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88話 オボロの目的


前回の続きです!どうぞ!




「……リリー・チャイルド……?」



「うごおおあああ……あ……!!!」



ぐたりと倒れる男。



「オボロ!!!」



「…………峰打ちだ。」



マリンが理解するより早く、ユースティティアの(みね)が男の首を叩き気絶させていた。



「……行くぞ……マリン。 ……野党の言ってる事だ。」



まるで何事も無かったように歩き出すオボロ。

しかし、────────



「……気にするなっていう話なら無理。 」



足を止める。



「……マリン。 行こう。」



「嫌だ。宿が無いとかご飯とかそんなことよりこっちの方が大事。 ……大体ここ最近様子がおかしいと思ってたから……。 教えてくれないならここから動かないから。」



「…………………………………。」



「ねえ、教えてよ。 私達仲間じゃん……。」



マリンはオボロの背中に問いかける。

だが、オボロは何も言わず歩を進める。



「……リリーってリリー・レイルの事でしょ?! ノクスラビリンスに巣食う迷宮の死神でしょ?! リリー・チャイルドって何なの?! 私にも言えないことなの?! オボロ!!!」



「……………………………違う。 」



「じゃあ、何で?!」



「……お前だからだ……。」



「え……?」



オボロは歩みを止め、ゆっくりと振り返る。



「……お前にだから言いたくない。 嫌われたくない。 こんな話を聞かされれば、たとえお前でも……ッッッ?!」



「馬鹿!!!」



マリンは全速力でオボロに飛びつく。



「……嫌いになるわけない! いや、なれるわけない……!」



マリンはゆっくりとオボロの顔を見上げる。



「ここまで私の事をたぶからしておいて、簡単に嫌われてもらえるなんて思わないことね。」



「……ッッッ!!!」



「……やることは変わらない。 あなたの過去も未来も受け止めるだけ。 ……じゃないと、2人で前に進めないでしょ?」



「……タチが悪すぎるな。」



「しょうがないでしょ? あの人の妹なんだから。」



「……わかったわかった。 だが、ここで話すのは……」



そう言って辺りを見渡すオボロ。

その時だった────────



「……おい、坊主(ぼうず)。 コソコソしていないで用があるなら早くいえ。」



「え……?!」



マリンは驚きその方向に目をやる。 すると、路地裏(ろじうら)から先ほどの銀髪(ぎんぱつ)の少年が睨みつけていた。



「……道端でイチャイチャするなんて、場をわきまえない奴らだな。」



「……そ、そうでした……。」



マリンは急に恥ずかしくなり、顔を赤らめる。 しかし、オボロは表情を崩さず冷静に返す。



「……それを言いにお前は裏からコソコソと見ていたのか?」



「……っ。 ぜ、全然ちげーよ!!! ただ、借りを作ったままってのは性にあわないだけだ!!!」



「……ん?」



「着いてこい。 あんた達宿も飯もないんだろ。 」



銀髪の少年はそう言うと不機嫌そうに路地裏に戻っていく。


オボロとマリンは顔を見合わせる。



「行ってみるか?」



「……いい子そうだしね?」



「…………そうだな。」



2人はそう疎通(そつう)すると、路地裏へと消えていった。



……………………………………………………………………………………………………………………




「ここの2階だ。 ここを好きに使っていい。」



銀髪の少年はそう言って部屋を出ていく。


バタン────────



「……………………………………。」



「屋根があって雨風しのげて布団がある!」



「……本当にこんなところタダで使わせてもらっていいのだろうか……。」



バタン────────


急にドアが開くと少年が立っていた。



「……ずっとじゃない。 2、3日したら出ていってもらう。 ほら、これ。」



そう言って少年が差し出したのは、先ほどの男達の持っていた食料品の一部。 がちがちのパンだ。 しかし、文句は言えない。 自分たちにこんなに尽くしてくれるのはここぐらいだろう。



