65話 ユースティティアとアビス
前回の続きです! どうぞ!
「ッッッ!!! 」
「目が覚めたか……?」
「……オボロ? ここは……外?」
澄み渡る空気。 まるで呼吸が山の新鮮な水を飲んだ時のような爽快さを感じさせる。
マリンは座り込み、オボロを見上げる。
短いとは言え、濃く長い戦いをジメジメと湿ったダンジョンで行っていたこともあり、外の空気は余計にそう思わせた。
「……ああ。」
オボロはそう答えると少し悲しげな表情を見せる。
マリンはその顔をじっと見つめると、あることを思い出した。
「そうだ! リサード……! リサードは……」
「マリン。 」
「……ねぇ、オボロ……。 あの後一体……」
オボロはある場所を見つめる。
そこは、ダンジョンの入口になっていた場所だった。 だが、今はもう何も無い。
「……リサードは死んだのかもな。 」
「……オボロ?」
マリンは聞き返す。
オボロはただそこを見つめている。 マリンの視界はゆらゆらと歪み、オボロの顔が滲んでいく。
────────────
雨が降り始める。
雨は2人の体を濡らし、体温を奪っていった。
「……戻るぞ。 ここにいたらッッッ……マリン……」
引き返そうとしたオボロは言葉を途中で切った。
ボロボロになった装備の胸ぐらを捕まれ、マリンを見つめる。 胸ぐらをつかむマリンの手は小刻みに震え、下を見下げている。 髪の毛を雨が滴り落ち、その震えは怒りや悲しみが大きく含まれているように見えた。
「……な……んで……」
マリンは足元にできた水たまりをわなわなと見つめている。
「……なんで、そんなに……冷静なの……、なんでそんな……淡々(たんたん)としてられるの……」
「マリン……。」
「……嘘つかないでよ。」
「嘘……?」
オボロは戸惑いを隠せない。
すると、マリンの手に更に力が入り続ける。
「……そうだよ。 嘘つかないでよ……。 」
「………………………………………。」
マリンが面をあげ、オボロを睨みつけた。
そして、オボロの胸を殴りつけた。
「……この嘘つき野郎。」
「……………………………ッッッ。」
言葉に合わせ、拳がオボロの胸に叩きつけられる。
「……取り繕ってんじゃねーよ!!! もっと悲しめよ!! もっと取り乱せよ!!! もっと……もっと、感情出せ!!! 言いたいことあるなら言え!! 私がそんなに頼りないのかよ! 勝手に諦めた顔すんなよ! もっと必死こけよ……! 勝手に……終わらせないで……! ……我慢……しないでよ……。 な……んで……」
「…………………………………………。」
オボロは何もせずそれを打たれ続けた。 マリンの拳は次第に弱まっていき、最後には胸を打ち付けたまま動かなくなった。
そして、開かれると先ほどとはうってかわり、服を握りしめか弱さを見せた。
嗚咽が早くなる。
オボロはマリンの頭にそっと触れる。 体がピクッと動いてみせるが、オボロの手を受け入れるマリン。
「……強いな。 マリンは……」
「……これの、どこが。」
オボロはマリンの頭に手を置いて、語りかけるように言葉を紡いだ。
「……俺は怖いんだよ。 自分の感情を表に出すのが。 一体どうなってしまうのか……。 リサードが死んでしまったと受け入れてしまうと、自分はきっとそれに耐えられない。 だから、見ないふりして前に進むしか出来ないのさ……」
「……オボロ。」
マリンは顔を見あげ、オボロの顔に手を添える。
その時だった────────
ドサドサドサ────────
「────────?!」
木が鋭利なもので両断され、幾本かなぎ倒され、人影が1つ。
古い甲冑を身にまとい、珍しい武者のような男。 禍々(まがまが)しい気を発しているが、こちらに興味はないようにも見える。
……迷いの無い切り筋に、圧倒的瞬発力。
魔法の力は感じられなかった。
つまり、付与なしの生身でコレを行ったということだが……
並大抵の者では無いのは確かだ。
オボロは剣を抜き構える。
「…………動くな。」
「……………………………………。」
武者は何も答えず近くに寄ってくる。
チッ……………
オボロは軋む体にムチを打ち、覚悟を決める。
「…………交渉決れ……」
「……待って。」
「………?!」
オボロが切りかかろうとすると、マリンはそれを静止させた。
まるで、その武者を知っているかのよう……
そして、────────
「……アビス……だよ……ね。」
「アビス……だと???」
アビス。それは、リサードの愛用している黒剣の名称だ。 そう言えば、彼の刀も業物。
宝具クラスであれば不思議ではない。
だが、おかしい。 リサードは出てきていないのに、何故愛刀だけが……
もしや、
リサードもどこかに……?!
