5話 襲撃に備えよ
スケルトン達が俺の配下になってから既に10分――
『おう、ここ何にもないな。つまんねえ』
「……」
居候のくせにでかい態度だな。
アニィを見てみろ、外から摘んで来たお花を墓に備えてるぞ。
ヒマそうなスケルトン――改め、〝アーサー〟を無視し、ダンジョンについての掲示板を参考に、メニュー画面を操作していく。
因みにアーサーがスケルトン、アニィがゾンビパペットの名前らしい。
これは本人達から直接(アニィには地面に書いてもらって)聞いたから間違いないが、モンスターにも自分たちが認識してる固有名があるとは知らなかったな。
話しを戻すが……このダンジョンが開放――すなわちプレイヤーから侵入されるようになるまで、残り11時間と数十分。
それ以降は、侵入してくる奴らを撃退していかなければならない。
ダンジョンマスターは、ダンジョンの中では正に創造主のごとくなんでもできるのが最大の特徴だが、それにはしっかりと対価が必要となる。
それは〝ダンジョンポイント〟。
現在のポイント:2200(内訳:レベルアップによる200P、最初にもらえる2000P)
優先すべきは何か、
戦力増強か。
領地拡大か。
罠地獄、か……ううむ。
*****
「と、いうわけで。2人とも好きなこと要望してくれ」
迷った結果、2人に1000ポイントずつ託すことにした。
考えてみれば、俺の願望だった〝アンデッドのいるダンジョン〟は既に完成しているのである。
『当然! 武器庫と訓練場だな』
『畑、作って』
アニィは棒で地面に書いている。
調べてみると、ダンジョンから持ち出すことはできないが、中だけで使える武器や防具もポイントで買えるようだ。
とりあえず適当に見繕ってみる。
【D.ロングソード】20P
筋力+25
【D.グレートアックス】35P
筋力+42
【D.ランス】20P
筋力+22
【D.ヘルム】20P
耐久+15
:
:
:
etc.
(部屋は武器庫を備えた訓練所で一部屋とすれば収まるかな? お、これも一緒にしたら味が出るな……これも買おう)
俺の凝り性な性格が出始めている。
訓練所の横に武器庫と、ついでに鍛治スペースを確保。
ここで武器と防具を作って、訓練所にて試運転する。そして刃こぼれや凹みは鍛治屋が再び整備する……という設定も込み込みである。
そんなこんなでアーサーの要望は975ポイントを使って実現できたので、お次はアニィの要望だ。
畑のスペースは最後の部屋を開放すればいいとして、一面を畑にするかどうかだな。
「肥料と種・苗代込みでも800ポイントくらい余るんだけど、他にやりたいことはある?」
農具や水場を設置しながらアニィの方へ視線を向けると、地面に追加の要望が書かれていた。
「本が読める場所か」
アーサーとは対極の要望である。
本を読める場所は――図書館?
部屋の右側を畑と農作業器具・水場として改造し、左側を大きな窓が付いた壁で仕切りを作り、扉を設置。
中には窓から畑が眺められる配置にテーブルを置き、椅子、そして後ろ側に本棚を三つ設置する。
(本か……なんの本が欲しいのか分からないけど、モンスターって人間の文字読めるのかな? 言語辞典は必須か)
雑貨の一覧の中から何種類かの本を適当に見繕っていく。
【人族言語辞典】10P
【植物図鑑】15P
【魔物大百科・上中下】30P
【王都の料理】10P
【冒険の町を歩く!】5P
【かわいい洋服百選】5P
【怪盗アイルバーノン現る】5P
【ダンジョン経営学】25P
:
:
:
etc.
購入した本の山は本棚に収められ、残りのポイントが244となった。とりあえずこれで2人の要望は叶えられたといえる。
特にアニィの反応が楽しみだ
(さて、残ったポイントで……)
そこで俺はハッと我にかえる。
罠も拡張も全くやってない。
モンスターも戦えそうなのがアーサー1人だけだ。
「し、初日で突破されそう……」
とりあえず俺は配置できるモンスターの一覧を開き、手が使えそうなモンスターを選んでいく。
【スケルトン×2】60P
骨の戦士、打たれ弱い
【ゴブリン×5】50P
醜い小人、頭が悪い
【コボルト】20P
二足歩行の犬、身軽に動く
【オーガ】110P
赤色の鬼、力がとても強く、体が硬い
人型ならアーサー達のように話せる可能性もあるし、こいつらなら購入した武器や防具も扱えるだろう。
即席だが、これで一応迎え撃つ準備はできたか――と、安堵した時だった。
『注意!!ダンジョン外に敵反応アリ!!ダンジョン外に敵反応アリ!!襲撃に備えてください!!』
あるぇ?
まだ12時間経ってないのにぃ。