72話 初めまして、おっさん
久しぶりのリサードです! どうぞ!
闇、闇、闇。
果てしなく遠い闇の中。 瞼を閉じていても開けていても景色が変わらず、深淵があると言うならこういうものをいうのだろうと思ってしまう。
その前も後ろもわからないような中を、ひたすら歩く青年。
気が狂いそうだ……。
青年はそう思いながらも歩くだけだった。 様々な疑問が頭の中に溢れ出す。
俺はいつまでここにいるのだろうか……?
あまりにも暗闇にいて、時間感覚が狂ってしまっている。 眠ってはいないが、まるで何日も闇の中にいたような、居なかったような感覚に陥る。
頭が回らない。 目も開いているのかもわからなってきている。
……と言うか……。
今自分に目はあるのか? 脳はあるのか……?
リサードは体を確かめるように触る。 触った感触はあるが……。
死んだよな……俺……?
なんで触れんだ……?
そして、これを考えているということは俺に脳がある……と言ってもいいのか?と考え始めるともうキリが無い。
頭がこんがらがってきた……。
「ハァーーーー!!! もうわかんねーーー!!」
真っ暗な地面に身をゆだね、倒れ込むリサード。
大きな声でそう叫んでみるが、暗闇に吸収され、反響も聞こえない。歩いてみても思ったが、すごい大きな空間であることには間違いない。
「……俺一生このままなのかな……。」
虚しさに押しつぶされそうになる。 そう考えると、涙が出そうだ。
「……ッ嫌だ!!! 嫌だ嫌だ嫌だッッッ!!! どこだここはーーーーッッッ!!!」
わざとらしく、ジタバタと暴れる。しかし、逆に虚しさは増すだけで、少し経つとピタッと大の字で止まった。
「ふふ……。……ははは」
もう笑うしかねえや……。 人間ってどうしようもなくなると笑うって言うけど、こういう事か。
「……フーハッハッハ!!! フハハハハハハ!!!」
もうどうにでもなれ。 いや、ここからどうにかなれるなら、どうにかなってくれや。
「はははははははは!!! あはははははははははは!!! あは……」
その時だった────────────
「うッッッッッッぐあああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!」
強烈な光。
ずーっと暗闇の中にいたリサードには、何よりも強い刺激。
瞼を閉じてうずくまっていても尚、瞼の裏に太陽をつけられ直で浴びせられたような激痛!
思わず見悶える。
すると、────────────
「君もうちょっと静かにできないの……?」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……は……?」
優しそうな老人の声が光の中心から聞こえ、思わず正気に戻るリサード。
「……え? 誰だよ……? おっさん?! え……?!」
光を片腕で抑えながらも、その声が聞こえた光の方へ、手探りで近づいていく。
すると、方角は間違っていないのだろうすぐ近くで声がした。
「君、おっさんってワシ初めてじゃろ。 ……普通に失礼やな君。 」
「……何かめちゃくちゃ流暢に喋るじゃねえか。」
「……いや、ワシはロボットかなんかだと思われてたのかな?!……て言うか本当にちょいちょい失礼だな! もしかして馬鹿にしてる?」
「いや、ちょっと待て。 そんなマシンガンみたいにツッこまれてもわからねえから少し落ち着けよ爺さん。」
「いや、むしろ何で君そんな落ち着いてるの?!」
リサードの目も少し光に慣れてきたのか、痛みが引き徐々に視界が見えてくる。
光の中に……人影がある……。
はっきりとは見えないが、髭の長い杖をついたおじいさん。 白く蓄えた髭は胸のあたりまで伸びており、後方が光っているのがわかる。
「……うーん。 」
更に、少し経つとなんとか目が慣れてきたのか先程よりくっきり見えるようになってきた。 しかし、第一印象は……
「……何かすげえ詐欺に引っかかりそうそうなおじいさんって感じだな。」
「……やっぱり君助けない方がよかったかな……。」
「え?! 助けてくれたんですか?!」
リサードの目が光る。
「……なんと言うか、優しそうってことです! それに、その……あの……ヒゲがカッコイイっすね! 杖もボロ……味があるというか……。あと、ヒゲが白くて……その……」
