85話 死合
遅れました!どうぞ!!
神軍九隊。
リサードも後から聞いた話だが、相当名が通っているようで、あの獅子王の心臓とも並ぶほどの勢力を誇るSクラスギルドとして大陸に知れ渡っていた。 それは、ギルドとしての個々の強さ……そして、ギルドマスターであるノアの強さをも示していた。 現在、最強と言われている氷の女王ミラ。
通称、氷の女王。
他にも無敵の女王。 氷華冷徹、絶対王者と呼ばれ、名を馳せている彼女だが、大陸中では他にも様々な噂が飛び交う。 1度ミラを見た者は彼女を大陸最強だと信じて疑わない。 リサードもしかりだ。 しかし、ミラにも勝てるのではないか……? 、彼こそが大陸最強なのでは……?と言わしめているのがこの男、ノア・アルテミスなのだ。
だが、不思議なことに彼自身がそこまでなの轟くようなエピソードは無い。 むしろ、彼が戦うなどという話しは珍しく、ほとんど聞いたことがない。
グランドミッションの際も、彼自身は戦わずに指揮を執り、神軍九隊が倒してしまった。 そんな実力不明の中で彼はミラと同じ英雄クラスに属されている。
全く不可解ではないか?
その大きな理由の1つ。
そう、神軍九隊である。
神軍九隊の隊長格である9人のメンバー。 その全てがギルドマスター級の力の持ち主であるということ。
この世界では剣士に英雄クラス、マスタークラス、ゴールドクラスとそれぞれクラス分けが行われている。 ミラは6人しかいない英雄クラスに属され、ジュードはマスタークラスに属されている……らしい。 これで大体の強さはわかるが、その九隊は平均でゴールドクラスを超える猛者ばかりなのだ。特にセト隊、オシリス隊、アトゥム隊の隊長はマスタークラスに属される程。
そんな実力者たちが忠誠を誓う。
一体どんなカラクリがあるのかはわからない。
が、────────
それだけで、もうノアは英雄クラスの実力があると判断された。
「……実際に戦ったら一体どれ程の……。」
リサードは早々にセト隊の訓練に参加していた。 今は50キロのランニングを終えたところだ。
「……何、呑気に妄想してるんだよ。 ほら、行くぞ。 次は剣技指導だぞ。」
「……うーん。」
息を切らしながらも何とか食らいついているウルグスとユーシン。 それに比べ、少し余裕のあるリサード。
しかし、次はそうも言っていられない。
剣技指導。 言わば、セト隊との一騎打ちだ。
セト隊の隊長であるジャンヌはマスタークラス。 ジュードと同じ……。 対抗心が燃え上がるリサード。
「……では、全員集まりましたね。 次は剣技指導です。 いつもの如く、全員と一手を交えたい所ですが……」
ジャンヌはリサード達に目をやる。
「……今回は新人が3人いるでしょう。 彼らの実力がどれほどか……。 この中の隊員と模擬試合をしてもらいましょうか。 もちろん……」
ジャンヌは3人に問いかける。
「……負けた方には罰が待っていますがね?」
「……ほ、ほう……」
「…………………………………。」
緊張が隠せないウルグスとユーシン。
しかし、────────
「俺はアンタだ。」
「────────────?!」
「はぁ……?!」
リサードは特に緊張等は無く、指を指し指名する。 驚くウルグスとユーシン、そして隊員達。
それもそのはず、その指先にいたのは……
「ほう……?」
セト隊隊長ジャンヌ・クロス!
「……貴様ァ! 新入り如きが隊長と手合わせできるわけねぇだろうがアアン?!」
「……引っ込めボケェ!」
「…………リサード………」
「……………………………………。」
隊員達からは罵声が飛び交い、ウルグスとユーシンは呆気に取られてしまった。
だが、それと同時にウルグスには心強かった。 リサードと共にしてわかったことがある。
それは、リサードが只者ではないことだ。
最初はただの世間知らずかとも思っていた。 しかし、ノアを目の前にしての胆力。 そして、今。
「……その通りです。 初めから私とできるとお思いで?」
「……何言ってんだよ。 もう始まってたじゃねえか。 先に手を出したのはお前だろ? なぁ、隊長さんよ? ……あん時の忘れてねぇぞ。」
「なぁに言ってんだオメエバカか?!」
「……コイツは……。」
ウルグスは思わず下を向く。コイツが馬鹿だったらどんなに良かっただろうよ。 人は外見や地位等である程度人を選ぶ。 バカでも喧嘩相手は選ぶが、実力差のわからない大バカは実際にいる。 しかし、例えば大馬鹿者がヤクザに喧嘩売ったとする。 だが、さすがに熊を目の前にして喧嘩を売れるだろうか? スズメバチの大軍を目の前にして喧嘩を売れるだろうか?
