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71話 物語は動き出す。 何度でも……


前回の続きです!どうぞ!




「お姉ちゃ……ん……。」



「……マリン?!」



通路を渡りミラの部屋を開けると、美しい黒長髪の女騎士(おんなきし)がそう呼ぶ。



「ネロ……。 」



「……何しに来たの……?」



マリンがそう言い近寄ると、ジリっと後ろに下がりピリッとした空気が流れる。

しかし、────────



「……いい。 通せ……。」



「ミラ様……!」



(りん)としてはいるものの、どこか弱々しさを感じる声がネロの後ろから届く。

そうして、スッと布団が動く。


この声……


マリンは驚きを隠せなかった。



「……お姉ちゃんどうしたの?!」



ベッドに入り、横になっているミラ。 実の姉妹であるマリンですらそんなミラの姿は珍しい。 いつも空気を支配するような声も覇気(はき)がない。


ゆっくりベッドから起き上がろうとするミラ。



「……で? 何か用か?」



「……ッッッ。」



マリンは咄嗟(とっさ)に声が出なかった。


ミラの腹部に巻かれた包帯、そして頭。 毛布がかぶさっており下半身はわからないが、どれも軽傷とは言い難く驚きが出てしまっていた。



「お姉ちゃんが勝ったんだよね……?」



「────────?!」



ハッ────────


マリンは自分で口を抑える。

ついでてしまった言葉、ミラの怪我(けが)を見ての率直な思いがマリンの口から(こぼ)れる。



「……ッ違う! えっと、聞きたいことがあって! リサードは……」



そう言って、慌てるマリン。

ミラは少し驚いたような表情を見せた。



「……? マリン、お前はリサードに会っていないのか?」



「……ッえ? ……会ってないよ。 だって、……。」



マリンは頭を下げ、ついユースティティアの話を思い出してしまう。

しかし、それに対しミラはさらに不思議そうな顔を見せた。



「……? 何故だ? 彼はお前達の仲間なのであろう? ここに来たのも、ギルド脱退の……。」



「……??? お姉ちゃんは何言って……?」



2人の話が噛み合っていないことに気づくマリン。


え……?



「お姉ちゃん……。 ちょっと、質問していい?」



「……何だ?」



マリンは思い切り深呼吸をし、覚悟を決める。

間違っていても構わない。 しかし、この違和感は……。



「リサードとお姉ちゃん。 どっちが勝ったの……?」



「………ッッッ。」



直接的すぎる言い方だが、これより誤解を生まない聞き方も存在しない。

ネロは直接的すぎる言い方に、驚きを隠せていないようだったが、ミラはそれほど動揺していないようだった。


やっぱりお姉ちゃんだよね……。


マリンは特別驚きや怒りを見せないミラを見て、そう考えた。

しかし、────────



「……私の負けだよ。 完膚(かんぷ)無きまでに……な。」



「────────────?!」


マリンの考えがバッサリと斬られる。


え? え?


ちょっと待って?!


マリンはグルグルとまわる思考回路を、必死に落ち着かせる。


あのお姉ちゃんが負けた? 有り得ない!! そんな……。 いや、そこじゃない! リサードはお姉ちゃんに勝っていた? ……けど、じゃあ何故消えた??! なぜ、アビスだけ出てきた?!

リサードは買った後アビスとリンクを切った? なんで? と言うかなぜ勝ったならば出てこない? 事故? 故意?


マリンの頭の中がぐちゃぐちゃになる。

いや、でもじゃあ何故自分でそういう質問をした? 何かそう感じざるを得ない何かを感じ取ったのか? でも、それは何だ?


その様子を見ていたネロが、マリンに近寄る。



「……どうしたマリン?」



マリンにそう言って近寄ろうとすると────────



「待ってッッッ!!!」



その声に動きを止めるネロ。 マリンは頭を抱え、ブツブツと思考を整頓(せいとん)する。


わからない。 話が繋がっているようで繋がっていないような。 何もかも情報が足りておらず、仮説すら……


マリンがそれでも何かを見落としていないかと思考していると、後ろのドアが開かれた。



「ミラ様ッッッ!!! 」



「……無礼者(ぶれいもの)! ノックぐらいしなさい!」



慌てて入ってくる若い剣士風の男。すかさずネロがそう注意するが「すいません!……ですが」と謝りながらも続ける。



「……ミラ様の言った通り地下の牢屋(ろうや)を見に行ったのですが、例の鎖の部屋が……」



「……なんと。」



ネロが口を抑える。



「……被害状況は?」



ミラの目つきが変わり、スッとベッドから出ると、椅子にかけられていた上着に手を伸ばす。



負傷者(ふしょうしゃ)行方不明者(ゆくえふめいしゃ)共に30以上と見られます! また、悪魔の使いであるオボロ・ヒデトラが外に現れ……ってマリン様?!」



男は途中でマリンに気づき、声を荒らげる。 オボロとマリンは繋がっていると知っているため、現状が理解出来ていないようだ。

しかし、ミラはそんなことを気にもせず支度(したく)を終える。



「……それより、問題は奴の方だな。この中にまだいるのだろう?」



「……それが……」



「まさか……────────」



男の横をすり抜け、部屋を出るミラ。 そこに広がっていたのは……


ある空間(くうかん)だけを切り取ったかのように、壁と床が無くなっている。 人1人を飲み込めそうな大きさの円程の穴が空いており、近くにあった花瓶もおかしな形に欠けて水がこぼれている。



「……あの男まで逃がしてしまったか……。 急いで伝達してくれ、メンバーを出来るだけこのギルドに集めて仲間の捜索に専念しろ。 街のことは後回しだ。 恐らく、奴はもうこの街にはいない……。」



