84話 セト隊とジャンヌ・クロス
遅れて申し訳ございませんでした。 続きです!どうぞ!
幾つかある牢獄室を抜けて外に出ると、看守が戻っていく部屋に連れていかれた。 そこから、ドアを開け階段を上っていくと別世界のように黄金色の世界が広がっていた。
さすが、貴族の街に立つ建物だと思いながらも歩みは止められない。 歩いている人間もきらびやかな服装に紳士のような人ばかりだ。 そんな中を、厳重に鎖を付けられ歩かされるのはある意味見せしめでしかない。 異例なことらしく、どこからかクスクスと笑い声も聞こえてくる。
そうしていると、「フンッ」と鼻息を鳴らしながらある部屋の前で止まる男。
「……はいっていいよ。」
すると、中から爽やかな声が聞こえた。
「失礼します!!! オラ!!!」
ドアを開けドンッと背中を押され、部屋に入る。 すると、優雅に紅茶を嗜むノアがいた。 外の光が綺麗に差し込み、絵のような印象を受ける。
「……ゴドー。 ……乱暴に扱うのはよしてくれ。 彼は今回客人だ。」
「ハッ!! すいません!オラ!」
「もう下がっていいよ。 」
「……?! ですが、この者は……」
「なんだい……?」
「いえ……。 ただ、無礼を働く可能性が……。」
「……それぐらいならいいさ。 とりあえず、後にしてくれない?」
「……かしこまりました。 オラ。」
不服そうにゴドーと呼ばれた男はリサードを離すと、リサードをチラリと睨みつけそのまま部屋をあとにする。
「……………………………………。」
「……ごめんよ、リサード君。 彼はああいう奴なんだ。」
リサードはそれを聞いてから、やっと口を開く。
「……で、話はなんだよ。 」
ゴドーと呼ばれた男に散々どつかれたうえに、睨みつけられ不満を隠しきれないリサード。
「そうだね。 ……それなんだが、その前に……」
ノアはそう言うと1枚の紙を取り出し、リサードの前にゆらりと置く。
「……何だそれは。」
そう返すとノアはフフッと笑った。
「……話す前に君に決定事項を言っておこうと思ってね? コレはゴドーも他のみんなもまだ知らないんだけど……。」
リサードは体を寄せ、文字を読む。
「……釈放……報告書?」
そこには、釈放すると書いてあり下にリサードとウルグス、ユーシンの名前が書かれていた。
「そう! 君たちは今日を持って釈放さ。 ……良かったね!」
承認の欄にきっちりノアとサインがしてある。 確かに、きちんとしたものだ。 しかし、────────
胡散臭い……。
リサードは疑心暗鬼ながらも読み進める。 堅苦しくその理由が書き綴られているが、それを読み流し最後にたどり着く。 すると、そこにはこう書かれていた。
〝以上の理由により、リサード・ブルオスト、ウルグス・オリバード、ユーシン・ロックリバーの3名を釈放とし、神軍九隊の仮入隊員とする。〟
…………………………。
思考が停止する。
「……は?」
……仮入隊員?
「……こらこら、仮にも上司だぞ? リサード隊員?」
そう爽やかにちゃかすノア。 しかし、リサードは驚きと不満の入り混じった感情が渦巻き、それどころでは無かった。
神軍九隊。
ウルグス達から名前は聞いていた。 ディスタシア王国の警備隊、名目上はギルドに位置している。 ノアを神と崇め、神の力を宿す9人の隊長格から編成される特別部隊。 散々ウルグスから注意しろと言われていた奴らだが……。正直これはどうすればいいものなのだろうか。 …………普通に考えて入隊を蹴れる状況ではない。
だが、ひっかかることがある。
決定事項って言ってたよな……?
「……何が目的だよ。」
「……? 何がだい?」
とぼけたような顔でそう答える。 リサードはそれを見て「フゥ……。」とため息をつくと、質問を変えた。
「……聞き方が悪かった。 ……ただ、俺たちを入隊させる理由が聞きたかったんだ。」
無理やり入隊を蹴れない状況を作り出す意味がわからねえ……
「理由? それならそこに書いてあるだろ? 君たちが監獄の風紀を乱し、あろう事か脱獄の計画やらという噂も出ている……。 ……ただのそれに対する罰だよ。しつけっていうね。」
だが、リサードは目も合わせないまま問いかける。
「……とぼけんなよ。 それは建前だろ。……回りくどい理由をつけてまで、俺たち3人を入れたかったのは何でだ? 」
一気にノアの雰囲気が変わる。
「……それを君に答える義理は?」
「そんなもんは無い。 ただ、単純に気になっただけさ。 共有理念を持った方が、俺達も馴染みが早いと思ってな。」
「……へえ?」
ノアはそれを聴くとくすくすと笑う。 しかし、リサードには感じ取れていた。
ノアの気配がさっきとは打って変わり、威圧的であることに……
リサードは額から汗が垂れる。
「……とぼけてるのは君だろ? ……リサード・ブルオスト君? …………君の顔は入隊なんてクソくらえって顔してるからね。 そちらがそれで来るなら、益々(ますます)僕が教えることもな……」
「……何か動くんじゃないのか? 例えば……」
リサードは顔を上げ、会話を切り出した。
「……リリー・レイル。 やつは不死身だと聞いたが、倒し方があった。 しかし、アンタ達では出来ない方法だった。 そして、その方法に俺たちの力が必要になっている……。 なんて、できすぎか?」
少しの静寂。リサードはあらゆるこの国の情報からそれらしい過程を作り出していた。
それを聞き、上機嫌になるノア。
「……フフッ。 確かに出来すぎではあるけど、半分当たりで半分間違いってところかな……」
ノアは紅茶を置くと、ゆっくりと立ち上がり、リサードに近寄る。
「……その通り、僕達の今の目的はリリー・レイルを殺すことさ。 しかし、倒し方がわかったわけじゃない。……ただ、少し気になるのさ…………」
ノアはリサードの胸に指を突き立て睨みつける。
「……その君の中に渦巻く巨大な闇で、君はどう不死身に対して抗ってみせるのか……。 僕は気になるんだよ……。 氷の女王を倒したその力がね……。」
「……ミラとの戦いを何故アンタが知ってる。」
「ミラとは古い付き合いでね? あの国には彼女自身も知らない、パイプが僕にはある。 そうだなぁ……」
ノアはリサードの顎を持ち上げるこう言い放つ。
「……あの不死身のリリーを殺すとしたら……''喰う''……なんてどうだろう? ねぇ、リサード君?」
「……''喰う''……だと? アンタ何処まで俺の……ッッッ!!!」
バンッ───────────!!!