「……いいの? 君の分のご飯は?」



「俺はまた取ってくればいい。 アンタ達には借りがある……。 ただそれだけだから、気にするな。」



そう言って出ていこうとする少年。



「君、名前は?」



「……リョーマ。 そう呼ばれてる。」



マリンはニコッと笑うと、「ちょっと待ってて!」と呼び止め、インベントリを探る。


そして、────────



「はい! これ、リョーマ君の分!」



「何これ……」



「インベントリにあったレトルトのカレーだよ! パンには少し水を含ませてふっくらにしてみた。 一緒に食べよ?」



「………………………………いらない。」



リョーマはそう言いつつも、腹をギュルギュルと鳴らす。


すると、────────


ドンッ。


今まで黙っていたオボロが床に座り込むと、パンをちぎりカレーにつけて口に頬張(ほおば)る。



「……毒なんかは入っていない。 お前もそこに座って食べるといい……。」



そう言って、もう1つ口に頬張る。



「ね? 一緒に食べよ?」



「……くっ。 しょ、しょーがないから食べてやっても……いい。」



「ありがと♪」



マリンがそう言うと、リョーマは勢いよくカレーをつけたパンを頬張り始めた。


✕ ✕ ✕


余程お腹がすいていたのか、食べ終えるとその場で寝てしまった。



「……こうやって見るとまだ子供なのにね……。」



「……ああ、可愛らしい子供だ。」



オボロがそう言うと、本気で驚くマリン。



「あら?? オボロもそんなこと思うんだ?!」



「……ああ、子供は好きだ。」



「確かに、ロット君も近くの教会に置いていってあげてたもんね。」



「……あれは、普通だろ。」



そう言うと、オボロは遠くを見つめる。



「ただ、コイツを見ていると、昔を思い出す。 俺がリリー・チャイルドと呼ばれていた頃をな……。」



「……………………………。」



マリンはリョーマを()でる手を止め、オボロに目をやる。

すると、マリンに目配せをし語り出した。



「俺は昔ここの貧困街。 ここ18層で生まれた。 」



「うん……。」



「当時は毎日生きるか死ぬかだった。 生きるためなら盗みも、時には殺しもな……。 そして、俺が10になる頃ある事件が起きた。」



「………………………………。」



マリンは黙って頷く。



「ここ18層にリリー・レイルが住み始めたんだ。 皆、違う階層(かいそう)に引っ越した。 だが、俺は長年住んでいた住処(すみか)に愛着が湧いていたのと、自分なら逃げれると(たか)(くく)っていた。 それから、数日がたった後だったか、案の定俺はリリー・レイルに捕まり、奴の実験台(じっけんだい)となった。 」



「実験台……?」



マリンがそう聞くと、オボロは頷いた。



「奴は自分の固有魔法(ファーストネーム)を、研究していた。 奴は自分の力を''強奪(ごうだつ)''する力だと言っていた。 そして、奴が不死身と呼ばれるのはその力の副産物によるものだ。」



オボロはリョーマを抱き抱え、布団に載せる。



「……触れたものの命、魂の寿命を強奪し自分に使う。 そうすることで、致命傷(ちめいしょう)の傷を負っても強奪した魂が身代わりのように作用するんだ。 ……奴はそれをどの程度まで貯めこめるのか、寿命の多い子供たちから吸い取る実験をしていたんだ。奴は金品や金はたんまり持っていたからな。 子供を買ったり、奪ったりすき放題し、集めた。」



「……そんな。ひどい……。」



「だが、……」とオボロは続けた。



「……そんな中増えすぎた子供の統率(とうそつ)が困難になり、やつはある提案をした。 子供に子供たちを統率させる……というものだった。 奴に気に入られた子供は寿命を奪われない代わりに、こき使い実験の手伝いをさせた。 それが……」



「リリー・チャイルド……。」



マリンは呟く。



「周りからは子供を集める変態野郎と言われていたが、中身はもっと残酷(ざんこく)。 ただ殺すだけだ。 ……俺はそこに15までいた。 たくさんの仲間が死んだ。 だが、俺は殺し続けた。 見て見ぬふりをして仲間を裏切り続けたのさ……。」



「………………………………。」



マリンは何も答えず、オボロを見つめていた。



「そんなことを15まで続けていた俺はお気に入りの中のお気に入りになり、ある程度の権力をもらって金品などの保管などもやるようになった。 そして、そこが俺とユースティティアの出会い……。 ……俺はそれを持って逃げ出した。 やつを殺せるぐらい力をつけようと。」



オボロはそこまで話すと、マリンの前に座り込んだ。



「いつしか俺は''リリーの手下''から悪魔の使いと呼ばれるようになった。 皮肉だがな……。 リサードにも目的があるように、俺にも目的があると言ったな。 それが、……」



「……リリー・レイルの殺害……なのね……。」



「ああ。 俺はあいつが生きている限り、ずっと呪われている。 今も尚。 」



そう言ったオボロの目は、ただただ虚無(きょむ)に満ち溢れていた。



────────────────────────────────────






ライブに殺される……。

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