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78話 白い烏は命を屠る


前回の続きです!どうぞ!



ダダスが(おの)を振る。 もうその姿は人間ではない。 紫色の(よど)んだオーラに、理性の飛びかけた鋭い目つき。

片膝(かたひざ)をついているオボロへ、大きな斧が振り下ろされる。



だが、────────



「……これだけだな。」



オボロはそう意味深な発言をポツリと残した。



その瞬間だった。



────────────ゾクッッッ



朦朧(もうろう)とした中見つめるマリン、息子、そしてダダスの背中に突然戦慄(せんりつ)が走る。



そして、────────



その斧がオボロを(とら)えることは無かった。



圧倒的(あっとうてき)に押され続けていた戦況から誰がこの現状を理解(りかい)出来ただろう。



いや……



オボロを知るものであれば、先ほどの戦いぶりは少し無理があったかもしれない。



何故なら、彼は。



世にも名高き犯罪者(リスター)



オボロ・ヒデトラであるのだから。



マリンはオボロの姿を捉え続ける。


膝をついたオボロは、先ほどとは打って変わり、丁寧にユースティティアを構えダダスに無慈悲(むじひ)な目を配る。

片膝をついたまま、居合(いあい)のような構え。 立ち上がることもなく、そのまま。



────────────────。



ただの水平(すいへい)切り。



だが、その水平切りはダダスの左腕を簡単に切り落とした。



「グオアアアアアッッッ!!!」



雄叫(おたけ)びをあげ、斧を落とすダダス。左腕を抑え、地に両膝をつく。

そんな姿をオボロは気にもせずゆっくりと立ち上がり、剣についた血を振り落とすと、また丁寧(ていねい)に振り上げる。



そして、────────────



「……ギャアオオオオオオオオオオオッッッ!!! 貴様ァァァァァァッッッ!!!」



ただ剣を振り下ろし、右腕と右足を巻き添えに切り落とす。

ダダスは左足を残し、四肢(しし)が切り落とされ地べたに()いつくばる。 左足をカクカクと動かそうとするが、もうその姿に脅威(きょうい)はなく、(あわ)れみ。


オボロの表情は見えない。 だが、静かに剣を振り下ろす(さま)は、恐怖を周りに刻みつけた。



「……ウゴォオ……治らねぇ……うおげッッッ……」



「…………そうか。 」



オボロはそれだけ告げる。



「……切れ味がッッッ! 動きが違うぅ。 何でああ……」



「おっとうーーーーーーー!ッッッ!!」



すると、息子がダダスの元へ駆け寄ろうとし、手を伸ばす。



「……バカ者!!!来るなぁァァァッッッ! 」



ダダスがそう叫ぶ。



しかし、もうその声は遅かった……





「……え……。」



ブシュッ。


息子の目の前がキラリと光ったかと思った時にはもうことは終わっていた。



呆然(ぼうぜん)と立ち尽くす息子の(うで)は体と離れ、血を吹き出し、ただの肉塊(にくかい)になる。



「……オボ……ロ……。。」




「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」




「……ロットォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!」




マリンは言葉を失う。


ロットと呼ばれた息子はその場に倒れ込み、ヒクヒクと体を動かす。 ダダスは左足だけのまま、体を無理やりに動かしロットに近づく。



「……ロット……と言うのか。」



オボロはそれだけ言うと、まさに今ロットの腕を切り落としたユースティティアの血を振り落とす。



「……ロット!!! ロットォォォォ!!!」



ダダスは必死にロットに近づこうとする。 しかし、────────



「……待て。」



ザクッ。



ダダスの目の前。ほんの数センチに、白く(つや)やかな剣が姿を現す。

ダダスは首だけを使い、オボロを(にら)みつける。



「……貴様ァ! 何故だァ?! なぜ、ロットまでをも!! 関係ない……。 ロットはァァ……」



そこまで言いかけた時だった。



「黙れ。 それを決めるのは俺だ。」



ズウゥゥゥ────────────。



空気が(なまり)のように重くなる。 分厚く視界を歪めるような殺気(さっき)が空気を飲み込む。

ダダスは「フグっ……フぅっ……」と嗚咽(おえつ)を混じらせる。



「……今から俺の質問に答えろ。 その答えによっては命まではとらない。」



ダダスはオボロを睨みつけ、答えない。 それを、オボロはそれを承諾(しょうだく)と取る。



「……ロットに魔獣(まじゅう)を食わせたことはあるか……?」



「……ま、魔獣……?」



「正直に答えろ。 嘘を付けば殺す。」



「………………………………。」



ダダスは少し落ち着きを取り戻し、真剣な表情を見せる。



「まだ……ねぇだ。」



「……本当か?」



「……人間だけだ。 魔獣は食わせたことねぇ。 」



「……そうか。」



オボロはそう言うと、目をつぶる。


闇系絶技────────


ユースティティアに白い闇がまとわりつき、(うごめ)くように空気を分散する。



「息子になにか言い残すことはあるか……?」



すると、────────



「……俺は……やっぱり、死ぬだたか……? 息子は生かしてくれるだたか?」



「……………………………………。」



何も答えないオボロ。 だが、その沈黙と目は、肯定(こうてい)を思わせるにはあまりにも充分。 ダダスは全てを悟り、息を吐いた。



「……そ、そうだた……か……。」



ダダスは体を(よじ)らせ、血を流し倒れ込む、息子に目をやる。



「……いい父ちゃんじゃなかったけんども……。 俺は幸せもんだったや……。 なぁ……ロット……。」



オボロは振りかざす。



「……いつかみんなを認めさせるようなかっこいい()になってだだぁ……?」



ダダスは絞り出し、涙と鼻水を流した。

オボロの剣から(あふ)れる白い闇が形を成す。



さらばだダダス。



白烏(しろからす)……。」



一閃(いっせん)──────────────────。



解き放たれた白い猛鳥(もうちょう)は、その横たわる生命を、最後までくらい尽くした……。



────────────────────────────────────




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