リサードがそう言いかけた時、後ろのドアが思い切り開く。
「……痛えよ!! もう少し丁重に扱ってくれないかな?!」
「………………………………………。」
振り返るとそこに居たのはウルグスとユーシンだった。 ユーシンは静かに佇み、それとは真反対のようにうるさいウルグス。
「……ッッッ!!! リサード?!」
「………………ッッッ?!」
「よぉ、遅かったな。」
すると、パンパンと2度手を鳴らすノア。
「……3人で感動の再開のところ申し訳ないんだけど、ちょっといいかな。」
そう言って、紙を2枚取り出し、ウルグスとユーシンに紙を送りだす。
だが、リサードはまだ聞いていない。
「……おい、待てよ! まだ話は……」
すると、口に指を立てる。
「今はこれ以上いうつもりは無いよ。 」
彼はそれだけ言うと、椅子に腰を下ろす。
「……は? 釈放?!」
「……神軍九隊……。」
「読み終わったようだね。 」
リサードと同じ報告書を読み終え、驚きを隠せないウルグスとユーシン。
「……これは決定事項。 君たちには承諾してもらわねばならない。 これを断るなんてことはできないからね。」
「……フン! そんなの答えは1つだ。」
「……ああ。」
リサードはウルグスとユーシンに目をやる。 だが、返答は意外なものだった。
ウルグスとユーシンはお互いに目配せをすると、静かに頭を下げた。
「ウルグス・オリバード……」
「……ユーシン・ロックリバー……」
「……そして、リサード・ブルオストは……」
「………………俺???」
そして、────────
「「……心より感謝し、その話をお受け致すぜ!」します。」
「は────────────?!」
ノアは目を伏せると、手を叩く。
「わかった。 じゃあ、今から君達に……」
「ちょっと待てよ!!! 」
リサードが身を乗り出す。
「何勝手に俺の名前を……!! それに、俺はこんな野郎の……ッッッ?!」
「……こんな野郎?」
どこからとも無く、4人以外の声が響く。
刹那。
ガハッ──────────
空気が……! 体が動かねえ……!
リサードは立ち上がったまま体が静止する。 呼吸ができない。 まるで無酸素状態の空間に来てしまったかのような衝撃が襲う。
死ぬ……ッッッ!
「……ジャンヌ。」
「ハッ……!!!」
その瞬間ふっと体が軽くなり、新鮮な空気が肺を満たす。 リサードは思わずその場に倒れ込み、空気を貪るように呼吸を繰り返す。ユーシンは急いでリサードに近寄り、呼吸を促す。
「ハァッ……ハッ……ハァッ……」
「大丈夫か……! リサード……。」
「勝手な行動は控えてねジャンヌ。 まだ、僕の客人だ。 」
「……ハ!」
すると、────────────
「てめえは……!おい……!!!」
喰いかかったのはウルグスだった。
「……ジャンヌって言ったか? 牢獄じゃアンタの話題でもちきりだったぜ……? 」
ジャンヌは敬礼したまま無視を貫いていたが、目は明らかにウルグスを睨みつけていた。
だが、怯むことなくウルグスは言い切る。
「家畜より醜い豚野郎だってな……!!!」
ジャンヌの額に青筋が浮かぶ。 その瞬間だった。
「…………………ジャンヌ。 」
ハッ────────。
ノアの一声。 沸騰寸前だったジャンヌとウルグスを一瞬で静める。
「……僕は言ったはずだよジャンヌ。 勝手な行動は控えろと……。」
「……申し訳ございません。 しかし、────────」
だが、────────
「"しかし"……だと……?」
「……ハ……アア……」
一気に場が凍る。 ノアの口調が一気に変わり、体に何倍もの重力がかかったように皆動けない。
「……ジャンヌ。 お前は頑張りすぎるが故に、行き過ぎるよ。」
「……ば……罰を与えくださいませ。ノア様……」
すると、ノアはにこりと笑いジャンヌの頬に手を触れる。
「……決めた……」
ジャンヌは目を閉じる。 そして、────────
「……この3人をお前の下につける。 それを教育して見せろ。 それがお前への罰だ。」
「な、なんと────────」
「返事は?」
「……かしこまりました。」
もはやその場で堂々と批判する気力はウルグスとユーシンにはなく項垂れる。
リサードはやっと呼吸が安定してきた頃であった。
「……この子達は今日から神軍九隊第6隊。 セト隊への配属だ。 」
「……かしこまりました。」
「……そういう理由だ。 囚人を何に使おうと僕の自由。 異言は生きて帰って来てからまた聞くとするよ? リサード君達……」
「……後悔すんじゃねえぞ!!!」
「……………………………………。」
「……ハハ……元気だなウルグスは……。」
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今回少し長めに書きました。 これから、少し長くしてみようかなと思っています。