実力差。 そんなものじゃない。
計り知れないオーラ。 いわゆるバカでもわかる……というものだ。
視覚、聴覚、嗅覚、どれをとっても感じる死の匂い。 それは、どんな人間でも、例え赤ん坊でもそれはわかる。
俺達がノアやジャンヌから感じているこの死の匂い、恐怖のオーラを感じ取っていないわけが無い。
つまり、何が言いたいのかと言うと。
リサード、コイツはそれを受けて尚、戦いを挑んでいるという事実。 そして、リサードからも感じる微かな匂い。
間違いない……!
ウルグスはユーシンを見る。 すると、ユーシンもまたウルグスを見ていた。 2人は目配せをして瞬時にお互い同じことを考えていたことを理解する。
リサード……
お前は一体何者なんだ……?
「……おいコラボケ何とか言え!」
「まあ、待てお前達。」
「隊長……。」
静まる隊員達。 リサードは静かに佇んでいる。
ほう……。 スキがないな……。
以外に楽しめそうだ。
「おい、奴に剣を渡してやれ。」
「へ────────?!」
「……聞こえなかったか? 剣を渡せ、と言ったんだ?」
一瞬理解ができていない様子だったが、そそくさとリサードに剣を渡す。
「……お前の度胸を買って今回は相手をしてやろう。 武器・魔法何でもありだ……。」
「ふーん……。アンタは?」
「……ハンデだ。私は魔法は使わない。''木刀''だけでいい。」
「……へぇ。」
隊員達はそれを見てヘラヘラと笑うが、ウルグスとユーシンは全くと言っていいほど真逆だった。 息が詰まるような空気を感じ取っていた。
「……よし、いつでも来い。 私に一撃入れることが出来れ────────」
フッ────────────。
……?!
リサードの姿が消える。
「……何?!」
次の瞬間。
ジャンヌは後ろからの縦振りを受け止めていた。
早い……。
「……フンッッッ!!」
すかさず切り返し、横振りで返すがまたそこには姿はなかった。
回り込まれただと?!
「……クッッ!」
「…………………………。」
またもや、コレを防御するジャンヌ。
そして、────────
。
「……ただ早いだけなら誰でも出来る!」
「……そうかよ。 だったら、────────」
リサードの剣に光が溜まる。 あれは……────────?!
光属性魔法。
「次はぶち込む……。」
「図に乗るな。」
直進に向かってくるリサード。 木刀を舐めてはいけない。 コレはただの木刀ではない。 立派に名刀と呼ばれる代物だ。
「……受けてたってやる。」
「うおおおおお!!!」
リサードの直接的すぎる大きな縦振り。
馬鹿め。 この木刀はただの木刀では……
「……バカはお前だろ?」
「……なッッッ?!」
縦振りが振り落ちる瞬間に光が消える。 いや、消えるではない。
移動!
一瞬で光エネルギーが移動し、右足が煌めく。
「……だがッッッ!」
木刀でそれを防ごうとするジャンヌ。 しかし、────────
「……なぁッッッ?! 貴様ッッッ!」
あろう事か自分の剣は剣は投げ捨て、ジャンヌの木刀と腕をガッチリと掴んでいた。 動かそうとしてもピクリとも動かない。
これは、────────!
光系脚技────────────
「……シルバーツイスト!!!」
「ぬおおおおおッッッ!!!」
衝撃波。
ジャンヌの腹に向けて放たれた蹴りは、ジャンヌの体1cm手前で暴発する。 それでも、大きな衝撃に後ろに飛ばされる。 足元は抉れて砂煙がまう。
いつの間にか、ヘラヘラとしていた隊員達も今や、何が起こっているのかわかっていない。
「……おっかしーーなーー? 魔法は無しじゃなかったのかよ。 ……ギルドマスターが見てみたいぜ!」
リサードがそう言うと、砂煙が晴れ、悠々と立つジャンヌがいた。 傷も砂煙も体についていない。 しかし、ジャンヌの目には怒りがこもっていた。
ノアへの侮辱……!!!
「……貴様。 リサード・ブルオストと言ったな……」
ジャンヌがそう言うと木刀が砕ける。 ゆっくりと前に進みながら剣を抜く。
「……ノア様に報告しなければなりませんね。 ……早速1人殺してしまったと。」
「……安心しろよ。 お前に俺は殺せねえ。」
「ほざけ……!」
その一言を最後に目にも留まらぬ剣戟と衝撃波が辺りを包んだ。
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