第0話 ~始まりは突然に…
この話は気分が乗った時にだけ投稿します。
続くかどうかは不明ですが、出来る限り続けたいと思っています。
ー???ー
気が付くとそこは森の中だった。しかも薄暗い、木々のざわめきが正直不気味。遠くから聞こえる獣の声が耳に残る、…マジで不気味だ。それ以上に…、
「…ここは何処なんだ?」
見覚えのないこの場所に俺一人、…どうすればいいのさ。
とりあえず周囲を見渡すも分からない、どう考えても見覚えのない見知らぬ森の中。…この俺が拐われて捨てられた? ……ないない、この俺を拐うような骨太な奴などいる筈もなし。見た目マフィアで喧嘩無双のこの俺ユキさんを拐う度胸がある奴など、…いる筈がない!
…がしかし、一応自身の身体に何もないか確認することは必要だろう。俺の視線は自身の身体へ、そして…、
【ステータス】
HP:B+
MP:B
STR:A-
DEF:B+
INT:B-
AGL:A-
DEX:A
MED:C+
LUK:A-
【スキル】
〈ワンド〉LV1〈ソード〉LV1〈カップ〉LV1〈コイン〉LV1
【称号】
愚者
「…おぅっ!?」
急に頭に流れ込んだこの情報、…何かしらのゲームによくあるステータスとかいうヤツみたいだな。ゲームと同じようにステータスであるのなら、HPが体力、MPが魔力、STRが力、DEFが防御力、INTが知力、AGLが素早さ、DEXが器用さ、MEDが精神力、LUKが運…だっけ? よく分からんけども…。
ともかく、…新人類とは何ぞや? それぞれA、B、C…分からん。Aは強いの? 弱いの? …出来れば数字で表して貰いたいんだけど。それに〈ワンド〉に〈ソード〉とかって何? 〈カップ〉に〈コイン〉もそうだけど、…マジで何? 後…愚者って…、ヒドくない? 何も分からない、見知らぬ場所にいるから愚者ってか? ……俺が何をしたっていうんですかね? 見た目マフィアで喧嘩無双ではあるけれど、…それほど悪いことをしてきたつもりはない。なのにこの扱いはないんじゃなかろうか?
…疑問しかねぇよ、…説明とか見れるんか? とりあえず新人類ってーのは…、
「新人類」転移者をこの世界の規格に合わせたことで誕生した人間族。人間族でありながら、その能力は魔神族にも匹敵する人間を超えた者の総称。
…ほぅ、何かスゲー種族みたいだな。…ってことは、俺のステータスはヤバイくらい強いってわけか。よく分からんが、このステータスは新人類ってヤツのお陰なんだな。…いや、…それよりもだ。転移者っていうのが気になる。…俺のことだよな? …転移者、…俺は異世界に来てしまったわけ? …じゃあやっぱりここは、…俺の知らない場所でいいわけだな? ……そうか。
異世界に転移したらしい、…その事実に少々ナーバスになった俺。何かを思い出そうにも、俺と親しかった者達の顔が思い出せない。…というか、そういう奴等がいたかどうかも怪しく感じる。人との繋がりは思い出せないが、それ以外は何となく覚えている。…モヤモヤするなぁ、…ホント。
…まぁいいや、異世界に来てしまったんだ。今はその事実だけを受け止め、これからどうするかを考えるべきだろう。…そういうわけで、さっきの続きをやろう。新人類っていうのは分かった、次はスキルを見てみよう。え~と…、まずは〈ワンド〉ってヤツだな。
〈ワンド〉魔法関連を司るスキル。四属性の初歩魔法が使用可能。
魔法関連? 全属性? 初歩魔法? 使えるといっても何があるか…。そう思った矢先、頭の中に情報が流れ込んできた。
〔火〕ファイア
〔風〕ウインド
〔水〕ヒール・キュア
〔大地〕ウォール
…これが俺の使える魔法ってことか? 見た感じ弱そうではあるが、…検証は後だな。
〈ソード〉ってのはどうだ?
〈ソード〉戦闘関連を司るスキル。全ての武具が装備可能。
戦闘関連か、…戦いにおいて必要となるスキルだよな? 全ての武具が装備可能といっても、着の身着の侭だからなぁ~。現段階では意味がないのでは?