「……で、ですがマスター。 その……」



「何だ……?」



男は言葉を詰まらせ、しどろもどろに答えた。



「メンバーが次々に抜けて、恐らくですがほぼ今ギルドにいたメンバー以外は厳しいかと……。」



申し訳なさそうにそう答える男。



「……そうか。 では、その者達にだけでも伝えてくれ。 街の1件は後回し仲間の捜索と手当に回れと。 その後に大事な話があるともな……。」



「……わ、わかりました! 失礼します!」



そう言って、走り出し階段を下へ消えていく。



「ミラ様……。」



ネロが心配そうにミラを見つめる。



「……私は問題ない。 お前もレキと共に仲間の捜索に向かえ。」



「ですが、ミラ様。」



「向かえ……。」



何か言いたそうな顔をするが、必死に(こら)えそのまま横をすり抜け、部屋を飛び出していく。



「……フゥ。」



部屋の扉を締め、部屋の中には静けさが顔を出す。

部屋の中には何が起きているのかわからない、何もわからないといった表情したマリンとミラのみだ。



「……………………………………。」



何も会話のない状態が、少し続いたあたりで切り出したのはミラだった。



「マリンは変系魔法が得意だったな……?」



「え……? う、うん。 何で?」



マリンの目の前に立ち、手を出すミラ。



「少し魔力を分けてくれないか? 種類は光を少しでいい。 ……できるだろう……?」



「光でいいの……?」



「ああ、頼む。」



マリンはミラにこうして頼まれるのはいつぶりだろうと、感動を覚えるがすぐさま行う。



変系魔法────────



「シャイニング・シェア・フォース!!!」



マリンの持つ水系の魔法が光へと変換され、ミラの手に注がれる。


氷系魔法────────



「インソーブルアイス・ダイヤモンド。」



ミラがそう唱え、手の上に綺麗(きれい)な氷の塊が出来上がる。

そして、────────



「……コネクトマジック、アイスメモリー……。」



光属性の光がミラの体を駆け巡ったあと、その氷塊に入り込み腰を落ち着ける。

ダイヤモンドの様に光り輝く氷が出来上がり、その輝きを更に中に閉じ(こも)っている光が助長している。


「フゥ……。」と溜息をつくと、その氷をマリンへ渡すミラ。

マリンは受け取るものの、これがなにかまでは分からなかった。



「……これは?」



すると、ミラははっきりと答えた。



「それは、私の記憶。 戦っている最中、そして今の心境も交え私が覚えていることがその光には詰まっている。……聞きたいことがあるのだが、わからなくなっているのだろう? 」



そう言って、笑うミラ。



「……お姉ちゃん。 ……わかんないよ。 なんで、私にここまでしてくれるの……? 私はお姉ちゃんを裏切って……」



「それは違う。 お前は私に気づかせてくれたのだろう?」



ミラはそっとマリンを抱きしめる。



「何も見えなくなった私に教えてくれたんだよお前は。 今私が大変なのはツケが回ってきただけだ。 しかし、大事なものに気付かされたよ……。 マリン、その記憶は1度しか見ることが出来ない。 邪魔(じゃま)が入らぬところで見るのをオススメするよ。」



「……うぅ……。 お姉ちゃん……! ありがとう! ありが……とう……!」



「……私も急ぎの用事があるから、もう行く。 私も仲間を大事にしなくてはならないからな。」



そう言って、マリンを離すとドアを開けるミラ。

マリンはその後ろ姿に向かって叫ぶ。



「……私も頑張る……! 仲間を大切する! いろんな所を見てもっと成長したら……ミラお姉ちゃんのところに戻ってくるから!!!」



ミラは振り返らない。


だが、────────



「……久しぶりにその呼び方をされると照れるな。 ……居場所を作って気長に待っている。」



そう言って、帽子をかぶり直し階段を降りていく。


すると、コツコツと窓を叩く音が聞こえ窓を見るマリン。 そこには、窓に張り付くオボロの姿があった。



「……おい、開けてくれマリン。 そろそろ行かないと……」



オボロがそう言うと勢いよく窓が開く。



「……うおっと!! 危ないじゃ……、どうした……?」



マリンの顔を見て、覗き込むようにみるオボロ。

心配そうに見つめるその顔に罪悪感を覚える。



「……いきなり走り出して訳わからなかったよね。 いつも振り回してごめん。 それなのに、オボロはいつも私のこと……キャッ!」



マリンが頭を下げていると、スッと部屋のなかに入り込み、マリンを抱き上げた。



「その様子だと来て正解だったみたいだな? 話はあとから聞かせてもらう。 ……とは言え、いつも振り回されている。 お詫びも礼も後でせがませてもらうとしようか……。」



そう言って、窓に足をかけるオボロ。


すると、────────



「……お詫びは今でもいいよ?」



「……ん? 何か言った……」



オボロの頬に、マリンのやわらかい唇が触れる。



「……な、なああああッッッ!!! おま……な、何を?!」



「……えへへ。 秘密ーー!!!」



あたふたしながらも、マリンを抱き上げたまま飛び出し、屋根の上を走り抜ける。



「貴様ァ……。」



「……オボロったら顔真っ赤だよ???」



「クッ……後で覚えておくんだな!!!」



そんなやり取りをしながら屋根の上を渡り歩き、街を抜けていく2人。

迷宮都市ディスタシア、通称・ノクスラビリンスを目指し冒険を続ける。


まだまだ冒険は終わらない!


────────────────────────────────────────





リサードはいつ出てこれるのかな、てかイチャイチャするな!


今回もかなり遅いですが、ペースをゆっくり戻しますー!


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