76話 王の才と絶望の淵で
すいません。 体調不良で遅れました。 前回の続きですどうぞ!!
「作戦はわかりましたか? 」
「えさねえがなにかいってる。」
薄暗く空気の悪い部屋。 いや、家! マリンは怒りとテンションに任せ、2人に作戦を説明する。
作戦は簡単なものだ。 マリンの残りの魔力を使い、父親の力を増幅させる。 この父親はいつも無傷で帰ってくるため、何か戦い方を心得ているのだろうという憶測でしかないのだが……。
マリンが魔力でサポートすればいい戦いはできるはず……。
万が一バケモノに負ければ、自分も危ないし、何よりここから出る手立てがなくなる。 それを、踏まえても魔力がある程度残っている今仕掛けた方が勝ち目があるはずだ。
「……魔力。 ……分けてくれるだたか?」
「えぇ!」
アンタ達に襲われても困るしね! 全部は無理だけど!
父親はその返事を受け、グッと立ち上がるとマリンに近づく。
「……え、何?」
「……早く分けてだ。 早く。」
「ちょっとちょっと……。 もう夜だよ? しかも、いつも昼間に……。」
マリンがそう言うと、父親は首を横に振る。
「いいやぁ。 やつを倒すなら、夜の方がいいだ。 夜ならおいたちの方が動きやすいんし、いつくるかわからねえだ。」
そう言ってニヤリと笑い、手を差し出す父親。 急な展開に主導権を奪われそうになる。
いや、若干奪われつつある。
いや、奪われてる……。
「……そ、そういうことなら……。魔法の系統は何?」
マリンは父親の手に人差し指をのせる。
「………………………………闇系だぁよ。」
「闇系……? 」
「それより、早くお願いするだよー!!!」
「ヒッッ……!!!」
父親に肩をガシッと掴まれるマリン。
「わ、わかったから! や、闇系ね……!!!」
変形魔法────────
「ダーク・シェア・フォース!」
「いいだよぉ……。」
闇系に変換された魔力が、父親に流れ込む。 父親はプルプルと体を揺らせながら、暗黒色の魔力を取り入れていく。
「ああ……これだぁよ。」
「……ん。 結構魔力入るわね……。」
マリンは魔力を指先から体に流し込んでいる途中。
まさに途中だった。
魔力を分け当たるという行為は、魔力値の隙間に同系統の魔力をそそぎいれる作業。 つまり、魔力値などを把握しなければ、できない。
父親の魔力値を覗くマリン。
すると、────────
「……え……。」
マリンは絶句する。
闇の魔力を分け与え、吸収する父親。 しかし、この男の魔力は……。
呪……
────────────。
「うッッッ……!!!」
「……見ただな?」
この考えにたどり着いた時にはもう遅かった。 父親の手はマリンの首を掴み、顔を近づけていた。 魔力の受け渡しはもう大方完了しており、父親の体も心なしか筋肉で膨張しているように見えた。
「あ、アンタ……何者……」
「もっと危機感ってやつを、身に付けえたほうがいいだな。 これから、お前さんは死ぬ。 もう少し生かしてからの方が良かったのに……。 まあ、もういいでしょうよぉ。」
余裕の笑みを浮かべ、そう答える父親。
「……ッッッく! 調子に……」
そこで、魔力を引き出そうとするマリン。 しかし、────────
「………ごふッッッ!!!」
メキメキという音ともに、大きな鉄拳がマリンの腹にくい込む。 体は吹き飛ばされ、壁に体を打ち付ける。一気に全身から力が抜け、体は酸素を欲するだけの機械のように呼吸を求める。 父親は薄気味悪い笑顔を浮かべ、1歩1歩ゆっくり近づいていた。
マリンは一瞬で飛びそうになる意識をなんとか鎖につけながら……しかしあまりの出来事に頭が働いていないのも事実だった。
呪系……魔法……
その言葉が頭に浮かんだ途端、頭が真っ白になる。 本来、人間には風や炎などの自然系の魔力しか移らないとされている。 その中でも光と闇は亜種のようなもので、なかなか使い手は珍しいのだが……。
