86話 決着
遅くなりました。 前回の続きです! どうぞ!
重い金属音が空気を響き渡っていた。 剣と剣が擦り、弾き、火花を散らす。 リサードにとってはいつも通りの音、感覚……のはずだった。
「……ぐああああッッッ!!!」
「……ハッッ!!!」
リサードが吹き飛ばされ大きな砂煙が巻き起こる。
「「────────────?!」」
隊員達、そしてウルグスとユーシンは数秒遅れで砂煙に目をやる。
リサードは立っていた。 砂煙の中に。
足元が少しふらつくが、気丈に振る舞う。
……これがマスタークラスか……??
「……さっきの威勢を見せてみろリサード・ブルオスト。……早く。」
「────────ッッッ!!!」
ジャンヌは地面を蹴り、休む間も与えないかの様な次手の速さでリサードに剣を下ろしていく。
必死で防ぐ……。
だが、リサードはまたもや、砂煙をあげ吹き飛ばされていく。
いつも通りの剣の音、感覚……それに自分は慣れているつもりだった。 戦い方には自信があった。 センスだって信じて疑わなかった……。
だが、あの体のどこからこのパワーは出てきてやがんだ……。
リサードが今まで、剣を打ち付けあってもここまで手応えが感じられないのは珍しかった。
リサードか特に違和感を感じていた点は音だった。 今までやりあってきた剣戟音とは全くの別。
高い金属音ではなく、まるで金属を折り曲げるかのようなグワンという様な、あたかも鉄格子を剛力でこじ開けた時のような音。
その上、まるで山を切っているかのような重圧。
リサードは冷や汗をかく。
この感覚は嫌という程わかる。
それは────────
単純な『力負け、実力不足』を意味する。
あれこれと策を弄したり、スキをついて戦況を変えるには、この差が大きければただの足掻きだ。
「カハッッッ!!!」
何度防ごうとしても、力で負けて吹き飛ばされる。
ムカつくぜ……。 魔法だけが強力な野郎だと思ってたが、剣技まで上とはな。
リサードはフラッと砂煙の中で立ち上がる。
この野郎……!!!
……剣は隊員の男が使っていた一般的な剣。 七星剣時代に使い込んだパージグリンでも無ければ、死地を共にしたアビスでもない……。
それもあるだろうが────────
尚更、自分の本当の技量が試されるこの状況で────────
マスタークラスってこんなに強かったのか……等という。。。
……こんな感想がでてしまうのが……
「……つまらん。 終わりにしてやる。」
ブワッと砂煙が晴れたかと思うと、勢いよく剣を振りかざしたジャンヌの姿が目の前に映る。脂汗が吹き出る。
たまらなくムカつく……
「こりゃ勝てねーわ……」
例え実力さを体が感じたところで……
「……死んでおけ。」
……ッッッ!!!
リサードは剣を持つ手に力を込める。
簡単に諦められるわけあるかァぁ!!!
「……腕が足りねぇんだったら……!!!」
「────────────?!」
山のような重圧をかけてくる剣。 俺の手の力では抑えきれない。
だから、────────
リサードは剣であらかたの力を抑える。 だが、剣だけでは足りない。
わかってんだ、手で無理なら────────
「……頭もあんだろうがッッッ!!!」
「……────────────?!」
手以外も全てフルで使ってやる。
それが、例え頭突きだとしても!!!
向かい来る縦切りを剣の腹で受け止め、あろう事か自分の剣ごしに頭突きを決める。
剣越しに伝える頭突きの衝撃は、ジャンヌの剣を伝い、ジャンヌの両腕を襲う。
額から血が吹きでるリサード。
「……お前は野人か、何かか?!」
知ったこっちゃない。
「……らぁッッッ!!」
「……くッッッ!!!」
予想外の行動で自分を剣を止められ、体が一瞬ひるむジャンヌ。 リサードはそこを見逃さず、切り返す。
「……チッ。」
舌打ちをし、体制を整えなおそうとするジャンヌ。
まだだ……。
こんなチャンスをみすみす見逃すわけねえだろ!
光系魔唱────────
「オーバー・フラッシュ!!!」
強烈な光。
リサードの体が眩い輝きを放つ。
「……クッッ。 目くらましか……!!!」
フッ。
「……目くらまし……か……。」
リサードは笑ってみせる。
光系魔法フラッシュ。 この技は光系の魔法の中で、光エネルギーをもつ人間の殆どが一番最初に覚える技だ。
言わば、初級者でも覚えられるスタングレネードの様な目を眩ませる魔法。
オーバー・フラッシュはそれを増幅させた中級の魔法と認識されている。
しかし、リサードから言わせればそれは違う。 目眩しは光系魔法フラッシュの副産物に過ぎない。
この技の本質。
それは、体の中に流れるエネルギーを、光に変換し輝かせるときに生じる熱エネルギーなのだ。
実は、この光へ変換した後に輝かせるという工程には、凄まじいエネルギーの無駄が生じている。
体の中に流れる光のエネルギーは元から光っている訳では無い。 それを、何倍にも圧縮し輝きを練る。 その時、この光の中に莫大な熱の反発が起こる。
人間はそれを無意識の内に抑えようとし、相殺を行ってしまう結果、労力の半分以下の輝きしか出せない。
だが、もしこの莫大な熱量とそれを抑えようとする力を、全て相手へと向けることが出来るとすれば……?
そう、この技は目くらましから一転して、強力な魔法へと変化する。
大きな輝きを放つそれは、体の中で起こる大きな反発する熱量を全て放出する。
似たような技にオーバーヒートという熱量を吐き出す魔法がある。
だが、それとは全く別物であると言わざるを得ない。
工程も威力の規模も。
リサードが今までこの魔法を使わなかったのには理由がある。いや、使えなかったというのが正しいだろう。
この技には反動があり、一度使うとしばらく動けなくなること。 そして、もう1つ。
リサードの光系エネルギーとヒュドラとアビスの呪系エネルギーが複雑に絡まりあっていたこと。
つまり、言ってしまえばこの技はヒュドラとアビスがいないこの状況でのみ発動ができる、正真正銘リサード単体での奥義。
「……ただの目眩しで、私を足止めできると思わないでいただきたい。」
ジャンヌは巨大な輝きの中を、目ではなく気配で動き、リサードにトドメを刺そうと剣に力を込める。
「……お前こそあんまり馬鹿にしてくれるなよ……。 」
わずか、齢10にも満たない俺が編み出し、当時の七星剣であったトルネさんに膝をつかせた技。
今なら更に上に行ける。 もっと高みへ。
「……思い出の技だ。 仲良く病院のベッドで会おうぜ?」
「……お前は墓だッッッ!!!」
「……結果はあとのお楽しみだな……。」
光系奥義────────────
弾けろ。
「……シャイニング・ジハード!!!」
────────────────────────────────────────────
合宿に行ってきます!