お次は〈カップ〉だな。
〈カップ〉補助関連を司るスキル。転移者専用の特別スキルが任意発動。
補助関連といっても、何が補助なのかが分からん。転移者専用の特別スキルとは? そう考えた時、先程の〈ワンド〉と同じように…、
「語学無双」全ての言葉が理解出来る。
「鑑定」目に入るモノ全ての情報を任意で知ることが出来る。
「従魔」魔物を三匹、従えることが出来る。
という情報が頭に流れ込んできた。見る限り素晴らしい、見知らぬ場所にいる俺にとっては大いに助かるスキルが二つ。「語学無双」は人里に行かねば効果が分からないけど、絶対に俺を助けてくれるスキル。「鑑定」は言わずもがな、知ることは大事である。最後の「従魔」は分からない、分かるのは魔物が存在するという情報だけ。これもまた、後で分かることだろう。
最後に〈コイン〉というスキル。
〈コイン〉生産関連を司るスキル。転移者専用の特別スキルが使用可能。
生産関連で特別スキルか、その特別スキルのことを考えれば…、
「生産工房」調合設備のある異空間工房へと行き来することが出来る。
異空間工房へと行き来することが出来る? …異空間工房とは何ぞや? 調合設備とはどんなものか、これも気になるが後でいいな。
称号の「愚者」っていうのも調べておこう、え~と…。
「愚者」汝は自由なる天才、可能性を求めて旅人となる。汝が果てを旅路の先で見付けるべし。「異空間格納庫」使用可能。
…意味分からん、内容的に愚者って感じがしないんだが。とりあえず旅人として、安住の地を見付けろってことを伝えているんだよな? ……世界を旅しろってアンタ、…異世界ですよ? 世界を知らない俺にはハードルが高いと思う、たとえステータスが高くてもな。
…で、「愚者」に付属している「異空間格納庫」とは…?
「異空間格納庫」異空間に様々なモノを無制限に収納出来る。
無制限にモノを収納出来るってことは、青ダヌキのポケットみたいな感じか? …便利だな、それ。
一頻り自身を調べて落ち着いた俺、次にやることは一つ。自身のステータスが本物か否かを検証しなければ、正直安心出来ないわけなのである。そんなわけでとりあえず、その場でシャドウボクシングをやってみる。
シュシュシュ…ッ! …シュッ! …シュシュッ!!
ヤベェ…! キレッキレだ! これ程までに、自身の拳が空を切り裂くところなど見たことがない。凄いぜ新人類! …俺はこの流れのままに、背後の巨木に回し蹴りを放ってみた。
バキバキバキ…ッ!!
その一撃で巨木は折れ、凄い音を立てて倒れる。…俺の回し蹴りが凄すぎる件について、…ステータスは本物のようだ。巨木を蹴り倒せるのなら、手刀でもいけるんじゃなかろうか? シャドウボクシングにて確認しているが、…ヤれる筈だ。そんなわけで手を指先まで伸ばし、巨木に向けて振り抜いてみた。
ズバッ! …ズゥゥゥゥゥンッ!!
俺の手刀が巨木を一撃で!? …俺の手刀は下手な武器よりも強力なんじゃないか? 俺はマジマジと自分の手を見詰める。…すると、
「ユキの手」全てを薙ぎ払う最強の手。使いすぎると壊れる。
…最強の手っていうのはいいんだが、使いすぎると壊れるのか。…怪我とか骨折っていうことだよな? 消滅するってことじゃあないよね?
自身の手が壊れる可能性のある最強級の武器になる。それを知った俺はたぶん足も同じなんだろうなぁ~…と思いつつ、ここぞという時以外は使わないと誓う。壊れるとはどういうモノか知らないし、…異世界だからね。慎重になるぐらいが丁度いいのかもしれない、そういうことにしておこう。
ステータスを見た、スキルと称号も見た。そして自身の身体能力を知ることも出来た、後は…、
「これからどうするかってことだな、…さて。」
そう、これからどうするかってこと。右も左も分からない未知の世界、そして高確率で近くには人里がない。獣の息遣いが聞こえる薄暗い森の中、…ここから始まる俺の異世界ライフ。唯一の救いは俺自身が強いということだけ、…衣食住が無いこの状況。本当に…、どうすればいいのか分からんのよ。
俺は自身で蹴り倒した巨木に座り、これからのことを考える。自身が強いってだけで、何もない俺である。まずは食料、食う物が無ければ生きていけない。勿論水も必要、…というか水が一番必要であろう。とりあえず「鑑定」を使いながら、周囲を探索すれば食い物の一つや二つぐらい入手出来るだろう。水はどうなるか分からない、…水が入手出来なかったらヤバイよな。
次は、住む場所というか寝床だな。このよく分からない不気味な森の中に、ゆっくりと疲れを癒せる場所があるかどうか…。獣というか魔物というか、そういう奴等も潜んでいるっぽいからな。俺自身が強いといっても、魔物と対峙したらどんなものか…。やっぱりビビってしまうものなのか、…それ以上に見てみたいという好奇心の方が勝っている。とりあえず戦ってみて、そこから寝床探しを食料探しと平行して行うべきだな。
…よし、今からやるべきことが決まった。後は行動するだけだな、…よし! 俺は座っていた巨木から立ち上がって、行動しようと思ったが…、
「…せっかく倒したんだし、この巨木を持っていくか。」
「異空間格納庫」を試してみたい、そう思って巨木に触れてみた。するとどうだろう、目の前の巨木が跡形もなく消えてしまったではないか。
「…うぉっ! スゲェ…!?」
それに驚きながらも「異空間格納庫」の凄さを実感し、もう一本の巨木を収納。そして俺は動き出す、若干の恐怖とそれ以上の好奇心で。…この先何が起きるのか、…未知だけど楽しみだ。
主人公はタロットをよく知りません。故にワンドとかソードとか知らないし、愚者のこともよく分からない状況です。
物語が進めば何となくタロット? みたいな感じで気付く予定です。…が、だからと言ってどうにも出来ないわけですが。