「……アビス!!! 待ってくれ!!! リサードはどこだ?!」
「…………………………………。」
アビスは答えない。
それを見て、マリンも問いかける。
「……アビスだよね? 私はマリン! リサードの仲間! ねぇ、お願い……」
そう言って、アビスの前に立ちふさがる。
アビスは止まりはしたものの、何も反応はない。
「……ねぇ、教えて。 リサードはどうなったの? 貴方達は……」
その時だった────────
殺気……?!
「マリンッッッ!!!」
「え……?!」
一気に爆発するような殺意。 先ほど木を切り倒した時のような禍々しさがアビスから発せられた。
マズイ!!!
「……うおおおおおおおッッッ!!!」
一瞬で間合いを詰め、白剣ユースティティアをアビスに向け振り下ろす。
それを、すかさず防ぐアビス。
防御行動に移行したため、マリンに攻撃をすることは無かった。
「……ちょ、ちょっとオボロ??!」
「……離れろマリン。 コイツはお前の知ってるアビスでは無い!」
クソッッッ。
俺としたことが忘れていた。
宝具が擬人化し、彷徨う状態。
それは即ち、宝具の暴走だ。暴走の要因は2つ。
契約のない期間が長く、意思を持ち始める場合。
そして、────────
持ち主の突然のリンク切断。
「……なぜ気づかなかったッッッ!!!」
「……………………………………。」
アビスは標準をオボロに向けたのか反撃を開始する。
だが、既に力の差は見えていた。
ボロボロの状態のオボロと、持った意思すらも掻き消されるほどの暴走による力の跳ね上がり。
「……グハッッッ!!!」
「オボロ!!!」
ユースティティアを切り返し、跳ね上がった剣の隙間を塗ってオボロの体を蹴りあげる。
マリンはオボロに近寄り、引き上げようとする。
しかし、────────
スッ────────
アビスに剣を突きつけられる。
「ハァ……ハァ……」
ネクサスゲートで回復した魔力も使い切っている。
クソ……本当に……
アビスが剣を振り下ろそうとしたその時だった。
────────ピクッ
アビスの体が止まる。
オボロとマリンはゆっくりと目を開ける。
すると、白く綺麗な女性。
お前は……ッッッ!
「……ユースティティア……。」
アビス同様、ユースティティアも擬人化しアビスの前に立ちはだかった。
2人は見つめあったまま動かない。
だが、その時は突然訪れた。
ユースティティアの音速をも超越するかのような1振りが、アビスを捉える。
ギリギリで受けてみせるが大きく反動で吹き飛ばされていった。
「……ユースティティア。」
オボロがそう口にすると、ゆっくりと振り向き口を開く。
『……行きますよ、オボロ。 マリン。』
「……わ、私も?!」
「おい、どこへ行くって……?!」
白く綺麗な女ユースティティアは、ニコッと笑い答えた。
『……貴方達のすべきことをすべき場所へに決まってるじゃない? ……今回だけ、私がそこまで導いてあげる……』
────────────────────────────────────────
どんなに遅くなっても、書いて出すことに意味がある!!!




