64話 それぞれの道
続きです!! どうぞ!!!
体が宙を舞う感覚。
風景は一向に留まることをせず、ゆっくりと回るがそれでいて同じ風景を見せていた。
その回転に伴い、体を襲う吐き気と嫌悪感で意識が戻った。
「……グゥッッッ。」
身体中の痛みを抑え、立ち上がろうとするがうまくバランスが取れない。
目を開け状況を確認すると、ミラは重力が狂った世界で回っていた。
「……なんだここは……?」
ミラは呆然とあたりを見つめる。
「とりあえず状況を確認せねば……。」
ふわふわと浮く感覚と、身体中の痛み。
時空の渦の中にいるのはわかるが、流されているというよりその流れの中心でいつまでも動けないという感じの方が正しい。
所々に時計のような魔法陣が見え、確信を得る。
恐らくは、まだダンジョンの中なのだろう。
無理に動かそうとすると身体中に痛みが走る。
「………………………………………。」
ミラは意識が途切れた所を思い出す。
頭痛が激しく主張し、思い出しづらい……。
100%のゲイ・ボルグを放とうと魔力を貯めていた。
ミラは頭を抱えながらも必死に思い出そうとする。
そして、
そう……。
戦っていたのは……
ミラはその名前を口にした。
「……リサード……ブルオスト……。」
口にすると不思議と記憶を鮮明に思い出すことができた。
魔力量が80%を超えたあたりだっただろうか。
その辺りから猛烈な痛みや、魔力の反動で意識が朦朧としていたこと。
さすがの自分でも戦闘続きで魔力が思いの外、削られていたのだろう……。
「……だが、問題は……。」
そう、問題はそこではなかった。
ミラ自身にとって1番重要なこと。
勝敗。
私は勝てたのか……?
ミラは思わず身を震わせた。
これもまた初めての感情。
今まで自信満々に勝つと信じて疑ったことなどなかったこの私が……
かつて、こんなに自信の無い問いかけがあったであろうか。
いや……
負けるはずがあるものか……
ミラは不毛だと考えるのをやめようとしたその時だった。
────────?!
ミラはあるものを見つけ、思考が止まる。
足にある刺し傷……
戦闘中、このような傷を負った記憶はない。
それに……
「……む。」
手で傷口を軽く触ると、血は固まってはいるが他のどれよりも新しい。
つまり……
この傷を受けたのはついさっき……
この傷は私が意識を失ってから受けた傷となる。
それに何だ……?
よく見ると、手に緑色の液体が付着している。
それに、後から出来た傷口なのにまるでそこからエネルギーが来るような……
そこまで考えミラは頭の中で繋がる。
まさか、────────
その時だった────────
なんっっ
「ウグッッッ!!!」
重力が急激に身体にのしかかる。
魔法陣がクルクルと激しく周りだし、時空が歪んでいく。
そして、────────
身体が大きな光に包まれ、また浮遊感が訪れる。
だが、先ほどと違う下に落ちるような風を切って進んでいく感覚。
まるで、外の世界に戻ってきたかのような……
「ミラ様!!!」
すると、下から聞き覚えのある声と懐かしい魔力。
────────風系魔法
「ウイング・レスト!」
下から突風が巻き起こり、ミラの体を持ち上げるとゆっくりと地面に置く。
「ネロ……か……?」
「ミラ様!!! ご無事で何よりでございます!!!」
「フン……造作もな……ッッッ。」
「無理はなさらないでください!」
起き上がろうとするミラを必死に宥めるネロ。
「姐さん……。」
心配そうな表情を浮かべるレキ。
私は……
ミラは心底自分に呆れていた。
あそこまで振舞っておきながら、このザマだ。
1人で高を括り団員に心配をかけた。
ミラはもう足の傷口に付着している緑の液体の正体に気づいていた。
これは回復薬。
つまり……だ。
私はあの男に負けた挙句、命をも救われたのだ……
私は……
なんて……
「……無様なものだな。」
……合わせる顔もない。
「……そんな。」
レキは静かに足をつき、ミラに頭を下げる。
「姐さん。」
しかし、レキは静かに頭をあげると初めてに近いほど、ミラに反抗の意思を見せた。
「……後でいくらでも罰を受けます。 ですが、聞いてください。 俺にとって姐さんは誇りであり、獅子王の心臓の全員の誇りです。 私達の誇りを無様と言われてはいくら姐さんでも、腹が立ちます……。 ……過ぎた口をお許しください。」
「……レキ。」
その真剣な表情から何かを感じたのかネロもコクリとそれに頷いて見せた。
そして、────────
「そ、そうです!!! 私達は皆あなたを目標としてきました!!! 」
「わ、私もであります!!! どんなお姿であろうと凛々(りり)しいことに変わりありません!!! 」
いつの間にか集まってきた団員たちも口を揃え、その場に集う。
「……馬鹿者共が……。」
ミラはフッと笑うと、空を見上げた。
レキは半殺しは免れないと思っていたのか、何も無いことに「え……?」と軽く戸惑っていた。
「……時送屋は? 奴はどこにいる。」
「……報酬を渡した後、消えるようにどこかへ行きました。 」
「……そうか。」
ミラはゆっくりとあたりを見回すと、仲間達はそれに応えようと必死でミラを見つめる。
私は……
今まで1人で来たつもりになっていた……
だが、コイツらも逞しくなったものだ……
思えば気づくことばかりだった。
リサード・ブルオスト。 奴との闘いは初めてのことばかりであった。
そして、初めての────────
────────敗北
「……負けて得るものもある……か……。」
ミラのその声は誰にも聞こえないような小さな声だった。
しかし、確実にそれはミラの人生にとって大きな変化であり、彼女の変化は獅子王の心臓としても、世界に大きな変化をもたらしていくことになる。
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「どこなんだよここ……!!」
暗闇。 果てしなく続いてく暗闇を青年は歩いていた。
とてつもない不快感が体の奥底から溢れでる。 呻き声のような音が常に周りをたちこめ、常に不安感を煽りまるで生きた心地がしない。
生きた……
リサードはそういったところで頭をかきむしりたくなった。
「ハッ……。」
前を向く。 どちらが前なのかなどわからないし、もうどうでもいい。 ただ歩く。
何馬鹿な事言ってんだよ……。
「……死んでんじゃねぇか。 ……俺。」
白髪の青年は歩き続ける。
彼にとって死後の、まるで地獄のような場所が存在したことなんてどうでもいいことのように思えた。
だが、彼は大事なことを忘れていた。
彼は確かに死んでしまった。
しかし、引退した訳では無い。
そう……
彼はまだ剣士であると言うことに……
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遅くなりました。 ここまで見てくださってくれてる方には感謝ともっと楽しんでもらえるよう努力したいと思っています。
今後とも宜しくお願いします。