マリンは空気をゆっくり肺に入れ、徐々にならす。
ただ、それ以外にたった1つ。 例外というものが存在する。 魔力や魔法は魔獣の持つ強力な力に対抗するために与えられた人間の武器。
しかし、時に────
マリンは息を呑む。
「……魔獣にしか……扱えない魔力。」
つい、声に出してしまうマリン。
魔獣の中でも上級以上の魔獣しか使えない魔力を、人間が使っている。 しかも、こんなオヤジが……。
「もう遅いだよぉ。 それがわかっても、対策はできんだべさ。」
「……ま、ま、まぁ……。」
「あぁんだ……?」
マリンは声を引き絞る。
「……魔獣を食べたの……ね……。」
父親の顔は歪んだ。 そして、同時にマリンの体は勝てないことを悟ってしまっていた。
魔獣を食べただけでは、呪系魔法を扱うことは出来ない。 普通は……。
ただ、異質なものであるならば話は別かもしれない。 全ての属性の魔法に対し、有効な呪属性。 魔獣の原動力であり、厳密に魔法ではないもの。
コレを、扱う才能を彼女は恐る恐る口にした。
「……王の才……。」
魔獣の中でも稀有な存在しか持つことの出来ない力。
まさかそれが、この父親に宿っている……。
マリンの呼吸器官は殴られた衝撃からなんとか復帰していた。 しかし、一向に呼吸は浅くなり体が悲鳴をあげる。
その正体はもうわかっていた。
恐怖。。。
マリンの体は、未知なる魔力の感知に既になす術を失っていた……。
父親は歯のかけた笑顔を見せながら、マリンに近づく。
「本当にありがとうだた。 お前さんのおかげでバケモノも倒せそうだあ。 まあ、そのままでも時間の問題だったんだけんどもなあ!」
「……ハァ…! ……ハァ。 」
「おい、ボンクレェ! 今日はご馳走だよお! 鍋に火つけてくんにか?」
「おっとう!!! ……やっと''えさ''
ねえをくえるな!!!」
マリンは状態を起こし、目を開ける。 しかし、視界はかすみ、体に力が入らない。
「ゆっくりしてくだせえ?」
「ッッッ!!!」
マリンは考える。 家を出て戦うほうがいいか? いや、それだけは避けねばならない。 霧の濃い迷宮のような外に出れば、恐らく勝ち目は無くなる。
いや……もう……
マリンは諦めていた。
しかし、────────
テコテコと歩く息子の近く。 家の玄関が爆発を起こす。
「んああ?!」
「うわあああ、おっとうおぉぉ!!!」
「ッッッ……!!!」
────────────────。
家の一角が崩壊し、溜まりに溜まったホコリが爆散させると、視界を包む。
父親は振り返り、その口角をグニャりと上げた。
「バケモノめえ。 ここを嗅ぎつけただァよ。」
マリンは目を閉じる。
ここで……バケモノまで来たの……。
虚無が体を縛る。
逃れられ様のない絶望が身を染め上げ、生命活動を放棄しかけたその時だった。
「────────?!」
マリンはその絶望の対象に……映ったその魔獣の姿は何故かマリンの心に恐怖よりも安心を与えた。
白く大きな獣。 大きな牙に、荒い呼吸音。
マリンはその姿に、白く気高き狼を見た。
そしてその背中に……
「……ア……アアア……!!!」
マリンはその声にならざる声が漏れでる。
「知り合いだか? 」
その白い狼の背中からその男は飛び降りると、漆黒の服をヒラリと舞わせ、白く光る剣を取り出した。
マリンは涙で視界が埋まる。
こういう時、人はなんとこの場を表現するのだろう……。
マリンの呼吸がやっと落ち着きを取り戻そうと動き始める。
おかえり……なさい……。
そして、その男は静かに一言だけ告げた。
「人を食うは人に在らず……。」
その男の表情は怒りに満ちていた。
【「……お前の罪を清算してやる……。」】
────────────────────────────────────
寝ます!!!




