃した隙を見計らい、メイスを持ったスケルトンとコボルトが攻撃を与えていた。


(すごい……スイッチしてる)


 けれども、流石にステータスに大幅な差があるのか、盾を持つスケルトンの手足には徐々にヒビが入っていくのが見える。


 バキャ!! という音と共に砕け散る盾、腕、足……そして胴体と頭部だけになったスケルトンに死喰いがトドメを刺しに飛びかかり――飛んできた大剣に貫かれた死喰いは、勢いよく壁に突き刺さった。


『こりゃあ大金星だな』


 投擲の体制のまま、

 アーサーが満足気にそう云った。

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