83話 ファーストネーム
前回の続きです! どうぞ!
「だから、何回言わせるんだ。 奴について言っちゃダメさ! 聞いてるのか?」
「……ん。 ああ、なんだっけ……?」
「……だから、何度言わせるんだリサード……!」
ディスタシア牢獄の中にウルグスの忙しない声が響く。 ジャラジャラとした鎖の音と、鉄格子の揺れる音がウルグスの心象を表していた。
「奴に何を吹き込まれたかは知らないが、行かない方がいい!!! ……何をされるかわかったもんじゃないだろう?!」
「……けどなぁ……」
「ハァ……本当に…………ったく……。」
リサードの乗り気でない返事にため息をつく。 頭を乱暴にガシガシとかき、苛立ちが見えていた。
「……あのなぁ。 この世界の法則を教えてやるよ? 」
「……お、おう。」
リサードがそう答えると、ウルグスはきちんと座り、ゆっくりとリサードを見据えた。
「……この大陸……、いや、この世界には関わってはいけない2種類の人間がいる。 1つは神に嫌われし者達っていう奴らでな……?」
そう言うと、リサードは答えた。
「……知ってる。 何でも悪いヤツら何だってな。 …………だけど、俺にはそう見えなかったけどな。 むしろ、伝説保持者の方がよっぽどヤバイと……」
そう言いかけたところで、ウルグスが口を開く。
「はぁ? お前それを知ってて言ってたのか???」
「ん……? それがどうかしたのか?」
「……お前さぁ……」
ウルグスがそう言いかけたところで、ユーシンが口を開いた。
「……お前がさっき話していた男。 ……ノアは伝説保持者だ。 それも、位階1位……、現最強のな。」
「────────────?!」
はぁ?! あの男がレジェンドホルダー?!
いやいや、待て。 と言うか今位階1位って……。
リサードが頭を抱えているのを見ると、ウルグスが話し始める。
「……伝説保持者には、順位が付けられているのさ。 数いる伝説保持者の中でも上位6人を英雄クラスと呼び、彼はその中のトップなのさ。 」
そういや、マリンに昔聞いたな……。 私のお姉ちゃんは英雄クラスで、ジュードはマスタークラス。
クラス分けされてるってのはもしかして、ジュードも固有魔法を持っているのか……?
いや、今は関係ないか。
それより────────
ミラでさえあの強さだったのに、その上が……。
そうは見えなかったんだけどな……。
一体どんな固有魔法を……
「……固有魔法……。 …………ん?」
「どうした、リサード?」
固有魔法……。 どこかで最近聞いたような……
…………………………………………………………………………………
【「戦神……アルカイオス。 それが、君の固有魔法じゃ。」】
「固有魔法って何だああああああ!!!」
……………………………………………………………………………………………
「ブフォッッッ!!!」
「どうした、リサード!!!」
「…………?!」
マジかよ……。 何でわからなかったんだ……。
固有魔法。おっさんは確かに俺に対して言っていた……。
「な、なぁ!!! ウルグス!!!」
「……は?! ど、どうした?」
「あ、あのさ。 レジェンドホルダーやタブーリストの奴らは生き返れたりするのか……?」
俺がもし固有魔法を扱えるのだとしたら、俺はそれで生き返ったことになる……。
「……生き返る……か……。 生き''返る''能力のことは知らないが、生き''続ける''という能力なら知ってるぜ。」
「……生き続ける……???」
「……要は不死身って事だな。」
「そんな奴がいるのか?!」
すると、またもやユーシンが口を開く。
「迷宮の死神リリー・レイル。 ……今回は17層だったか?」
「…………おい、お前さっきからいい所ばっかり取るなよ!」
「…………………………。」
「リリー・レイル……。 そいつもレジェンドホルダーなのか……?」
「………………………………。」
ウルグスはユーシンが話さないのを確認し、口を開く。
「いや、リリーは神に嫌われし者達の1人だ。 だが、コイツもコイツで最凶と呼ばれる男だ。 そして、リサード。 お前は知ってか知らずか、この2人は…」
「……兄弟なのさ。 そして、2人ともこの国に居る、最強の悪と最強の善ってことだな。」
「────────兄弟?! この国?!」
リサードは驚きを隠せない。
ノアの他にもこの国に固有魔法を持つ奴がいる。 しかも、話してる感じからして敵対グループだな……。
でも、ノア・アルテミスとリリー・レイルって名前が全然違う……? なにか理由が……???
すると、ウルグスが頬を膨らませる。
「お前さっきからいい所ばっかり取るんじゃねーよ?! 俺が教えてようとしてたのに!!!」
「…………なんか勿体ぶってるのが鼻につく。」
「……ンだとォ?!」
「おいおい喧嘩するなよ……。 俺はまだ気になることが沢山あるんだ。 」
いま重要なことを言っている気がする。 知らない街で行動するにおいて情報は重要だ。それによって行動パターンも変わってくる。
そして、何よりこの街の情報を仕入れて一番重要なこと。
それはやはりクロエの情報を引き出す鍵だということ。
オボロから聞いた情報を元にここにたどり着いた。 ノア・アルテミス。 確実にやつは知っている。奴と話す前に何かここで情報を得ておきたい。
「お前、リサードの前でカッコつけようとするんじゃねぇよ! 俺だってなぁ?」
「……俺はそんなこと思って言ったわけじゃない。 そんな理由で突っかかるな。」
「……あのよぉ。お2人さ────────」
バンッッッ────────────────
「「「────────────?!」」」
扉が勢いよく開く音が空間を支配する。 ところどころポツポツとしていた話し声もピタッと止まる。 それもそのはず、外の扉から入ってくるのは看守しかいない。
ドシッドシッ。
大きな足音はそのまま長い廊下を歩き、徐々に近づいてくる。 そして、リサードの牢獄の前で止まった。
だが、────────────
ん? 看守じゃない……?
「おい。」
「……、はい?」
はちきれんばかりの筋肉のせいで白い制服がパツパツに張り詰めている、2mはくだらない大男。彼はリサードを見下ろすと鉄格子に手をかけ、話しかけてきた。
「貴様がリサード・ブルオストで間違いないか?」
「……あ、ああ。」
バァン────────!!!
牢獄が大きく揺れそうな程の衝撃。
「……ッッッ!!!」
「ああ??! 返事はハイだろうがゴミ野郎がァ!!! オラ!!!」
大男は鉄格子を思い切り、殴りつける。 おいおい、なんだこいつ。 ……鉄格子曲がってんぞ……。
「……お前に話がある。 拒否権はねえ! 付いてこいゴミ野郎。 わかったか???」
リサードは直感的にノア・アルテミス関連だと感づく。 思ったより早く来たな……。
すると、リサードは意を決したように立ち上がり、心配そうに見つめるウルグスとユーシンに目配せをする。
「はい。」
「……よし。 じゃあ、出てこいゴミボケアホ。 暴れたらこの場で公開処刑してやるからな。」
大男はそう言うと、牢のカギを開け、リサードの鎖をがっしりと持つ。
リサードはウルグスとユーシンに、心配するなと言うように合図を送る。
「ホラ、ボサっと歩くんじゃねえ。 うす汚ねえ白頭が。 ハッ倒すぞ!」
そう言い両手両足の鎖に加え、首輪をつけると厳重体制で引っ張られるリサード。
「……はい。」
ここはまだ耐える。 必ずノアという男の話を聞かなきゃならない。 その為に、コイツに逆らって目立つのは避けてたい。
とは思いつつも……
全て終わったら一発殴る。
リサードは静かに怒りを灯し、歩き出した。
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やっぱ一発じゃ足りねぇかな!!!




