79話 白狼コースター
前回の続きです!どうぞ!
「おっ……と……う……。」
爆音が響き渡り、静寂が訪れるとロットの声だけが空に残った。 気づくと辺りは明るくなり始め、ぼんやりと青く光る。
オボロは動かず、ただその一点を見つめている。 ロットの声を最後にまた静けさが戻り始める。
「………………………………?」
────────────。
雨。
小雨がパサパサと降り始め、3人を濡らす。
すると、オボロはゆっくりと剣を腰に指し振り返る。 気を失っているロットに近寄り、インベントリを開く。
「…………………………。」
包帯を取り出し、慣れた手つきでロットの腕を巻くと魔法を発動する。
闇系魔法────────
「クローズ・ペイン。」
白い闇がロットの片腕にまとわりつき、止血を開始する。 痛みを和らげ、ロットの呼吸がだんだんと安定する。
「……闇系の……回復魔法……?」
マリンがそう呟くと、オボロはそっと首を振る。
「……違う。 だが、使いようによってはこのように緩和できる。 」
再度インベントリを開くと、取り出したのは回復薬。
「……腕は。 治らない……よね。」
緑色の液体をロットの口にゆっくりと流し込む。だが、オボロは振り向かない。
「……ああ。 きっと、コイツは俺を一生恨むだろうな。」
「……なんで腕を切り落としたの? ……少しやりすぎに見えたよ。 わざわざお父さんを目の前で殺すことも……。」
「俺も……」
オボロは下を向く。
「俺も……結局はガキだったって話だ。」
オボロは一瞬行動を止めるが、ロットを安静に寝かせると立ち上がる。
マリンが連れ去られたのは元を返せば、俺が目を離したのが原因だった。 奴らは人を食い、そして魔獣を食す人ならざるもの……。
とはいえ、生きていくため奴らは食していた。 かく言う俺は、マリンを危険な目に合わせてしまった怒りに呑まれて……。
何が……正しさだ。
「……オボロ。」
マリンは足に力を入れ、ゆっくりと近づきオボロの背中に頭をつける。
「……オボロが前話してくれたよね。 この世に正しい事なんか無い、正義はただの自分の価値観なんだって。 私……その時はわからなかったけど、今ならわかるよ……」
「……正義は価値観……か……。 ハッ……。 本当に俺は自分勝手なっ……?!」
オボロの口をマリンが手で塞ぐ。
「……オボロ。」
「その言葉は、あなたの正義を信じた人に失礼だよ。」
そう言うと、そっと手が離れる。
くそ……
俺は何やってる……
オボロは何もかも見透かされたような気持ちになる。
「……………馬鹿な女だなお前は。」
「馬鹿な男に言われても、痛くも痒くもないけど?」
「……どけ。よりかかるな。」
「少し疲れてるんだからいいでしょ?」
「……チッ。」
「ふふっ。」
マリンはオボロに寄り添うように体を預ける。 頭をうずめる彼女にグリグリとされるがままにされるオボロ。
だが、────────
「オボロ……。」
じゃれてきたかと思えば、しんみりとした空気になる。 オボロは心配そうにマリンを見つめる。
「……怖かったよ。 助けてくれてありがとう。 ……大好き。」
「────────ッッッ!!!」
チィっ!!!
「キャッっ!」
マリンを抱きしめる。
「この……!!」
オボロは閉ざしていた心の奥の本音をぶちまける。
「この馬鹿野郎が!心配かけやがって!!! お前が……無事でよかった……!!!!! 本当の本当に……生きていてくれて……間に合って、よがったあ!!!!!」
マリンは力いっぱい抱きしめられる。大きい声と強い力。 そして、精一杯抑えられた小さな泣き声。
女の子を抱きしめる力加減じゃない……。
しかし、
この時だけはこの力強さがマリンには心地よかった。
「……痛いよバカ。」
「…………………………っぐ。」
全くこの人は……
その時だった────────
「……ふわっ────────?!」
目の前に大きな白狼。 トラックのようなその体がマリンの目の前に現れる。
そして、────────
『ゴアアアアァァァッッッ!!!』
「きゃーーーーッッッ!!!」
「……………………………っぐぅ。」
「………………………………………。」
マリン、オボロ、ロットは白狼に咥えられ、そのまま重力に逆らい壁を登っていく。
壁が白狼に蹴られる度に、削られ崩れていくが、白狼は諸共せずジェットコースターの様な早さでかけ登る。
時には反対側に飛び移り、魔鳥を避け、崩れては飛び移りを繰り返し、アトラクションなんてものではない。
「え?! え?!……ッッッオボロ!!!?? 」
「…………ぐぅっ。 ありがとう……マリン……うぐっ。」
「いつまで泣いてんのよこの馬鹿!!!」
しけった空気が消え、地上の空気が肺に入ってくる。
地上が近い────────!
『グルルルオオオオォォォッッッ!!!』
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」
「……うぐっ。 馬鹿って言われたぁ……。」
そのままの勢いで地上を飛び出し、空を飛ぶ。
マリンは恐る恐る目を開き、ある光景を目にする。
着いた……
迷宮都市……
マリンは声を上げる。
「……ノクス・ラビリンス!!!」
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誤字があったら気軽に教えてもらえると助かります。 後々また見直そうと思います。