「……いや、無理に褒められても、傷つけられるだけって気づいてる? あと、ワシの褒めるところ杖とヒゲしかないの……? てか、普通ありがとうございます! ……とかじゃない?」
「ああ……」
なんて言うかこの人……
「うぜえって思ったでしょ!?」
「……なんでわかったんスカ?!」
「君は鏡で、自分がどれ位顔に出るか調べといた方がいいよ。 て言うか認めるんかい!!!」
大きな身振りでそうツッコミを入れる爺さん。 杖をあげたり、手をハタハタさせたりと頑張っている。
「何か元気ハツラツでいいですよ。」
「……なんで少し上から目線なの……。」
そう言うと、少し元気がなくなるおじいさん。 めんどくさいが、悪い人では無さそうだ。
「……ところであなたは?」
「……それも今なんだ……。 まあ、いいけど……。 と、とりあえず気を取り直して……」
うおっホン!と咳払いをすると、コンコンと杖で2回地面を叩いた。
すると、神妙な空気が漂い始める。
「ワシの名はアルカイオス。 ある男に作られた存在……と言うのが正しいかの……人間でも神でもない。 ましてや、ロボットでも無い……」
老人は懐かしむような表情をした後、リサードにほほ笑みかける。
「まあ、だからと言って別に君達に危害を加える存在でもない。 ……今のところは……の……。」
「………………………………ハァ。」
何か長くなりそうだなとは思うものの、口には出さずとりあえず相打ちを打つリサード。
「ホッホッホ。」と笑うと、顎に手を当てわざとらしく占っているようなポーズをとる。
いちいちうぜえ……
「ふむふむ。名前はリサード・ブルオスト。 年齢は19。 そろそろ、20歳かの? 親はおらず孤児で育ち、様々な出会いを経験し……彼女を助けるために大陸を出てきたものの、ゲイ・ボルグで命を落とした。……じゃろ?」
先程まで他人事のように聞いていたリサードだが、驚いた様子でアルカイオスに聞き返す。
「おい……なんでそんなことまで知ってる……。占いなんかじゃねぇだろ……。」
アルカイオスは笑う。
「ホホ。 そうじゃ。 なんせずっと君の中にいたんじゃからな……。 アビス君やヒュドラ君が入ってくるずーっと前から。 だから、何でもお見通しじゃ。」
「……はぁ? ……なにいって???」
アルカイオスはそんなリサードを待つわけでもなく続ける。
「……ワシらは受け継がれる者。 適正者が生まれれば、その子の中に宿り、その子の糧ともなれば呪いともなる。 」
「……??? あの……?」
全く思考が追いついてません。 という顔をしているリサードを見て、頭を掻く。
いやはや……
「いやー、どうも言葉であれこれ説明しようとすると難しいもんじゃなぁ。 ……まあ、しょうがないの。 君が理解するのは後でいい。 君を生き返らせれば、いずれ知ることじゃ。」
「……生き返らせる? 何言って…… お、おい、ちょ、何して……」
アルカイオスはそう言って、リサードの手をとる。
その瞬間、強烈な光が闇を切り裂きリサードの体に流れ込んだ。
アルカイオスの手から流れ出た光はリサードを満たし、飲み込んでいく。 纏わり、交差し、体がもみくちゃにされる。 激しい光の急流に体を取られる。
リサードはもみくちゃにされながらも、力を振り絞り光の中から顔を出す。
「ちょ! アルカイオス!!! 待てよ! いずれ知るって何だよ!!! おい!ヒントぐらいよこせヒント!!!」
「はーん……。ヒントかのぅ……。……よかろ。」
アルカイオスはヒゲを片手でヒゲを触りながら、一言だけ答えた。
【「……戦神アルカイオス。 それが君の固有魔法じゃ。 」】
固有魔法?!
固有魔法って……
「……なんじゃそりゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」
「……そうか。まだ知らんかったか……ホホ。」
「……覚えとけよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」
それを最後にリサードは光の中に
飲み込まれていく。激しくそして苦しい。
しかし、何故だろうか。 その光はどこかそ懐かしくもあり、どこか狂気に満ちている……。 その感覚を最後に彼の意識は消えていった。
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こういうおじさん、いそうでいない説!




